Google 、新プライバシーツール「マイアドセンター」の狙いは?:「消費者に選択肢を与えているというメッセージだ」

DIGIDAY

Googleは2022年、デバイスに表示される広告の管理を容易にする新たなツールを導入する。ユーザーは、トピックやカテゴリーごとに表示される広告を設定できるほか、広告主の情報も入手できる。Googleはこのツールにより、データのプライバシーと透明性の確保を推進する当局をなだめる効果も期待しているようだ。

新ツールの名称は「マイアドセンター」(My Ad Center)。ツールに備わる機能により、Googleの検索エンジン、ディスカバー(Google Discover)、YouTubeの利用者は、自らの広告体験をさまざまにカスタマイズできる。

「この広告について」の後継

マイアド・センターは現行の「この広告について(About this ad)」の後継となる機能で、2022年末までに導入の予定。ユーザーにとっては、表示される広告を増やしたい(あるいは減らしたい)トピックやブランドを指定できるようになり、選択の幅が広がる。

アルコール、ギャンブル、妊娠、育児、デートといった、マイアドセンターで「センシティブ」に分類されるデリケートなトピックを選んで広告表示をカスタマイズしたり、パーソナライズ化を一律無効にしたりできる。

加えて、年齢、既婚・未婚などの交際状況や学歴といったデモグラフィックデータの管理、特定の広告の表示停止のほか、特定ブランドの広告配信リクエストまで可能になるという。

米カリフォルニア州マウントビューに本社を置くGoogleは、恒例の開発者向けカンファレンス「Google I/O」を5月11~12日に開催。マイアド・センターはこの場で、次期Android OSなど、消費者向けソフトウェアの最新技術とともに発表された。

カテゴリー管理だけが目的ではない?

Googleでプロダクトマネジメント/広告プライバシー/ユーザー信頼性部門のディレクターを務めるデヴィッド・テムキン氏は、報道陣の前でマイアドセンターの各種機能のデモをおこない、ユーザーが広告について報告し、広告を出稿した事業者を特定し、当該の広告が表示された理由を知るための機能についても説明した。

「マイアドセンターは、Googleで閲覧できるウェブサイトとアプリに表示されるパーソナライズ化広告に関し、これまでにないレベルの管理、方法、価値を提供することを意図している。ユーザーがウェブサイトとアプリ上で見る広告について、よりきめ細かい設定を実現するサービスだ」とテムキン氏は語る。

マイアドセンター導入の意図についてテムキン氏は、「重要なのは、プライバシー保護法の遵守やチェックボックスによる同意取得だけではない」と語る。「我々は、ユーザーのためになる仕組みを構築しようとしている。マイアドセンターは、ターゲティング広告のカテゴリー管理が目的というより、いままでにない、まったく新しいツールなのだ」。

テムキン氏はさらにつけ加えて、こう述べた。「マイアドセンターの機能によりユーザーは見たい広告のカテゴリーを選択・設定できる。しかし、あるカテゴリーの広告がユーザーの指定により配信を停止されたとしても、同じカテゴリーの広告でユーザーの興味に関連する商品が紹介されれば、配信されることもある。広告の表示は、ユーザーがどんな商品やブランドに興味があるかにより決まる」。

テムキン氏によれば、マイアドセンター導入後、ひとりのユーザーが指定した広告カテゴリーの好みは、Googleディスプレイネットワーク(Google Display Network)を通じて表示できる広告の種類自体には影響を与えない見通しだ。Googleは、マイアドセンターのサービスを、最終的には同社が所有・運営するすべてのプロパティに拡大する意向だという。

見え隠れする既視感のある狙い

米DIGIDAYの取材に匿名で応じたある情報筋は、マイアドセンターについて、Googleが自社ネットワーク上の広告パフォーマンスを維持する一方で、広告主とのデータ共有に関して、厳しくなりつつある法規制を遵守するための施策だとしている。

プロハスカ・コンサルティング(Prohaska Consulting)のマーケター/代理店/テック戦略部門シニアバイスプレジデント、マイケル・オウレット氏は、マイアドセンターを評して、広告設定に関するユーザー側のコントロール範囲を拡大しようとしたGoogleの以前の施策の焼き直しだと述べた。

「この種のサービスは、間違いなく以前にもあった。しかし、ユーザーが好む広告設定について幅広い選択肢を与えるという取り組みで成功した例は、いままで見たことがない」とオウレット氏はいう。「Googleは、ユーザーに広告の好みの情報提供を促してゼロパーティデータを取得し、自社のエコシステムを充実させようとしている」。

スパロー・デジタル・ホールディングス(Sparrow Digital Holdings)の共同創業者兼プリンシパルのアナ・ミルセヴィッチ氏は、広告業界各社による個人情報へのアクセスを制御する手段を消費者側に与える試みは歓迎すべきだと評価しながらも、今回のGoogleの発表にはデジャ・ヴ的な要素があると述べている。

「この種の機能は消費者向けのサービス改善のように見えるが、その一方でGoogleにとっては、重要なメッセージを打ち出せるというメリットがある」とミルセヴィッチ氏はいう。「そのひとつが、『消費者にはちゃんと選択肢を与えている』というメッセージ。もうひとつが、『消費者は自らの同意を明確に示せる』というメッセージだ」。

[原文:Google’s latest privacy tool is also a useful feature to bolster ad performance

Ronan Shields(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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