パブリッシャー のイベントスポンサーシップ事業は苦戦中。ただし、第3四半期は楽観的か

DIGIDAY

パブリッシャー勢は2023年度初頭、広告オファリングの動きが上半期を通じて鈍いなか、イベントスポンサーシップだけは各々の広告ビジネスにおける明るい材料になってくれると期待していた。だが、第2四半期も終わった現在、イベントスポンサーシップも同じく、当初の予想をはるかに上回る苦戦を強いられていると、一部のメディア幹部は嘆く。

アパートメントセラピー(Apartment Therapy)のエクスペリエンシャルビジネスにとって、毎年第2四半期はいわゆる稼ぎ時なのだが、同社の社長兼最高収益責任者であるリヴァ・シロップ氏いわく、2023年は自社の看板イベント「Small/Cool(自宅の一室を対象としたデザインコンテスト)」を通常の開催時期である春から10月に延ばすことを決めたという。

この延期決定は、広告主が2023年度予算のおおよその目安が付いてから、大口のスポンサーシップ契約を結べるようにするためだと、2022年11月のDIGIDAY Podcastにおける会話のなかでシロップ氏は話していた。

そして、その判断は正しかった。「2023年度の第2四半期、エクペリエンシャルスポンサーシップに対する食欲はまるで見られなかった。個々のポップアップ的なものについても、看板イベントについてもだ。まったく存在していなかったとは言わないが、我々のクライアントがそれを求めている様子は間違いなく見られなかった」と、シロップ氏は6月第2週にDIGIDAYへ語った。

慎重な計画を迫られる

匿名を条件にDIGIDAYの取材に応えたあるメディア幹部は、「自社は2023年、イベントの実施に対して極めて慎重な姿勢を取っている」と話す。「我々はいま、『売上が付随しないのであれば、企業はまずその新事業に着手金は投じない』という超保守的な世界に生きている」。

これは決して誇張ではなく、同幹部の会社が2023年これまでに仕切ったイベントは実際、すべて「階段を一段ずつ」的な姿勢で計画されており、ある程度のスポンサーシップ収益が確実になってようやく、計画の次段階に進むのだという。「最初の目標であるX地点に到達したら会場を抑え、次の目標であるY地点に到達したらタレントを抑えるという具合だ」。

また、「高額キャンペーンへの広告費の投入は今期ごくわずかであり、資金が出てくるのはパブリッシャーが適切なニッチ分野にいて、権威を利用できる場合だけだ」と言い添えた。

カルチャーイベントの権威を活用した事例

大手パブリッシャーであるBDG(旧称バッスルデジタルグループ)の場合、人気音楽フェスやコーチェラ(Coachella)関連のイベント戦略のひとつが、毎年恒例のナイロンハウス(NYLON House)やゾーオアシス(ZOEasis)のポップアップだ。これは、特定のカルチャーイベントの権威をパブリッシャーが十二分に活用している好例にほかならない。

BDGの広報によれば、2023年度はこれらのポップアップには計10社のスポンサーが付き、2022年度のイベントに比べて200%の収益増が見られたという。そして、同社のイベントビジネスは2023年上半期における直接販売収益の12%を占めたようだ。「2022年全体で手にしたよりも多くのイベント収益を、2023年の上半期だけで稼いでいる」と、BDGのトップでチーフレベニューオフィサーのジェイソン・ウェイゲンハイム氏は話す。

BDGはナイロンとザ・ゾーイ・リポート(The Zoe Report)を介してコーチェラに長らく関わっており、同フェスに隣接するほかのイベントを開催する10前後のパブリッシャーには到底適わない強者であるため、「イベントスポンサーシップを獲得できる有利な位置にいた」と前述の匿名メディア幹部は指摘する。だからこそ2023年は、同幹部の会社もBDGと同様の姿勢を取り、新たなイベントを立ち上げるのではなく、既存イベントの販売にフォーカスしているのだという。

「そうしたイベントはすべて収益を生むものである必要がある。ひとまとめにしてメディアプランに放り込み、経費をごまかすわけにはいかない。いずれも確実に収益を上げるものでなければならない。さもなければ最終損益で大きなマイナスに終わることになる」と同氏は話す。

競争は熾烈を極める

メディアスタートアップのセマフォー(Semafor)では一方、同社チーフレベニューオフィサーのレイチェル・オッペンハイム氏が「自社のビジネスはイベント分野における我々の成功が大いに後押ししている」と述べ、「収益の50%はいま現在、イベントビジネスから生まれている」と言い添える。

2022年10月の創業以来、セマフォーの総収益は8桁に上るとオッペンハイム氏は話すが、具体的な数字およびイベントビジネスにおける収益額は開示しなかった。ただ、2023年度第1四半期から第2四半期にかけて、同社の収益は倍増したという。

「私が思うに、弊社はオーディエンスにしっかりとリーチしているブランドであるとクライアントは見ている。それは彼らにとって極めて高価値であり、だからこそそれを試し、我々とともに学び、構築することに資金を喜んで投じているのだろう」と同氏は話す。ただし、「極めて競争の激しい業界だ。何であれ、販売は簡単ではない」とも付け加えた。

第3四半期は希望が持てるか

前出の匿名メディア幹部いわく、同氏の会社は8月開催の旗艦イベントに向けてスポンサーを1社押さえたが、それではまだまだ足りないという。

一方でシロップ氏は、Small/Coolについて楽観しており、「開催の10月までに十分なスポンサー収益を上げ、利益を生むイベントになってくれるはずだ」と自信をのぞかせる。さらに「イベントスポンサーシップ予算は戻りつつあると思う」と言い添える。

シロップ氏はまた、同主軸イベントの開催期間が1カ月に及ぶ点を踏まえ、「我々は常に経費をまかない、それとともに多少の収益も上げたいと考えている」と話す。

加えて、「すでにある程度のスポンサーを押さえており、10月の実施に向けて手応えを感じている。いたって順調だ。しかも直近、さらに8社のスポンサー候補が現れてくれた。『我々もまだ一枚噛めるか?』という感じで、突然きたのだ」と述べた。

[原文:Publishers say the competition is steeper than expected for event sponsorship dollars this year

Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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