「 Discord 」を活用するファッションブランドたち:StockX、アディダスなどの事例

DIGIDAY

リセール企業のStockXは、2021年6月に行われた初のイベント「StockXデー」のデビューに合わせて、まったく新しいプラットフォームとなるDiscord上に同時にローンチした。1日で2万人以上の会員が参加し、StockXは1日のうちにもっとも多くのユーザーが参加したブランドサーバーの記録を獲得した。

7年前に誕生したDiscordは、テキストと音声のチャット「サーバー」を中心に構築されたソーシャルプラットフォームで、ゲーミングや技術系の人々の間でもっとも人気がある。しかしファッションがこれらの両方の世界へと移行するにつれて、ブランドが運営するコミュニティとオーガニックに形成されたコミュニティのどちらにとっても、Discordはとくに技術やゲーミング、暗号分野にクロスオーバーしたファッションについて話し合うためのすばらしい拠点となりつつある。

各ユーザーに合わせた多様なコミュニティを構築できる

「Discordのローンチは、我々にとって大きな節目となった」と、StockXのCMOディーナ・バーリ氏は述べている。「これは我々の顧客が大切にしているコミュニティへの参加を意味する。双方向の対話であり、人々が我々に言い返すことができるフォーラムであり、我々の顧客が大事に思っていることから目を離さずにいられる」。

Discordサーバーは通常、Slackと同じように設定され、その中で異なるトピックに専念した複数のチャンネルを持つことができる。たとえば、StockX Discordには、新メンバー向けの #welcome チャンネル、一般的な話題に関する #general-chat チャンネル、スニーカーに関する #sneakers チャンネル、NFT専用の多くのチャンネルがあり、StockXのモデレーターだけが投稿できる公式の #announcements チャンネルもある。

この自由な構造により、Discordはほかの多くのソーシャルプラットフォームとはまったく異なる存在となっている。より会話重視で、またその性質上、ブランドが持っているであろう、もっとも忠実な顧客やアクティブな顧客を引きつけることができるのだ。

Discordの戦略的コミュニティ責任者であるアンバー・アザートン氏は「Discordをこれほどまでに魅力的にしているのは、ほかのサービスといかに違うかという点にある」と述べた。「Discordには『いいね!』もなければ、ものごとがバイラルになるようなこともない。その代わり、気の合う人たちとコミュニティを作ることで、ユーザーが自分らしくいられる場所を提供している。そして、ファッションを愛する人たちが作りたいと思う目標やそれぞれの経験の種類に応じて、親密でニッチなコミュニティから大規模なメインストリームのコミュニティまで、人とつながるためにDiscordを活用することができる」。

望ましいターゲットから有益なフィードバックが得られる

この1年でファッションブランド向けの新たなDiscordが定期的に登場している。4月にはGAPが「Gap Threads」というDiscordサーバーを立ち上げ、アディダス(Adidas)は1月にアディダスオリジナルズ(Adidas Originals)用のサーバーを立ち上げた。これらのDiscordの多くは、ブランドが作成したNFTにかなり注力しているが、使用事例は決してそれだけではない。

香港とロサンゼルスを拠点とするファストファッション企業のサイダー(Cider)には、昨年立ち上げた2000人以上のメンバーがいる盛況なDiscordがある。サイダーの共同創業者であるフェンコ・リン氏によると、Z世代の顧客をターゲットとしたり、製品のデザインや製造の決定の際に有益なフィードバックを得たりするのに、Discordがとくに役立っているとのこと。

「すべてのソーシャル・チャネルで(Discordを)増幅している」と、リン氏は3月にGlossyに語っている。「私たちは、自分たちをZ世代と心が通じ合う存在だと考えている。Tシャツのロゴや商品名からサイズ展開にいたるまで、あらゆることに関してコミュニティからの提案を集めることで、楽しくて人を惹きつけるプロジェクトをローンチすることができる」。

一部のブランドのDiscordは、他のブランドよりもアクティブだ。StockXの3万2000人のDiscordメンバーは、1カ月あたり平均20件ずつ投稿しており、これはDiscordの平均の2倍にあたる。

StockXの広報担当者によると、同社のDiscordユーザーの86%は半年以上メンバーであり、Discordは現在StockXのもっとも地理的に多様なプラットフォームとなっている。Discordのメンバーの半数以上が米国外を拠点としているため、Discordはグローバルなオーディエンスをターゲットにするためのよいツールとなっている。

StockXでは、新しいドロップを前もって宣伝したり、Discordメンバーに対して売り手の手数料を50%オフにするといった限定割引を提供したりするために、定期的にDiscordを活用している。

課題はレベルの高いモデレーションへの期待

しかし、Discordにはコストがかかり、なかでも留意すべき点は、つねにモデレーションを行う必要があることだ。

「Discordは最新のプラットフォームになっているが、チャンネルを立ち上げるには、ユーザーとつねにエンゲージするためにブランドからの常時リソースを必要とする」と話すのは、デジタルエージェンシーのムービング・イメージ&コンテント(Moving Image & Content)のCEOクィン・マイ氏だ。「Discordはもっとも熱心な消費者のためのプライベートなSlackチャンネルのようなものだ。そこでは会話や対話、そして多くのブランドが管理できないレベルのモデレーションが期待される。大抵の場合、コミュニティマネージャーはコンテンツ制作者であって、コミュニティのモデレータではない」。

ほとんどのブランドのDiscordには、ブランドの社員とコミュニティのボランティアから成るモデレーターがいる。コミュニティモデレーターは通常、ヘイトスピーチやハラスメントを行ったユーザーを禁止するなど、サーバーのルールを実施することを任務としている。一方、ブランドモデレーターは一般的に、プレゼントやコンテストの運営、お知らせの投稿、ユーザーと企業の間の通常のインターフェイスに注力する。

同じ嗜好の人々が交流する手段になっている

Discordは過去3年間で急成長を遂げており、2022年3月時点で月間アクティブユーザー数は1億5000万人以上に達している。

「顧客体験の観点からすると、ブランドが既存の顧客との関係を維持し、新たなオーディエンスにリーチしてエンゲージメントの高いコミュニティを構築する上で、Discordは大きなチャンスだ」と話すのは、CXオートメーションプラットフォームのリンク(Linc)でマーケティング・バイスプレジデントを務めるクリスティン・ドーシー氏だ。「Discordはゲーミングからスタートしており、初期のユーザーはテクノロジーに精通していたが、口コミによって、同じような興味を持つあらゆる人々が集まって交流する手段へと成長している」。

[原文:‘It’s become the platform du jour’: How fashion brands are tackling Discord]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida、編集:黒田千聖)

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