男性用ケアのブラボーシエラ、Facebook広告を停止して1年:ROIが4倍に伸びた新プレイブックとは?

DIGIDAY

こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります

eコマースのブランドは長年、新規顧客獲得の手段として、Facebook広告からの脱却を図ってきた。しかし最近では、メタ(Meta)のCPM(インプレッション単価)が高騰したことから、メタを切り捨てることを検討しはじめているブランドが増えている。

Facebookとインスタグラムのマーケティングから完全に離脱したブランドのひとつが、2019年に創設された男性用パーソナルケアブランドのブラボーシエラ(Bravo Sierra)だ。同ブランドは最初、おもに陸軍や海軍の基地にある購買部や交換所で小売販売を通じて成長してきた。

メタの広告ネットワークで成長を試みてきたが、2年後の2021年の8月、ブラボーシエラの創設者たちはFacebookとインスタグラムでの広告をすべて取りやめ、より収益率の高いマーケティングチャネルに予算を割り当てることを決定した。それから1年後の現在、同社はAmazonを多用する新しいマーケティングミックスを取り入れ、新しい顧客を探すために卸売への展開を拡大している。

Facebook広告への不満

ブラボーシエラの共同創設者であるベンジャミン・ベルネット氏は、同社のFacebookでのCAC(顧客獲得コスト)が、2021年には2020年に比べて50%もはね上がり、70ドル(約9940円)前後に達したと、米モダンリテールに語った。「参考までに、当社のAmazonでのCACは常に10ドル(約1420円)未満だ」と同氏は述べている。

2022年には、ブラボーシエラが新しいマーケティングミックスを採用したことで、同ブランドのD2Cサイトで買い物をする顧客のCACは20ドル(約2840円)程度に落ち着いた。「コンバージョン率はbravosierra.comにおいて比較的一定で、6〜7%を維持している」と同氏は述べ、メタのプラットフォームでの広告を停止してからもその率に変化はない。

メタでの広告を停止するという決断には、いくつかの要因が関連していると、ベルネット氏は説明する。同氏は次のように述べている。「iOS14が開始されるよりも前から、メタのプラットフォームでCPMやCACは上昇し続けていた。ある時点で、Facebookの顧客獲得を通じてD2Cで収益を得る道を描くのは、不可能に近くなっていた」。

2つ目の要因は、ブラボーシエラがFacebook広告マネージャのアトリビューションアルゴリズムに不満を募らせていたことだ。ベルネット氏は、ますます混乱するアトリビューションデータについて、「このツールは、同社プラットフォームに起因する注文や顧客の数を常に過大評価し、その結果、疑わしいROAS推定値を算出しているようだった」と語った。「そしてついに、iOS14が最後のとどめとなった」と、同氏は述べている。

iOS14では、Facebookやインスタグラムなどのアプリがブラウザーの閲覧状況を追跡することをユーザーが拒否できるようになったが、このアップデートが最後のとどめとなったのは、ベルネット氏だけではない。フロイド(Floyd)、アスレチックグリーンズ(Athletic Greens)、ユアスーパー(Your Super)など多くのD2C新興企業は、この変更が加えられたあとでメタの広告に振り分ける広告予算の割合を減らしたか、完全に停止した。これに対してメタは、Appleのプライバシー変更によって、同社は今年、100億ドル(約1兆4200億円)の広告収益を失うことになると述べている。

メタを使用しないプレイブック

ベルネット氏は、ブラボーシエラがこの1年間、ブランドマーケティング、コミュニティ、Amazonという3つの戦略的な柱にそってマーケティング予算の再編成を行ったと語る。同社のマーケティング戦略にもっとも大きな影響を与えたのは、おそらく同社の新しい流通方法だろう。

同ブランドは、Facebookでの広告を停止すると同時に、Amazonでの販売を開始した。「これによって、Facebook広告の予算の一部をAmazonでの広告に振り分けられるようになり、Amazonでの広告は単純なスポンサー付きリスティングから、マルチメディアのツールボックスへと進化した」と、ベルネット氏は述べている。

