パブリッシャー たちの2Q収益「よくて横ばい」。年末に向け警戒感高まる

DIGIDAY

多くのパブリッシャーたちにとって、2023年第2四半期の前年比収益動向は良くても横ばいの結果になりそうだ。これは、7名のメディア幹部たちへの取材から得た情報だ。

「私たちは昨年と全く同じ収益状況にある」と匿名を希望したメディアの幹部は述べ、この動きは昨年から第2四半期にかけて設定した目標とも完全に一致していると加えた。「ただし、第3四半期や第4四半期でどこに行き着くかはまだ分からない」。

取材に応じてくれた幹部たちが勤務するパブリッシャー7社では、第2四半期が一年前と比べて収益減はない見通しで、ほっと一息をついているようだ。しかし、今年の半ばになっても未来が不透明なままであることから、セールス戦略から新しい広告契約を評価する際の利益率の重視度まで、すべてを再考しているという。

広告取引は他パブリッシャーとの熾烈な争いに

「私たちが第2四半期に着地した地点は、基本的に昨年の同時期と肩を並べる状態だ」と、アパートメント・セラピー・メディア(Apartment Therapy Media)のプレジデント、リーヴァ・サイロップ氏は語る。「正直なことを言うと、本当は(前年の第2四半期を)超えたかった。物事がもっと早く進展すると思っていた。とはいえ、現在の着地点には不満はない」。

匿名を希望した別の幹部は、2023年の5月は自社にとって広告販売の観点からは最高の5月だったと述べた一方で、目標を達成することは昨年の同時期よりも困難だったと語った。前年比の第2四半期収益予測の数字は明かさなかった。「すべての取引において競争がより激しくなり、すべての広告主がより慎重に選り好みをしており、予算が小さくなっている。だから、下半期がどうなるのかについては、正直なところいい予感はしていない」と同エグゼクティブは続ける。「私は、それが上半期とほとんど同じになると思っている」。

本稿の取材に匿名で応じた3番目の幹部は、自社が提供する主要なイベントにおいて、100〜300万ドル(約1億4000万〜4億2000万円)の間の金額で3つの契約を獲得できたと言う。一方で、「毎日、必ず、当たり前にようにこなしている広告提案」は「熾烈な空中戦を想起させるような激しい争い」の様相を呈していると語った。仮に状況が「価格が湧き立っている市場」であれば、四半期に10件の数百万ドル単位の取引を売ろうとするだろうと述べた。

「我々対40の他のパブリッシャーとなると、厳しいだろう」とこの幹部は語る。そして不幸にも、年間を通じてメディアビジネスを支えるのは、こういった小規模から中規模の広告取引だと言う。同エグゼクティブは第2四半期の総収入についての年間比較を明らかにしなかったが、四半期が過去数年間の目標に後れを取っており、状況が明るくなるのはおそらく2024年になるだろうと語った。

各社の今後の予想は当たるのか

本稿のために取材に応じてくれた幹部たちはほとんど全員、2023年下半期の広告収益の予測は、今年の第1、第2四半期、そして2022年の第3、第4四半期と同じくらい難しい予測になるだろうとの意見で一致していた。これは主に、マーケターたちの間で、キャンペーン開始の数カ月または数週間前ではなく、四半期単位で広告をほとんど購入するという習慣が共有されているためだ。

「今年は依然として非常に厳しい取引ベースで進んでおり、四半期単位での広告予約が主となっている。まだ下半期、主に第4四半期について厳しい要求に直面することは避けられない」と、新興メディア企業のワールド・オブ・グッド・ブランズ(World of Good Brands)のCEO、リンジー・アブラモ氏は語った。同社はリーフ・グループ(Leaf Group)のポートフォリオから誕生した。

しかし、これは広告主たちが突然新しい習慣を始めたわけでも、最近の経済下降の兆しを示しているわけではない。過去数年間にわたり、広告の販売サイクルが短くなるという傾向が続いている。ここで重要なのは、これが新たな常識となるのか、という問いだ。

「これは一時的なことだと思う。どのビジネスも月単位で計画を立てることを望んでいるわけではない。本当に厳しい時期にだけそれを行う」とアクシオス(Axios)のCEO兼共同創業者、ジム・ヴァンデヘイ氏は語り、今の市場は過去15年間で経験した「もっとも奇妙で忙しない市場」だと付け加えた。

一方、他のパブリッシャーたちは、しばらくこの状況が続いたことからしても、今後もこれが広告ビジネスの「当たり前」になると述べている。

「広告主は確かに市場において非常に短い期間で広告を購入している。しかし、それは現状のように不安定で奇妙な経済・社会状況になる前からすでに起こっていた傾向だ」とドットダッシュ・メレディス(Dotdash Meredith)のCEO、ニール・ヴォーゲル氏は述べた。「もちろん、私たちはすべての広告支出がかなりの余裕を持って計画されていればいいと思っている。ただ現実はそうなっていない。しかし、私たちはまた、そこに囚われない体制になっている」と彼は続け、自社のセラーとセールスツールは短い販売サイクルに対応できるよう備えていると付け加えた。

利益を優先

不確実性と不安定性を緩和するために、一部のパブリッシャーたちは、広告支出が増えなかったとしても利益を増やすために、さまざまな方法で販売戦略を変更してきた。

匿名で取材に応じた2人目の幹部は、彼の会社ではセールスチームにプレッシャーをかけて、Zoomよりもクライアントとの対面会議を優先するようにしていると述べる一方で、1人目の幹部は、販売後のオペレーションの無駄を削ろうとしていると語った。

「我々の目指すところは収益ではなく利益の最大化だ。これは計測が難しい数値だが、要はコストを減らしながら収益を同じレベルに保つことが目標だ」と1人目の幹部は語る。そして現在、彼の会社はちょうどその目標を達成しつつあるという。

このパブリッシャーにとってのコスト削減は、スタッフの数を減らすことや大きな不動産資産を手放す形でのものではない。このエグゼクティブによると、同社は各広告についてその利益率での評価を始め、キャンペーンの制作にかかる間接費が取引から得られる収益をどの程度食いつぶすかを考慮するようになった。

まだ完璧なアプローチではないが、プログラマティック広告のような高利益率のキャンペーンを優先し、ブランデッドコンテンツやイベントなどの複雑なスポンサーシップを作り上げるための間接費をいくらか削減することで、広告主の広告支出をコントロールできない中でも、このパブリッシャーは今年の会社全体の利益を増加させることができたと言う。

「収益が横ばいであっても、販売するものの効率が向上していれば、それは非常に成功した年となる」と同幹部は語る。

[原文: It’s a dogfight: Publishers’ Q2 revenue was flat, but they’re wary of remainder of the year

Kayleigh Barber(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)

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