地球の磁場が逆転したらどうなる? その答えは天王星にあるかも

太陽から7番目の惑星である天王星で、初めて赤外線のオーロラが見つかったと発表されました。

天王星の紫外線オーロラが最初に発見されたのは1986年ですが、赤外線オーロラは今まで観測されたことがありませんでした。そんな赤外線オーロラの発見についての論文が、『Nature Astronomy』に掲載されています。

元々2006年9月にハワイにあるケックII望遠鏡の近赤外線分光器(NIRSPEC)で取得していたデータを新たに解析したところ、荷電粒子H3+イオンの増加を検出し、赤外線オーロラの存在が明らかに。

今回の研究の筆頭著者で英国レスター大学の学生であるEmma Thomas氏は、同大学のリリースにてこう述べています。

「この論文は30年間に及ぶ天王星のオーロラ研究の集大成で、ようやく赤外線オーロラを明らかにし、同惑星のオーロラ調査の新たな時代の幕が開きました。

私たちの成果は巨大氷惑星でのオーロラの知見の幅を広げ、太陽系内や太陽系外惑星、さらには地球の惑星磁場に対する理解を向上させるでしょう」

注目されている天王星

天王星は、幅が地球の約4倍もある巨大氷惑星です。従えている衛星は30個近くあり、5大衛星のうち4つには海の層が存在するかもしれないため、宇宙生物学的な調査に適しています。

また昨年公表された惑星科学の報告書では、天王星への探査機を次の10年間での「最優先の大型ミッション」にするべきだと宣言されていて、惑星そのものにも科学的に価値があるのです。

今回発見されたオーロラのほかにも、今年に入ってから天王星の観測では新たな動向がありました。3月に公開されたのはハッブル宇宙望遠鏡(HST)による天王星の変化を捉えた画像で、現在は北極が太陽の方向を向いています。

4月に公開されたのは、100億ドルを投じられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が捉えた塵から成る天王星の環。HSTが撮影した画像ではうっすらとしていましたが、JWSTの性能によってくっきりと写っていました。

地球の磁場が逆転する現象に関する知見を得られるかも

天王星のオーロラも、地球のオーロラと同じような原理で発生します。惑星の磁場に沿って降り注いだ荷電粒子が大気にぶつかり、可視光や(天王星の場合は)赤外線と紫外線の波長で発光するのです。

研究者たちは天王星のオーロラを研究すれば、天王星の大気や、地磁気の向きが南北逆になる地磁気逆転への理解を深められると考えています。

Thomas氏は地磁気逆転について、リリースの中で以下のように補足していました。

「この現象についての研究は多くなく、それゆえ人工衛星・通信・ナビゲーションといった地球の磁場に左右されるシステムにどんな影響を及ぼすのかはわかりません。

とはいえ、天王星では自転軸と磁気軸のユニークなズレのせいでこのようなプロセスが毎日生じています。天王星のオーロラの研究を続ければ、地球磁場の反転が将来起きた時にどうなるのか、地磁気にとってどんな意味を持つことになるのかといったデータを得られるでしょう」

2022年ディケーダル・サーヴェイ(10年ごとの調査)で推奨されていた天王星探査機は同惑星の重力場と、観測されたオーロラに関与する磁場をマッピングすることになるでしょう。

しかしそんな探査機の実現は、遥か遠方にある天王星に向かうために木星の大きな重力を活用するので、2031年か2032年以降の打ち上げとなりそうです。

Source: University of Leicester, Nature Astronomy,

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