「ブランドは小売との新しい関係を探している」:卸仕入れサイトのフェールCFOが語る、海外進出の狙いと成果

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フェール(Faire)はグローバル市場に狙いを定めている。

同社は2017年に創設され、卸売商品用のオンラインマーケットプレイスを独立系ブランドや小売業者向けに提供してきた。同社はアパレルや家庭の装飾品から、美容品、食品まで、幅広い卸売商品を販売している。同社の収益は、同社のプラットフォームで完了した取引に対しての業務委託料によるものだ。サンフランシスコを拠点とする同社は、昨年11月に4億ドル(約556億円)を売り上げ、海外でのプレゼンスを急速に拡大した。昨年、初めて英国市場に参入して以降、さらに欧州の16カ国に展開し、4カ月前にはオーストラリアで事業を開始した。現在同社のプラットフォームは、全世界で100カ国以上にわたる8万5000ブランドをホストしている。

フェールは最近、食品ベンダーからの需要が高まっており、食品ブランドと小売業者とのあいだでの注文は最近になって100万を超えた。同社を利用する食料品や特選品の小売業者は昨年130%増加し、10万以上の小売業者が同社のプラットフォームで食品や飲料のブランドを購入している。さらに、このカテゴリーの小売業者は、平均してほかの小売業者よりも多くの額を消費する傾向があり、一部の業者は全体で数十万ドルを消費していると、同社は回答している。

フェールのCFOを務めるローレン・クックス・レビタン氏は、急成長中の食品ブランドを小売業者につなげる支援に注力していると語る。同氏は、フェールのプラットフォームを利用して卸売事業を成長させた例として、モモフクグッズ(Momofuku Goods)やノンアルコール食前酒ブランドのド・ソワ(De Soi)などの業者を挙げている。モモフクグッズは香ばしいシーズンドソルト、いりごま油、醤油などの貯蔵用食品を販売しており、フェールのマーケットプレイスで最初に販売をはじめた食品ブランドとなった。1年足らずのあいだに、フェールにおける700の小売業者が同社の商品を仕入れるようになった。

「同社は今年前半に販売を開始し、これまでにほかのどの食品ブランドよりも多くの新しいリレーションシップを作り上げた」と、レビタン氏は米モダンリテールに語った。

米モダンリテールとの対談で、レビタン氏は食品および飲料部門におけるフェールの人気、同社の欧州における成長、および来年に向けた目標と野心について語った。以下の対談内容は簡素さと明瞭さを考慮し、編集を加えたものである。

◆ ◆ ◆

−−食品および飲料カテゴリーにおけるフェールの推進力と、マーケットプレイスにおけるこれらのカテゴリーの重要性の増大について話してほしい。

当社にとって、食品および飲料の分野は非常に興味深いものだ。この分野では膨大な数の新しいビジネスが形成され、創造性とエネルギーにあふれている。その多くはすでに存在していたものだろうが、新たに誕生したものも数多いだろう。パンデミックの最中に人々が自宅で過ごし、自宅で料理をして、娯楽を楽しみ、パン生地を作る以外の新しいことを色々と試していた頃にも、数多くの新しいものが誕生していた。この傾向は今後も続くと考えている。

当社は、ブランド形成側において、非常に活気のある動きを目にしている。そして小売の側でも同様に、食品専門の小売業者に限らず、このカテゴリーを成長の機会だと見なしている小売業者は急増している。これは、ブランドや商品の製造側と、小売や流通側の両方に数多くの起業家が存在している好例だ。そして、当社はこれらの業者の努力をサポートし続けることが極めて重要だと感じている。

−−御社の欧州への展開はこれまでのところどのように進んでいるか?

当社は最初、北米で事業を行っていた。2021年にはじめて英国に参入した。それ以来、欧州では英国以外の16カ国に展開した。そして、ごく最近オーストラリアで事業を開始した。

この展開は、当社のブランドと小売業者の両方にとって素晴らしいものとなっている。ブランドはほかの市場に販売する機会を求めている。これまで手の届かなかった商品を発見したいという欲求も存在する。北米の外部に存在するブランドと小売業者のニーズは同じものだ。ブランドは新しい小売のリレーションシップを探し求めている。

当社は、北米のブランドの多くが欧州やオーストラリアで新しい販売先が増えることに興奮しており、その逆も同じであることを見いだした。当社が欧州で新しいブランドと出会うことで、その新しいブランドは、世界最大の市場である米国市場に参入できることに大きな喜びを感じている。フェールのようなマーケットプレイスがなければ、小規模なブランドや小売業者が、これほど広範囲に市場に参入するのは困難だっただろう。我々は今、商品のためのグローバルなマーケットプレイスを確立したと感じている。

−−欧州についてもっとも期待していることは何か?