わずか数カ月のあいだに、Amazonでの売上額はブラボーシエラのD2C売上額を超え、「広告予算に対するROI(投資利益率)は、Facebookのときの3〜4倍に達した」と、同氏は述べている。同氏によると、同社はAmazonへの支出を毎月増やしている。「ボトムオブファネル広告で、厳格に最小限のROASの最低条件を厳格に設定している」。

特にこの動きのおかげで、同ブランドは今年、Amazonで急速に成長した。同氏は次のように述べている。「当社でもっとも売れている消臭剤はこの夏、このカテゴリーにおいて、米国でベストセラー7位になった。Amazonでは毎月、2ケタ増で成長した」。

もうひとつの大きな変更は、同ブランドがこの夏に数千もの新しい小売店から販売されるようになったことだ。同社は8月、ウォルマート(Walmart)の4100店舗で販売を開始したため、同社のマーケティング予算の大部分を、たとえばエンドキャップ陳列、サイドキック陳列、シェルフトーカーなど、店舗内のマーチャンダイジング施策に割く必要があった。また、主力商品をウォルマートの店舗やウェブサイトで販売するため、ウォルマートのデジタルネットワークでの広告も同時に開始した。

「TikTokのクリエイターやソーシャルメディアのブランドアンバサダーへの投資もはじめた」という。これは、8月のウォルマートでの発売を含め、ブランドの新しいオムニチャネル流通戦略をサポートする、トップオブファネル型の本格ブランドマーケティングコンテンツに焦点を当てたものだ。

ほかに成功したブランド認知戦略は、インスタグラムリールやTikTokでのユーザーによるオーガニックな投稿のプロモーションだと、ベルネット氏は語る。「当社は兵役に就いている軍人、退役軍人、軍人の配偶者のコミュニティをソーシャルメディアで活性化させ、ブランドとして望み得る、もっとも素晴らしいユーザー作成コンテンツを得ることができた」と、同氏は説明している。このコンテンツには、ジェット戦闘機パイロットがジェット機のなかにブラボーシエラの消臭剤を持ち込んで撮影した自撮り写真や、配備された軍人が戦場で同ブランドの抗菌性ボディワイプを使っている光景など、多彩なものがある。

広告投資へのROIを大幅に改善できる

広告代理店ベラルディ・ウォン(Belardi Wong)のデジタル戦略および統合マーケティング担当バイスプレジデントを務めるカラー・マーフィー氏は、さらに多くのeコマースブランドが、激変するメタからの脱却を検討することを期待しているという。インフレがマーケティング予算に食い込むにつれ、「予算がどこに使われているのかを知ることは、従来にも増して重要となる」と、同氏は述べている。

「Facebookから離脱すると、より投資対効果の高いチャネルにその予算を割り当てることができる」と、マーフィー氏は述べる。ブランドが、「ROASを改善して顧客を維持する」ためのもうひとつの方法は、自社D2Cサイトで複数の商品を限定でセット販売することであり、ブラボーシエラはこれを上手に行ったと同氏は評価している。

「全体として、Facebookへの依存を減らすのはいいことだ。特に、Amazonやウォルマートのような大きなチャネルを使用した流通の多様化と並行して行うのが適している」と、マーフィー氏は説明する。

しかし依然として、新しいマーケティング戦略をテストするには、習熟のための時間が必要だと、ベルネット氏は語る。

ベルネット氏は、現在のマーケティングチャネルは、数年前のFacebookやインスタグラムよりも、技術的にもユーザートレンドの観点からも、はるかに速く進化していると語る。「当社は常に最新のトレンドに適応していく必要がある」と同氏は述べる。しかし、メタの大きなコストから解放されたことで、同社は「広告投資へのROIを大幅に改善し、CACを低減することができた」と同氏は述べている。

[原文:How Bravo Sierra is faring one year after turning off Facebook advertising]

GABRIELA BARKHO(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Bravo Sierra

Source

タイトルとURLをコピーしました