ブランドが「 TikTok オリジナル音楽」に投資する理由:トレンドを掴み、アルゴリズムに対応する重要な手法

DIGIDAY

TikTokでは、ブランド勢とリテーラー勢はいずれも、目ではなく耳を引くマーケティング戦略を展開している。

いくつかの企業はすでに、「バズり」を期待しTikTok用オリジナル音楽の制作を始めている。たとえば、ペプシ(Pepsi)は9月27日、歌手で女優のクロイ・ハリーと提携し、「フットルース(Footloose)」のカバー配信を発表し、TikTokユーザーに同曲を使ったダンスチャレンジを促した。

一方、アメリカン・イーグル(American Eagle)はTikTokシンガー、キャサリン・リー氏と組み、氏のオリジナル曲「Happening Again(ハプニング・アゲイン)」の同社版を制作し、バックトゥスクールキャンペーンの一環として利用している。また、ピザハット(Pizza Hut)も700万人近いフォロワーを有するティックトッカー、ジョン・モス氏とコラボし、デトロイト・スタイル・ピザ(Detroit-Style Pizza)の復活を祝して、デトロイトにちなんだアンセムを制作した。

音楽は、TikTokに欠かせない要素だ。ハリー・スタイル氏の「As It Was(アズ・イット・ワズ)」やクッキー・カワイイ氏の「Vibe (If I Back It Up)(ヴァイブ〈イフ・アイ・バック・イット・アップ〉)」をはじめ、同プラットフォームで拡散した曲は計360万以上もの動画で利用されている。ただ、著作権問題のため、ブランド勢は必ずしもそれらにアクセスできるわけではない。そこで、そうした法的問題をクリアするべく、リテーラー勢はアーティストらと直接手を組み、独自のTikTokチャレンジを次々に立ち上げ、より多くの消費者へのリーチを狙っている。

「TikTokで音楽は最初から重要だった」

クリエイターがオリジナル音楽付き動画をTikTokにアップすると、他のユーザーは基本的に、その音楽を利用して自身のオリジナル動画を作れる。より多くの人が利用すればするほど、その音楽は拡散する。拡散している音楽は、ブランドの視認性を高め、彼らがおすすめページでより多くのユーザーにリーチできる確率を上げる。なかには、オリジナル音楽を付けた動画でTikTokチャレンジを行ない、そこに独自の捻りを加えるよう、ユーザーに働きかけているリテーラーもいる。

「TikTokの音楽/曲は当初から重要だった」と、マーケティング企業、インフルエンサー・マーケティング・ファクトリー(Influencer Marketing Factory)のCEO/共同創業者、アレッサンドロ・ボグリアリ氏は話す。「ブランド勢は実際、音楽を自らの有利になるよう利用できる。アルゴリズムがその時々の流向を推してくれるからだ」。

オリジナルの曲/音楽の広告利用は、目新しいことではない。事実、リテーラー勢は何十年も前からテレビおよびラジオ用にキャッチーなジングルを制作し、ブランドの認知度向上に努めてきた。ただしTikTokでは、マーケター勢は同プラットフォーム特有の短尺動画フォーマットに、そして常に変わりゆくトレンドに合わせ、予測不能なアルゴリズムとうまく付き合わねばならない。

TikTok用の音楽制作でアーティストと提携しているブランドの多くは、効果が実証済みの既存曲の再利用に努めている。たとえば、アメリカン・イーグルは前述のとおり――ペプシと同様――TikTokである程度注目を集めた曲をリメイクしている。リー氏には同プラットフォームに40万人以上のフォロワーがおり、同曲の抜粋をTikTokで配信しており、そのなかには1000万回以上視聴された動画もある。

ただ、だからといって、その曲がブランドに成功をもたらすとは限らない。いま現在、同曲のアメリカン・イーグル版を使用している動画数は、100をわずかに超える程度でしかない。

