プログラマティック が抱える問題を浮き彫りにした、全米広告主協会最新の調査発表

DIGIDAY

プログラマティック広告の透明性を巡る騒動について、業界の怒りがいたるところで飛び交っている。

全米広告主協会(The Association of National Advertisers:以下、ANA)が実施した最新の調査を見ても、疑いの余地はほとんどない。驚くべき新事実が発覚したわけではなく、業界関係者が以前から思っていたことが裏付けられたにすぎない。P&Gのマーク・プリチャード氏が2017年に述べた通り、この世界は不確実性に包まれており、不確実性は不正行為へと変わる恐れがある。

この監査結果は、近年繰り返し再浮上しているおなじみのテーマと呼応している。たとえば、アドテクベンダーへのデータアクセス向上の要求や、システムの無駄を浮き彫りにする統計データの作成だ。また、広告主がアドテクベンダーの責任を求めているという声は、かつてないほど大きくなっている。アドテクの中間業者を減らしたいという欲求も、当然ある。

それぞれのポイントを徹底的に解説するのではなく、アドテクベンダーが何を言っているか、そして何に対処していないかを明らかにするため、いくつかのポイントに焦点を当てる。

無駄な広告費のまん延

平均的なキャンペーンは、4万4000ものWebサイトにまたがっていることが監査で明らかになった。しかし、ここに意外な展開がある。広告主はこの巨大な領域のほんの一部をターゲットにすることで、目標を達成できるのだ。

ジャウンス・メディア(Jounce Media)が明らかにしたように、プログラマティック広告費の実に80%がわずか100のメディアに渡っている。この歴然とした集中は、深遠なオープンインターネットという幻想を取り払い、バイヤーを透明性へと導く事実だ。

ただし、最高のサイトにより多くの広告費を支払うことをいとわなければ、という話ではあるが。今まではそうでなかった。

徹底した分析で「未知の差分」は消え去る

アトリビューション不可能な広告費という未知の差分は以前の調査で浮き彫りになったが、これは金銭的な問題ではなく、むしろデータ能力の限界だ。このデータを活用することで、広告主はビューアビリティ(可視性)や真のインプレッション単価に関する貴重なインサイトを得ることができ、アドテクベンダーや入札戦略を最適化できる。

当然ながらANAの調査では、十分なデータを分析した結果、この謎めいた差分は発見されなかった。それでも、これらの答えを得ることは依然として難題だ。多様なデータセットを調和させるという複雑な作業がそれに輪をかけている。

MFAの好況

監査の対象となったキャンペーンに費やされた金額の15%、総インプレッション量の21%が、広告のためにつくられたサイト(MFA)でのものであることがわかった。これらのサイトはトラフィックを収益化するためだけに存在するため、そもそもトラフィックを獲得するためのコストについて心配する必要がない。つまり、これらのサイトは広告の裁定取引(アービトラージ)をビジネスにしているのだ。そして、このビジネスは好景気に沸いている。

ある調査関係者は「これは広告主の想像をはるかに超えている」と言い、「大多数のマーケターはこれほどひどいとは思っていない」と嘆く。

近い将来、これらの問題が収束しないであろうと思われる主な理由は、広告主に変化を促すモチベーションがないことだ。それどころか、エージェンシーやアドテクベンダーに厳格な取引条件を課すことで、広告主は問題を悪化させている。むしろ、エージェンシーやアドテクベンダーは損失を取り戻すため、怪しい手段に訴える。

従って、調査への広告主の関与が限定的だったのは驚くには当たらない。ANAの会員企業67社が関心を示したが、最終的に参加したのは21社だけだった。広告主の責任逃れは、広告の世界では定番の物語だ。

調査中に遭遇した課題でさえ、聞き覚えがある。監査人が直面した主な困難は、データの所有権に関するものだった。これは、Googleのサプライサイド部門がログレベルデータをPwCと共有することを拒否した際、Google自身が挙げた問題だ。Googleのサプライサイド部門は、このようなインサイトは個々のパブリッシャーの所有物だと主張した。

前述の調査関係者は、「驚くようなことは何もない。このような会話が何年も交わされている。数年ごとに頭をもたげ、沈静化し、そして続く」と述べている。つまり、皆が将来を悲観しているわけではないようだ。

よりメディア価値を得られるインベントリー

トラストX(TrustX)のプレジデント兼CEOであるデイビッド・コール氏は、「私は楽観視している。4万4000のトップレベルドメインを対象に、広告費の15%がMFAに投じられていると公表することで、マーケターがANAのアドバイスに耳を傾け、今よりはるかに責任感を持ち、メディア投資を積極的に管理するようになるためだ」と語る。

トラストXは、ニュースを含むさまざまなカテゴリーのプレミアムパブリッシャーのインベントリー(在庫)で、バイヤーが人による閲覧可能なインプレッションに対してのみ支払いを行うプログラマティックマーケットプレイスだ。コール氏は、「ドメイン除外リストを使うのはもはや無駄だと私も考えており、マーケターは安全リストから購入した方がよりメディア価値を得られるという立場を以前からとっている」と続ける。

とはいえ、安全リストだけでは不十分だ。メディアバイヤーはパブリッシャーとの直接統合によるサプライパスを優先する必要がある。

「報告書で強調されていないのは、プログラマティックエクスチェンジの間接的なホップすべてが安全リストの忠実度を低下させ、不正対策やブランドセーフティ技術の効果が下がることだ」とコール氏は述べ、「間接的なプログラマティックエクスチェンジの連鎖を経由して購入すれば、最も高度にキュレートされた安全リストでさえメディア予算を守ることはできない」と言い添えた。

[原文:The Rundown: The ANA’s latest programmatic transparency audit confirms many open secrets

Ronan Shields and Seb Joseph(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:島田涼平)

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