女性のための医療ネットワークが認知拡大に OOH を使う理由:「コミュニティに加わることの意味を、実際に見て、聴いてもらいたい」

DIGIDAY

女性のための医療ネットワークを運営するティア(Tia)がソーシャルメディアとOOH広告を活用したキャンペーンを展開し、女性患者のケアについて活発な議論を促している。

ブランド認知の向上はもとより、ティアは女性医療の改革という大きなミッションを掲げてマーケティング活動に取り組んでいる。たとえば医療ガスライティング(患者が心身の不調を訴えても医師がまともに取り合わず、必要な治療を怠るなど)に見られるような、医療現場での女性に対する不当な扱いを是正し、女性医療の在り方自体を根本から見直そうと、ほかならぬ女性たち自身に訴えている。

潜在顧客をクリニックに呼び込む

「女性による、女性のための、女性医療をめぐるまったく新しい動きが生まれている」。そう話すのは、ブランド戦略とデザインを手がけるハイブリッドエージェンシーのVSAパートナーズ(VSA Partners)で最高戦略責任者を務めるアリアドナ・ナヴァロ氏だ。「医療だけでなく、女性の社会的地位をも変革する可能性を秘めている。女性の地位向上が進み、新しい方法で医療にアクセスできるようになっていることも、ひとつの背景だ。」。

今回のキャンペーンの狙いは、潜在的な顧客をティアのネットワークに参加するクリニックに呼び込み、ティアのコミュニティに加わることの意味を、実際に見て、聴いて、感じてもらうことだという。同時に、2017年にニューヨークで設立されたティアは、OOH広告を通じて、地元ニューヨークにおける認知度向上を図りたい考えという。

ティアの医療ネットワークは、プライマリケア(初期診療)、婦人科、メンタルヘルスサービス、鍼灸治療など、主要な医療サービスをひとつ屋根の下に集め、女性のニーズに総合的に応えることを売りにしている。利用者は年会費を支払うことで、対面サービスとバーチャルサービスを受けられる。なお、会員数は公表されていない。

ティアのマーケティング担当バイスプレジデントを務めるリンゼイ・ベルナップ氏はこう話す。「地元での認知度が高いこと、クリニックの予約状況が安定していることから、ニューヨークでの事業拡大に今年いっぱい投資を続けることにした」。さらに、10月中にはソーホーに、11月半ばにはウィリアムズバーグ(ブルックリン)に新たなクリニックをオープンする予定という。また、クリニックの新設に合わせて、両地区でビルボード、壁面広告、デジタルOOHを展開し、ブランド認知のさらなる強化を図る。

動画広告はソーシャルファーストで制作

このキャンペーンでは、16人のスタッフが在籍するクリエイティブエージェンシーのビッグスペースシップ(Big Spaceship)と連携して、30秒のスポットCMと15秒の動画広告3本を制作した。このCMと動画広告には、OOH広告で起用した実在のティア会員とティア在籍の医療従事者が出演している。動画広告、刺激的なビルボード、大胆な写真を通じて医療の現場で女性の声に耳を傾けることの重要性を訴え、そのハイライトを30秒のスポット広告に凝縮した。

ティアの広告予算の詳細も、今回のキャンペーンに充てられた広告費も不明だが、パスマティクス(Pathmatics)のデータによると、ティアが今年使った広告費は86万4000ドルで、昨年の64万3000ドルから大きく増えている。ベルナップ氏によると、予算の約半分がOOHに、25%がデジタル広告に支出され、残りはイベントとインフルエンサーに振り分けられた。また、このキャンペーンでインフルエンサーは起用されていない。

ベルナップ氏によると、動画広告はTikTokとインスタグラムストーリーズのフォーマットに合わせて設計され、「ソーシャルファースト」、つまり縦向きで撮影された。今年経験した40%増というインスタグラムのフォロワー数の増加は、このコンテンツ制作のおかげだとベルナップ氏は述べている。ソーシャルメディアの指標を追跡するスプラウトソーシャル(Sproutsocial)によると、ティナのフォロワー数は1月から8月にかけて5万人から5万2000人に増加した。

しかも、このキャンペーンは、6月にドブス判決が下り、続いてロー対ウェイド判決が覆されてまもなくという絶妙なタイミングで開始された。ベルナップ氏はこう強調する。「女性のためのプライマリケアを保護し、拡充することがいまほど重要なときはない。女性たちが、人生や身体に関する自分たちの選択を支援してくれる医療機関や医療従事者から、定期的かつ包括的な予防医療を確実に受けられるようにしなければならない」。

全米にネットワークを展開予定

ティアは、2023年第1四半期末までに、ソーホー、ウィリアムズバーグ、サンタモニカに新規のクリニックを開設する計画で、ベルナップ氏によると、米国全域にネットワークを広げることも視野に入れているという。

「提携する医療機関をもっと増やす必要がある。女性特有の身体的、精神的、心理社会的なニーズを理解し、女性が本来受けられて当然の質の高い医療を、身体の部位やライフステージで縦割りにすることなく、生涯にわたって提供できる医療機関との連携を強化したい」。

[原文:Why health care network Tia wants to reach women through OOH, social media

Julian Cannon(翻訳:英じゅんこ、編集:分島翔平)

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