アルゴリズムをブランドの有利に働かせる努力

専門家いわく、TikTok音楽キャンペーンをバズらせる秘訣はない。ただ、当たれば大きいだけに、投資する価値はあるという。

たとえば、E.l.f.コスメティクス(E.l.f. Cosmetics)は2019年に初のTikTokオリジナル曲、アーティストのホラ・ファイシックスウォン氏とソングライターのイル・ウェイノ氏を擁する「eyes.lips.face. (e.l.f.)(アイズ・リップス・フェイス〈e.l.f.〉)」を配信した。この「#eyeslipsface(アイズリップスフェイス)」キャンペーンは大成功を収め、同ハッシュタグ付き動画は現時点で96億回再生されており、同曲を使ったTikTok動画数は140万に上る。ジェームズ・チャールズ氏、アディソン・レイ氏といったインフルエンサーや、リゾ氏などのセレブまでもが同曲を使った動画を上げている。

2020年、E.l.f.はGLOSSYに対し、#eyeslipsfaceキャンペーンでは、てこ入れで有料広告を打ったと話した。一方、別のオリジナル曲を擁した第2弾キャンペーン#elfvanishingact(elfヴァニッシングアクト)では、それをしなかった。両キャンペーンともにバズったおかげで、同社のリップエクスフォリエイター、ジェントルピーリングエクスフォリエイター、バイトサイズアイシャドウの売上は伸びたという。

「バズった瞬間以降、弊社の多くの製品はネット上で、目に見えて拡散した」と、E.l.f.のCMO、コーリー・マチソト氏は当時、取材に応えた。「拡散する前から数字をチェックしていたが、拡散後は売上が2倍から6倍、ときには8倍にも増えた」。

また、TikTokユーザーには以前から、昔の曲を復活させる傾向もある。松原みきの「真夜中のドア~Stay With Me」はその好例だ。ペプシによる1984年の大ヒット曲「フットルース」の再利用も、ノスタルジア(懐かしさ/古くて新しい感覚)を狙ったものだろう。同社は、同アプリにおける今夏の「フットルース」人気に触発されたと話している。

「懐古であると同時に新しくもある。古いジングルを時代に合わせて作り直したものだ」と、インフルエンサーマーケティング企業、インフルエンシャル(Influential)のCEOライアン・ディタート氏は、リテーラー勢によるTikTokでの音楽を利用したマーケティングを評する。「いくつか特定の音楽/曲が受けると、それを使ったさまざまなダンスが次々に登場する。理由は、それがいわゆる時代精神であり、UGCを促すものだからだ」。

トレンドを追いすぎるとコアカスタマーを失う可能性も

クリエイターマネジメントプラットフォームGrin(グリン)のVPアリ・ファザル氏は一方、ブランドやリテーラーの場合、流行を追いかけ過ぎたり、同アプリの若年層を狙い過ぎたりすると、自身の重要なコアカスタマーを疎外してしまう恐れもあると、警告する。さらに、社内または社外にTikTokの流行に常に目を配るチームを置くべきであり、さもないと、的外れになってしまいかねない、とも指摘する。

「流行に確実に即していないと、バズっている音楽/曲を適切に使えない可能性が高い」とファザル氏。「そうなると、どこかズレたコンテンツを制作してしまいかねない」。また、「広告であることがあまりにあからさまな」マーケティングキャンペーンは、多くのTikTokユーザーには響かないとも、ファザル氏は話す。

「TikTokとそのアルゴリズムの面白いところは、まったく予測が付かない点だ」と、氏は言い添える。「だからこそ、どのブランドも成功するには、極めて多様なクリエーターマネジメント戦略が必須となる」。

たとえば、E.l.fのような成功例の再現は難しいと、複数の専門家は話す。実際、E.l.f.の第2弾曲「Vanishing Act(ヴァニッシング・アクト)」自体も、第1弾ほどの輝きはなく、同曲を使った動画数は639に留まっている。ただそれでも、リテーラー勢は今後も試みを続けるだろうと、専門家らは見ている。

「こうした試みは今後ますます広まるだろうし、必要になってくる」とInfluentialのディタート氏は話す。「これに逆行する道はない」。

[原文:How brands like Pepsi and American Eagle are investing in original sound marketing on TikTok

Maria Monteros(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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