二人の大富豪を魅了するPower Woman

アゴラ 言論プラットフォーム

Elon Musk氏ほど、政治家は別にしてメディアを賑わすアメリカ人はいないんじゃないかな(南アフリカ生まれだけど)。私は、大好きです。

まあ、電気自動車Teslaの大成功で世界一のお金持ちになりましたが、それは彼の一面でしかなく、火星移住まで視野に入れたロケットのSpaceX社、地下を超高速で移動するハイパーループを実現するBoring Company、脳とコンピュータを結ぶNeura Link社等々、まるで現代のレオナルド・ダ・ヴィンチのよう。

が、メディアを賑わすのは、ビジネスの話より、賑やかな女性関係の方かもしれません。最近も色々ありすぎるので省略しますが、本日は、お堅いウォール・ストリートジャーナル(WSJ)ですら、<WSJ NEWS EXCLUSIVE>特ダネだよ!と銘打って、「噂の情事でイーロン・マスクとセルゲイ・ブリンの友情は壊れた」と題する記事をウェブで大々的に掲載するくらいです。WSJのサイトから借用します。

左:イーロン・マスク 右:セルゲイ・ブリン
出典:Wikipedia

ブリンはGoogleの共同創業者という大物。その資産はマスクには及ばないものの、世界8番目の大金持ちで資産950億ドル(13兆円)だそう。その妻のニコル・シャナハン(Nicole Shanahan)さんとマスクは昨年12月、冬でも暖かなマイアミビーチでの金持ちが集うイベント(Art Basel)で出会い、WSJの表現によれば<a brief affair>、まあ、束の間の不倫をしたということです。

これがどういうわけかすぐにバレ、事情を知る人によれば、「マスクは今年1月のパーティでブリンの前で膝をついて許しを乞うた」そうですが、これで、ブリンの家でたびたび酔い潰れることもあったほどの友人関係は壊れ、1月にシャナハンとの離婚申請がブリンからサンタクララ郡上級裁判所に出されたというのです。

1月に離婚申請が出され、まだ財産分与額も決着してない一件が、突然「特ダネ」と飛び出してきた事情は不明で、関係者も口をつぐんでいるとWSJの記事にありますが、ニュースの深掘りで徐々に知られてきたウェブメディアPUCKのセオドア・シュライファー(Theodore Schlefer)記者が、とっくにシャナハンさんにインタビューして今月5日付の「The Next Mackenzie?」という記事にまとめていました。

このMackenzieというのは、2019年半ばに、アマゾンのジェフ・ベゾスと離婚したマッケンジー・スコット(Mackenzie Scott)さんのことで、アマゾン創業前から長年連れ添った代償として、ベゾスの持株の半分を受け取り、当時の評価額は664億ドル、今の為替レートなら9兆円になったと話題になりました。

彼女は離婚後、すぐに「生存中に資産の少なくとも半分は寄付する」とする書類にサインし、2020年にNPO500団体に58億ドルを、2021年には286団体に27.4億ドルを寄贈、2021年12月、Forbesが選ぶ世界のMost Powerful Womenのナンバーワンに選ばれました。

シュライファー記者の記事の狙いは、同じく大富豪と離婚、相当な財産分与を受けるシャナハンさん、すでに財団を運営していることもあって、離婚成立後、マッケンジーさんと同様のPower Womanになれるかも示唆するもので、事実、彼女の発言は力強さに溢れたものでした。

しかし、私はたまたまPUCKの有料会員ですが、一般にはpay wallで読めないでしょうから(たまに無料開放している記事もありますが)、今後の活躍で話題になりそうな彼女の発言の一部を拾っておきます。

彼女は<wellfare kid>(福祉の子)と自称します。母親は中国から渡ってきて家政婦として働き、シャナハンさんを育てましたが、1990年代のセーフティネットが充実していたので、貧しいと思わず大きくなったとのこと。

そして現在、運営に携わっているBia Echo財団でリプロダクティブ ロングライフに取り組んでいるのは、個人的体験があるから。「いくつかの検査結果で早期閉経の兆候があると言われた。体外受精にも成功しなかった。30歳でもう子供が産めないのだと思った。そして、同じような境遇の女性たちがもっと力を発揮できるようにするのが私の責任だと感じた」。

「このプログラムは型破りだ。男性の資金提供者はこのような個人的体験がないから、そのようなことに資金を提供しようとは思わないだろう。慈善活動や政治的資本をもっと女性にシフトさせれば違う世界が生まれるはずだ」。

「最高裁の中絶権否定判決には憤りを覚える。政治や慈善活動の意見決定者がより多く女性である世界だったらそんなことにはならなかった」。「結局のところ、生命は貴重であり、尊いものと皆、同意している。プロライフ対プロチョイスという構図は今の時代にそぐわない。我々は進歩しなければならない。科学は我々を進化させるのに役立つ」。

「私は社会正義、気候変動対策、そして思慮深く思いやりのある民主主義に生涯を捧げることに全力を注ぐ」。

発言の主旨は以上です。彼女は10億ドルの財産分与を求めているとのこと。実現すれば、次のマッケンジーさんになれるのは確実な気がしてきました。なお、シャナハンさんの写真はWSJの記事中にあります。


編集部より:この記事は島田範正氏のブログ「島田範正のIT徒然ーデジタル社会の落ち穂拾い」2022年7月26日の記事より転載させていただきました。

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