値上げ の「言い訳」、ブランドは消費者とどうコミュニケーションするのか

DIGIDAY

アメリカの大手企業が価格を上げるのに対し、消費者の多くはインフレを原因だと考えている。ただし、実際にそうかどうかは企業によって異なる。一部の企業役員は最近の決算発表で、インフレを都合のいい言い訳として利用し、利益を上げるために価格をつり上げることができたと自慢した、と報じられている。

実際のところ、価格を引き上げて消費者の支出をいつまで維持できるかは不明だ。

とはいえ、一部のマーケターやエージェンシーの幹部、業界ウォッチャーは、(本当の原因がインフレであるかどうかにかかわらず)価格上昇についてのコミュニケーションを重視している。一部のブランドは消費者に向けて、物価上昇について直接的なアプローチを取っており、物価がさらに値上がることを理解してもらった上で、値上げ前にいますぐ購入するよう促している。また、より包括的なアプローチとポジショニングに重点を置いている企業もある。

透明性のある「値上げ」

「現在、私たちのクライアントの多くは、価格弾力性がブランド価値に結びついていることを知っており、ブランド構築に焦点を当てている」とキャンベル・イーウォルド(Campbell Ewald)のCSOであるカーリ・シメル氏は述べている。「企業は自らのストーリーや市場でのポジションを、今日のアメリカの価値観や文化につながるような形で考える必要があることに気付いている」。

広告代理店の幹部達は、価格が上昇してもブランドが何らかの必要な価値を提供していることを消費者に伝えることは重要だと指摘する。そうしなければ、消費者は懐疑的になったり、より多くのお金を払わなければならないことに怒りを覚える消費者が現れるかもしれない。

近年、消費者とブランドのあいだの信頼関係は低下している。消費者は現在、ブランドを信頼して「インフレが原因で価格を上げているのだろう」と考えるより、価格がなぜ上がっているのかGoogleで検索して、各社の魂胆を探る傾向にある。

エージェンシーのVIAでCSOを務めるデービッド・バーファインド氏は、「値上げのなかには、完全な透明性を持って実施されるものも増えている」と述べる。「(透明性を持って値上げをするブランドは)隠れて値上げをせず、(価格は据え置きだが)商品内の量を減らしたシュリンクフレーションのようなトリックもせず、価格調整を妙な婉曲表現で伝えたりもしない。彼らは率直に理由を説明している。なぜなら、消費者心理学の研究によると、悪いニュースを難読化したり、消費者にバレないようにこっそりとやり通そうとする試みは、めったにうまくいかないことがわかっているからだ。企業が悪巧みをしていることに対する消費者の嗅覚は非常に鋭い」。

インフレという状況をいいかに捉えるか

そうは言っても、消費者のあいだには、価格の上昇はいずれかの企業によって起こされているのではなく、業界全体でのインフレが感じられるという一般的な理解があると考える人もいる。アドバイザリー企業のフォレスター(Forrester)の主席アナリストで、バイスプレジデントでもあるディパンジャン・チャタージー氏は、「企業の利益の大部分を奪うか、顧客への負担転嫁を余儀なくされるか、のどちらかを選ばなければいけないのは悪いニュースだ」としつつ、続ける。

「それほど悪いニュースではないのは、これが状況的危機であると消費者のあいだで一般的に理解されていることだろう。つまり、金銭的なダメージを受けるだろうが、消費者はブランドだけを犯人として名指ししないかもしれない」。

一部では、ブランドは値上げに関するメッセージをどう乗り切るかだけでなく、インフレという状況下を踏まえてメディア投資の再考も始めているという。

「価格に関するメッセージだけでなく、インフレ環境を考慮してメディアチャネルも再考している」とVIAのバーファインド氏は語る。「たとえば、契約価格が1年以上固定されているブランド(ストリーミングサービス、ケーブル、電話会社などだ)は、ガソリンスタンドや食料品のレシートを広告媒体として有効に活用できるかもしれない。(ガソリン代や食費の高さに驚いている消費者たちに対して)驚くような価格上昇が身に染みている人々の手にあるレシートに、(金額が変わらないサービスとして)対照的なメッセージを並べることができる」。

[原文:Marketing Briefing: As brands increase prices citing inflation, marketers work to figure out how to communicate those hikes

Kristina Monllos(翻訳:塚本 紺、編集:)

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