ナイキ 第4四半期、大幅マークダウンで利益率が減少:在庫削減と競合への追随の影響は

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ナイキ(Nike)は、「大幅な値下げ」が5月31日までの四半期の利益に食い込んだことを認めているものの、この会計年度を売上における「マイルストーン」と自負して祝っている。

同社は6月29日木曜日、第4四半期の収益が前年同期比5%増の128億ドル(約1兆8400億円)だと報告した。同社はかなりの期間にわたって過剰在庫に苦しめられてきたが、在庫の評価額は1年前から変化していない。これまでの数四半期に在庫が増え続けてきたことに比べれば、それでも進展と呼べる。同時に、在庫が2021年よりも23%増加していることが、グローバルデータリテール(GlobalData Retail)により指摘されている。また、ナイキは利益予測も達成できず、四半期純利益は前年同時期より28%も減少しており、株価は市場取引後に下落した。

全体として、個人消費の減速が懸念されるなか、同社の最新の決算は良好なものだといえる。ただし、投資家は今後1年間について警戒している。フットウェアおよび用具は北米において依然好調なカテゴリーだが、アパレルの売上は前年同期比で2%減少した。中国では波に乗り続けており、中国での総売上は前年同期より16%増加している。

「我々はいま、目の前にある可能性に大きく期待し、自信を持っている。2024年度以降に向けて、競合との分離を拡大していく」と、CEOを務めるジョン・ドナホー氏は決算説明会で述べた。

卸売パートナーシップの再構築

注目するきは、米モダンリテールが6月初めに報じたように、同社はメイシーズ(Macy’s)やデザイナーシューウェアハウス(Designer Shoe Warehouse)との卸売パートナーシップの再構築を発表したが、今回はそれ以来初めての決算発表となるということだ。ナイキは、D2Cビジネスを成長させるための大規模な取り組みの一環として、2021年にこれらの小売業者との関係を打ち切った。これらの再生されたパートナーシップによる売上が具現化するのは10月になるため、同社の第4四半期の結果には含まれていない。

その一方で、最新の決算はフットロッカー(Foot Locker)との新しい関係を反映している。フットロッカーの経営陣は3月、同社の主要ブランドのひとつであるナイキとの関係を「活性化」していると述べた。ナイキは四半期収益で、卸売が前年同期比2%減、D2C収益が前年同期比15%増加だったが、ナイキの収益は依然として、D2Cよりも卸売が大きな部分を占めている。

ドナホー氏は、用意した資料の中で、メイシーズ、フットロッカー、デザイナーシューウェアハウスの名前を挙げなかった。しかし、ナイキが過去5年間にわたって「より大きな集中と差別化を作り上げるため、大手マルチブランドパートナーとの提携を減らしてきた」とだけ述べた。それでも、同社はD2C事業に投資しており、「新しい流通を生み出し、卸売パートナーによって現在対処されていない成長の機会を作り上げていくため、ナイキのストアコンセプトに投資していく」と語った。

決算説明会の質疑応答でこれらのパートナーシップについて質問されたドナホー氏は、ナイキのマーケットプレイス戦略は「これまでと変わらない」と答えた。「当社のマーケットプレイス戦略は消費者により主導されるものだ。消費者は、一貫したシームレスな体験を望んでいると言っている」と同氏は述べている。同氏は、D2Cが「当社のもっとも急速に成長するチャネルであり続ける」が、「可能な限り多くの消費者に接触し、成長を推進するため、マーケットプレイス戦略を拡大し続けていく」と述べている。

スニーカー業界の情勢

ジェーン・ハリ・アンド・アソシエイツ(Jane Hali & Associates)のシニアリサーチアナリストを務めるジェシカ・ラミレス氏は、ナイキの卸売方針の転換は、在庫の削減と競合他社への追随だという2つの理由によるものだと考えている。同社は、ほかのフットウェアおよびアパレル企業と同様、何カ月にもわたって過剰在庫に取り組んできた。同社が多くの卸売業者と提携すれば、在庫の一部を業者に引き渡すことができる。

さらに、ナイキが2017年に卸売パートナーとの関係を打ち切りはじめた後に、スニーカー業界の情勢は変化した。同社はD2Cによって自社ブランドに「ハロー効果」を生み出したが、ほかのフットウェアブランドは、特にパンデミックのあいだに、強さ、規模、売上で進歩したと、ラミレス氏は説明した。具体的には、ホカ(Hoka)、オン(On)、アシックス(Asics)、ニューバランス(New Balance)が例として挙げられる。ナイキが卸売に回帰すると、「卸売で成長し、現在も卸売業界にいるブランドは数多く存在する。ナイキは、今では競合他社になった多くのブランドに立ち向かう必要があり、以前とは様相が異なるかもしれない」。

ナイキは在庫を処分するため前四半期に値下げを行った。同社は、これが「商品の投入コストの高騰や、輸送・物流コストの増大」「外国為替の実レートの継続的に不利な変動」とともに、粗利益率の減少を引き起こしたとしている。グローバルデータリテールのマネージングディレクターを務めるネイル・サンダース氏は、「ナイキは新たな会計年度に向けて、さらなる値下げと評価減を必要とし、それによって収支決算はさらに悪化するだろう」と覚書に記している。

「全体として、ナイキは堅調なブランドであり、企業としての存亡の危機に直面しているわけではない。しかし優位な位置にあるわけでもなく、今後1年間は自社ビジネスのやり方のリセット、節減、立て直しを行う年になることを受け入れる必要がある」と、同氏は続けて述べている。

[原文:Nike misses profit expectations as high markdowns hurt margins]

Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Getty Images

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