国によって有名な商品カテゴリーは異なり、商品も異なる。しかし、欧州での展開で学んだことの興味深い点は、欧州の小売業者のニーズは、北米の小売業者のニーズとほとんど同じだということだ。これらの業者は、自分たちの店舗に置くため、非常に興味深いユニークな商品を求めており、独自の商品で顧客を驚かせ、喜ばせたいと考えている。また、価値のあるものを買い求め、店舗のメッセージを顧客に簡単に示すことができるような方法でフィルタリングしたいと思っている。つまり、全世界への展開を行うなかで、相違点よりも類似点のほうが多いということがわかった。

−−経済状況の変化は、各業者がフェールを利用する方法に変化を引き起こしたか?

当社が目にし、実際に推奨してきた変化のひとつは、小売業者が必要になる時点が近づいてから購入を行うようになり、顧客が優先するもの、反応したもの、期待するものがわかるまでしっかり見て、それに合わせて再発注できるようになったことだ。

当社は業者に対してこれを可能にし、そのときどきの状況への集中を可能にする。捕捉したいトレンドがある場合、その要求を満たすために役立つブランドが全世界で8万5000もある。これが、現在起きている変化のひとつだと考えている。

−−最近フェールで需要が増えているのはどのような種類のベンダーか?

食品と飲料は着実に増加しているカテゴリーだ。アパレルも成長している。これは人々が仕事に戻るにつれ、新しい衣服を必要としているためだ。美容品も堅調だ。人々がまた外出するようになったため、美容品やウェルネスの商品もよく売れている。

−−フェールが小売業者とのあいだで直面した最大の課題は何か? 業者がもっとも心配しているのは何か?

いくつかの懸念があった。当社のブランドと小売業者はいずれも労働力不足や作業員の確保に悩んでいる。これは明らかに問題点だ。当社は常にツールと機能の構築を行っており、それを利用すれば人員を増やさずに業務を運営できる可能性があるため、これらの業者を支援できると感じている。ブランドであれ小売業者であれ、その処理を合理化することを関係者は考えている。また、人々がもっとも気にしているのはインフレだ。

人々が考えているもうひとつの問題は、今後の経済の行方とビジネスの計画方法だ。当社が小売業者に対して、必要になる時点が近づいてから購入を行うことを推奨した理由の一部はこれだ。トレンドが何か、自社にとって何がうまく働くかを見極めるべきだ。

−−「必要になる時点が近づいてから購入を行う」とはどういうことか、もう少し説明してほしい。小売業者に在庫を減らすよう求めるということか?

在庫を減らすという意味ではない。商品を買い求め、ものを試して新しい商品を見つけるのはいいが、いっぺんにすべてを購入しないということだ。フェールでは、業者が個人と新しいリレーションシップを築き上げるとき、または小売業者がブランドから買い求めるとき、商品を返品できる。これにより当社は業者に対して、試してから事業の手を広げて成長する方法だけでなく、関係のリスクを解消する方法も与えている。

−−今年のマーケットプレイスの取引数量はどうだったか? 過去の年と比較してどの程度増加したか?

当社は今年GMVが10億ドル(約1390億円)を突破した。マーケットプレイスは引き続き急激に成長している。その成長の原動力は、地理的な拡大やカテゴリーの拡大だ。そして、マーケットプレイスが流動的になり、当社がより多くの商品を販売することで、小売業者がより多くの商品を見つけ、購入できるようになったことも理由だ。これらが当社の成長の大きな原動力になっている。

−−2023年のフェールの野心と目標は何か?

当社が2023年に優先しているのは、小売業者のあらゆるニーズを満たせるようになることだ。小売業者が自分たちの店舗を作り上げるために必要な、すべてのものを入手できるようになるのをめざしている。これが2023年の当社の最優先目標だ。

[原文:‘Brands are looking for new retail relationships’: Faire CFO on its overseas expansion]

VIDHI CHOUDHARY(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Faire

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