「この問題に正当な優先順位を与えているのを見たことがない」:サードパーティCookie廃止に翻弄されるシニアマーケターの告白

DIGIDAY

マーケティング部門は長らく、オンライン広告キャンペーンを行うにあたりサードパーティCookieに依存していた。それが、Cookie廃止の流れにおいて問題を生じているものの、各企業が自社でオーディエンスデータを集めるようになったことで、マーケティング部門はターゲティング能力を取り返せるようになる。――少なくとも理論上は、そういうことになっている。

しかし、GoogleのChromeチームがサードパーティーCookie廃止の延期を繰り返していることからも明らかなように、そのような作業は言うは易く、行うは難しというのが現実だ。その結果、2024年以降に発生する大惨事を回避すべく多くの企業が「現実的」な戦術を採用しており、その派生としてセカンドパーティデータの増加がある。

匿名を条件に業界の裏側について赤裸々に語ってもらうDIGIDAYの「告白」シリーズ。今回は、多国籍ゲームブランドのシニアマーケターから、Cookieの廃止に対処する方法について、彼らが見てきたいくつかの実践例について語ってもらった。

以下の会話は、わかりやすくするために軽く編集され、要約されている。

◆ ◆ ◆

――少なくとも公の場では、誰もが自由に使えるファーストパーティデータを話題にしているが、個人的にはどのような動向が見られているのか?

最新のIABトレンドレポートでは、2021年時点で広告主のあいだでは、オーディエンスのターゲティングに関してファーストパーティデータが最優先事項であることが示されているが、GDPRの影響を受けているため、多少の誤解があったのではないかと思う。人々はまだ対策をまとめ始めたばかりだ。

私が観察する範囲では、マーケターたちはビジネスの分野によっては、ようやくCRMの観点からデータ収集を理解し始めたばかりの人もたくさんいる。GDPRで義務化されているデータプライバシー責任者すらも、雇っていない人さえいる。

したがって、私が知る限りではファーストパーティデータ構築を優先している多くの企業がいるが、実現するのはまだ先のことだ。

――では、実際にどのような企業がファーストパーティのデータを大規模に保有していると思うか。

P&Gやユニリーバ(Unilever)のような企業を考えてみると、彼らはファーストパーティデータをあまり持っていないと思う。なぜなら、これらの企業とオンラインでエンゲージメントを持つ消費者はほとんどおらず、ほとんどの人はオンラインではなく小売店を通じて商品を購入しているからだ。

ファーストパーティデータを使用することに(ユーザーが)同意しているかどうかを判断するプロセスの構築は、数カ月で完了するようなものではない。おおよそ2年のインフラストラクチャ変更の投資が必要で、多くの企業がそのためにかかるコストを計算し、高すぎる(のでできればやりたくない)と考えている。

最近の欧州IABのレポートでは、ファーストパーティデータがセカンドパーティデータよりも優先度が低いことが示されているが、これは正確だと思う。現状では、ファーストパーティのデータをあまり持っていないと理解しているマーケターか、持っていたとしても有効にするための適切な環境が構築されていない状況にあるマーケターたちがいるからだ。

――前述したように、多くの人がセカンドパーティのデータに目を向けているが、それにも懸念はあるのだろうか。

私は、セカンドパーティデータは自社データよりももっと複雑だと思う。ファーストパーティデータであれば、消費者が同意しており、GDPRの原則に従っていれば利用できる。

セカンドパーティのデータでは、それは少し難しくなる。たとえばとある劇場が、観客のデータを制作会社に販売するとする。制作会社は自分のブランドのためにほかの企業(劇場)からデータを受け取ることになる。購入元の会社に、ちゃんとこれが消費者の同意を得ているか、確認する必要がある。

2度承認プロセスがあるのであれば、それは間違いが起きる余地も2回になるということだ。私は、プライバシー擁護派がセカンドパーティのデータを利用に抗議し始めても驚かないだろう。

――では、大規模なファーストパーティのデータにアクセスできない人たちは、どうやってそれを回避しているのだろうか?

事業の核にデータが据えられておらず、「自社データのアセットを拡張するにはどうすればよいか」のソリューションを見つけられずに苦労している大企業とミーティングをした経験がたくさんある。

まずはプロセスを処理するために必要な、データプライバシーの規制、ガバナンス、コンプライアンスのフレームワークを組織内にしっかりと確立する必要がある。それは非常に手間のかかる巨大プロジェクトだ。いま、多くの企業がそのことに気付き始め、「しまったな、これは思ったよりも長くかかるぞ。とりあえずいまはセカンドパーティデータを優先して、自社データは後で取り組もう」と考え始めたと思う。

ファーストパーティのデータソリューションを見つけなければならず、それが大きな仕事となると人々は認識している。しかし、この2年半のあいだ、その現実に正当な優先順位を与えているのを見たことがない。Googleが(Cookieの完全廃止を)遅らせるたびに、彼らは「あぁ、よかった」と安心して、また取り組みを先延ばしにしてしまう

[原文:‘People are only just starting to get their sh*t together’: Confessions of an in-house marketer on first-party data

Ronan Shields(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)

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