ナイキ 、「ジョーダンブランド」の単独店舗を東京・渋谷にオープン:D2Cビジネスの成長加速を推進

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D2C(ダイレクト販売)チャネルによる売上を伸ばす計画の一環として、ナイキは、いくつかの重点ブランドの店舗建設を強化している。

ナイキは3月25日、日本初のジョーダンブランドの単独店舗「ワールド・オブ・フライト トーキョー・シブヤ(World of Flight Tokyo Shibuya)」をオープンした。ナイキが、「小売における、ジョーダンブランド文化の頂点」と呼ぶこの店舗には、壁一面にジョーダンブランド製品が展示され、カスタマイズステーションや、ピックアップサービス、コンテンツ作成スタジオを設置した。同店舗は、ナイキが昨年12月、イタリアで同様のコンセプトの店舗「ワールド・オブ・フライト ミラノ(World of Flight Milan)」をデビューさせたわずか数カ月後にオープンした。

ナイキは従来、卸売やマーケットプレイスなど、いくつかのチャネルに収益を依存してきた。しかし、ここ数年、在庫管理を改善し、売上の大きな部分を確保するために、店舗や、ウェブサイト、アプリに多くのリソースを注ぎ込むようになった。2017年には、小売の提携パートナーを40社に絞ると発表し、昨年はDSWやアーバンアウトフィッターズ(Urban Outfitters)といった大手小売店との関係を断ち切った。ナイキが所有するブランドのために新しい店舗を建設し、独自のフォロワーを獲得することは、特に実店舗での販売が盛り上がりを見せているなかで、ナイキが自社に直接成長をもたらすひとつの方法にすぎない。ナイキはジョーダンブランドの店舗以外にも、ボストンとニューヨークにコンバースの旗艦店を構え、米国28州に数十のコンバース・アウトレット店舗を運営している。

さまざまな店舗形態

D2Cビジネスを強化するため、ナイキはさまざまな店舗形態を試みている。2018年に試験的に導入したナイキライブ(Nike Live)は、より小規模で、より近隣に根ざしたものだ。2020年にパイロット運用を始めたナイキライズ(Nike Rise)も地域密着型だが、より大規模で、より多くのデータや店内イベントを備えている。ナイキによると、昨夏には、性別にとらわれない商品コーナーとコンテンツスタジオを備えたナイキスタイル(Nike Style)を導入した。また、上海や、ニューヨーク、パリに3店舗の「ハウス・オブ・イノベーション」を構えている。同店舗は、巨大な店舗面積と、複数フロアによるそびえ立つような高さが特徴だ。

調査会社ガートナー(Gartner)のディレクター・アナリストであるブラッド・ジャシンスキー氏は、米モダンリテールに対し、ナイキは、 「実に素晴らしい仕事」をしており、「従来とは異なる顧客層に向けて店舗を集中させている」といい、続けて「もちろん、糧となるのはあくまでナイキ全体の店舗だ」と述べた。しかし、ジャシンスキー氏は、特定の都市で人気のあるものに基づいて商品の品揃えやイベントを調整する戦略について、「特定の商品について、より多くのストーリーを伝え、その消費者とより深くつながることができると思う」と付け加えた。

ナイキは長年にわたり、こうしたさまざまな店舗を通じて、膨大な量の顧客データも取得してた。実店舗の運用サポートを行うリーコンリテール(Rekon Retail)の創設者であるリベカ・コンドラット氏は、米モダンリテールの取材に対し、「ある特定のブランドのために店舗を建設する際、そのデータを使って、次にどこに旗を立てるかを決めることができる。ナイキの考え方はおそらく、「基本的には、顧客がいる場所に行くだけでなく、その顧客に出す在庫についてもしっかりと具体化することで、店舗が成功する可能性を高めたいのだ」と同氏は説明した。

「2ケタ台の強い成長」

しかし、ナイキにとって、この在庫は過去数四半期にわたり、大きな頭痛の種でもあった。商品の保有量についてはかなり前進しているものの、前四半期の時点で、ナイキは89億ドル(約1兆1660億円)もの在庫を抱えており、前年同期と比べて16%増加していた。

それでも、ジョーダンブランドのためだけに新しい店舗を建設することは、ナイキの収益にとって大きな意味を持つかもしれない。1990年代の創業以来、同ブランドは、「独自の人生を歩んできた」とジャシンスキー氏は言う。ナイキは昨年、ジョーダンブランドが2022年度の年間収益で51億ドル(約6700億円)を稼いだことを明らかにした。3月初旬の決算説明会で、ナイキの取締役副社長であるマット・フレンド氏は、ジョーダンブランドは、「2ケタ台の強い成長」と「信じられないほどの勢い」を持っていると述べた。同ブランドは、特に女性のあいだで成長しており、同氏は、「北米でナンバー2のフットウェアブランドになる道もあり、さらに大きな可能性を秘めている」と付け加えた。

ナイキの最新のジョーダンブランド・ストアの総面積は約650平方メートルで、アプリで購入したシューズを受け取るための専用エリアや、会員が「新しいサービスや体験を試す」ことができるエリアが設けられている。また、マイケル・ジョーダンに敬意を表した「フライト・ラウンジ」や、買い物客がアンボックスやレビューを撮影してソーシャル・チャンネルに投稿できる「コンテンツ・スタジオ」も用意されている。ナイキのほかのローカライズコンセプトと同様、同店舗では、地元のアーティストの作品を展示している。

D2C戦略を強化するフットウェアブランド

コンドラット氏は、フットウェアの現状を鑑みると、ジョーダンブランドの店舗を作るには今が絶好の機会だと述べた。ナイキのライバルであるアディダスは、最近になり利益に関する警告を何度か出しており、セレブリティたちとのパートナーシップに苦戦し、何億ドルもの売れ残りのイージー(Yeezy)の商品を抱えている。同氏は、「ストリートとスニーカーの部門でこのようなすき間ができた」と語った。「市場には、こうしたギャップがあるのだ」。

自社ブランドの実店舗をオープンさせる大手フットウェア小売業は、ナイキだけではない。ホカオネオネ(Hoka One One)とアグ(Ugg)の親会社であるデッカーズ(Deckers)は、各ブランドの店舗を全米で複数運営しており、この取り組みが実を結んでいる。デッカーズによると、第3四半期の売上高の52%がD2Cによるもので、過去最高の売上比率となった。

[原文:To grow its DTC business, Nike is opening stores for Jordan Brand
]

Julia Waldow(翻訳・編集:戸田美子)

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