「Try Before You Buy(購入前お試し) 」プログラムを導入する D2C ブランドが増加中

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新興D2Cブランドは、新しい顧客が自社の商品をリスクフリーで試せるようにしようと試みている。Amazonのプライムワードローブ(Prime Wardrobe)機能と同様に、「Try Before You Buy(購入前お試し)」プログラムにより、顧客は料金を請求される前に商品を一定期間試すことができる。

D2Cブランドにとって、このコンセプトは特に新しいものではないが、最近までは主に宝石類や時計ブランドのようなハイエンドの商品で使用されてきた。過去数カ月にファッションや美容品ブランドも、主にこの分野における新しいベンダーのおかげで、この購入前お試しの流れに加わるようになった。

しかし、このトレンドは数年間にわたってD2Cブランドのあいだで増大してきたものだ。たとえば香水ブランドのスニッフ(Snif)は、顧客が商品を7日間試してから使い続けるかどうか決めることを認めていることで知られるようになった。試した後に返品するオプションを顧客に与えることはリスクであるが、これらのブランドは、「Try Before You Buy」が顧客を獲得するために価値のあるツールであると考えている。

「投資に見合うか」判断材料に

革製品で知られている女性向けファッションブランドのクヤナ(Cuyana)は9月下旬、サンフランシスコのフィルモアにある店舗で、ハンドバッグの購入前お試しプログラムを開始した。

クヤナの共同創設者でCEOを務めるカーラ・ガヤルド氏は、同ブランドの新しいサービスが「より少なく、より良く」というマーケティングの精神にのっとったものだと、米モダンリテールに語った。

同ブランドの商品は、もっとも売れているシステムトート(System Tote)の価格は298ドル(約4万3200円)と中価格帯に属しており、ガヤルド氏はこの商品が投資するに値するアイテムに位置づけられていると語る。このため、新しいトライアウトプログラムはクヤナのバッグを使いはじめるための障害を低くすることを意図したものだ。プログラムへの参加者は、1つのバッグを7日間試すことができ、そのバッグを購入するか、ほかのバッグをテストするか、購入を取りやめることを選択できる。

「コミュニティの利用者が選んだバッグを1週間試せるようにすることで、自分たちのライフスタイルのニーズに合わせた、最高の投資アイテムを見つけられるようになることを、当社は期待している」と、ガヤルド氏は述べている。

ガヤルド氏は、クヤナは今秋、サンフランシスコの店舗でトライアルオプションをテストするという。「このプログラムを成功させるためには、当社のチームが、当社の商品について最良の情報を持ち、それぞれの商品が機能的にどのように異なるかを十分に理解する必要があった」と同氏は述べている。

クヤナは今後数カ月間、参加者からのフィードバックをリアルタイムで集計し、プログラムの人気を測定する。「もしトライアル期間が顧客のためうまく働き、顧客が購入を決定するための情報を得られることがわかれば、ほかの店舗での実行も検討することになるだろう」と同氏は述べる。

既存顧客からの関心も集める

「try now, pay later」からすでに見返りを得ているブランドもある。

D2Cのアパレル企業のグッドライフ(Goodlife)は3月、「try now, pay later」(今すぐ試して、後で払う)を試験的に開始した。顧客は支払いが徴収されるまでに商品を1週間手元に置くことができる。このプログラムは9月、グッドライフで恒久的に採用された。

グッドライフの共同CEOを務めるアンドリュー・コディスポティ氏は、これらのトライアルプログラムがブランドを競合他社と区別するための創造的な方法だと語る。このプログラムは当初、顧客獲得のためのものだったが、リピーターからの関心が予想以上に高かったと同氏は述べている。初回顧客の60%がこの「try now, pay later」による注文を行っている。そして、このパイロットテストを開始して以来、同社の顧客の約88%が、同プログラムで注文品を購入している。

同社はShopify Plus(ショッピファイプラス)のベンダーであるトライナウ(TryNow)と共同で、このプログラムのフルフィルメントに取り組んでいる。トライナウは、eコマースブランドにとってのAmazonプライムワードローブのようなベンダーになるという目標を掲げており、昨年は1200万ドル(約17億4000万円)を調達した。トライナウのクライアントには、女性向け衣類ブランドのユニバーサルスタンダード(Universal Standard)や、水着メーカーのソリッドアンドストライプド(Solid & Striped)などがいる。

「最初のうちは、返品率が急増することが不安で、テストを行うことをためらっていた」とコディスポティ氏は述べる。また、顧客に購入前お試しを提供するには、物流上の課題もいくつか存在すると同氏は語っている。おもな障害は、通常の注文とともに配送される商品の数量が増えることと、より多くの返品に対応する可能性があることだ。このような理由から、グッドライフは、プログラムのフルフィルメントを社内で行おうとせず、トライナウに依頼したのだ。

しかし現在まで、グッドライフの試着後の返品率は12%で、「当社の平均返品率が7%から8%程度であることを考えれば許容範囲だ」とコディスポティ氏は述べている。現在のところ、同社の注文の15%には、お試し用としてマークされた商品が含まれている。

予期せぬ発見も

この「try now, pay later」プログラムによって、グッドライフが予見していなかった予期せぬ発見もあった。コディスポティ氏は、初回顧客は同ブランドの主力商品であるTシャツのコレクションを選び、既存の顧客はプログラムを使用して季節限定のスタイルを試す傾向があると説明している。「このサービスによって、当社の新商品と、人気のあるベーシック商品とのあいだにある売上のギャップを解消できるようになった」と同氏は述べている。

「今後も、『try now, pay later』を重点的にプロモートするため、さらに多くの広告を出すつもりだ」と同氏は述べている。グッドライフは夏のあいだ、同サービスの体験を促進するデジタルキャンペーンをテストし、同ブランドの標準的なオンライン広告よりも45%高いRAOSを報告した。

高価格帯の消費者向けブランドにとっては、購入前のお試しは、人々が心配なく商品を試すことができれば、その商品を気に入り、手元に残すようになるという理論を実証することができると、同氏は述べている。

同氏は次のように述べている。「ブランドへの信頼を築き上げ、顧客との関係を作り上げるすばらしい方法だ。景気が後退に向かい、消費者が購入をためらう時期には特に重要となるだろう」。

[原文: More DTC brands are testing try-before-you-buy programs ]

GABRIELA BARKHO(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Cuyana

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