カンヌ映画祭 でBMWが短編映画を披露した意味。「視聴される広告を作る」

DIGIDAY

数年ごとに、マーケターたちはエンターテイメントを中断して表示するタイプの従来型の広告ではなく、「広告がエンターテイメントそのものになるのだ」と決意することを繰り返している。そして今現在、マーケターたちは「エンターテイメントモード」にシフトしているようだ。

その最新の例は、短編映画のかたちで現れている。BMWとサンローラン(Saint Laurent)はカンヌ映画祭で短編映画を初公開し、フェンダー(Fender)は、自社の短編映画を公開する。

ストーリーテリングで広告が映画になる

「私たちは常にストーリーテリングにドラマを持ち込むことを心掛けている」と、BMWのブランドエクスペリエンスバイスプレジデントのステファン・ポニクヴァ氏は語った。BMWはBMWフィルム(BMW Films)を通じて20年間、エンターテイニングなブランデッドコンテンツを作り続けてきた。そして、2016年に「ザ・エスケープ(The Escape)」でそれを復活させた。「7年後、私たちは戻ってきた。これからは我々の存在を忘れてはいけない」と同氏は語った。

BMWは新しい短編映画「ザ・カーム(The Calm)」を使って、BMW i7エレクトリックセダンの新しいシアタースクリーン機能をカンヌ映画祭で披露。映画の主演はユマ・サーマンとポム・クレメンティエフが担い、映画館での上映ではなく、数十台の車を囲んだレッドカーペットを計画し、出席者はそこで7分間の映画を視聴した。

「映画は広告とは同じではない」とポニクヴァ氏は言い、「プッシュ型の車販売であれば、セールスファネルを通じてさまざまなマーケティングを行うことができる」と話す。「しかし、このようなクルマ−−つまりブランドを変革し、電動へシフトする存在−−の場合、従来のペイドメディアでの広告で伝えるのではなく、ストーリーテリングこそが人々に答えを与える。それは広告ではない。それは映画業界を愛する人々、映画という映像作品を愛する人々のためのものだ」と述べた。

実際に視聴されるコンテンツを

一方、フェンダーは新しいギター、シグナチャーフェンダーストラトキャスター(Signature Fender Stratocaster)をアピールするために、新進気鋭のミュージシャンであるスティーブ・レイシーとパートナーシップを結び、短編映画のアプローチを取った。「人々を想像の世界の旅に連れて行き、物語性のある映画においてギターを紹介するというこのアイデアは、私たちにとって新鮮なアプローチだ」とフェンダーのクリエイティブ・コンテンツ担当シニアバイスプレジデントであるアラナ・ストラウス氏はメールで述べた。

また同氏は、「物語主導のストーリーテリングは、ブランドが提供する商品だけでなく、それがオーディエンスにとって何を意味するのかを伝えることを可能にする」と、ブランドがマーケティングに短編映画を利用することについて語った。「魅力的なストーリーを共有することで、ブランドは注意を引き、コミュニティを育て、ブランドアイデンティティを構築する。最終的には、よい物語が持つ普遍的な魅力を通じて人々とつながり、オーディエンスとの強い関係を築くことが重要だ」。

ブランドメッセージに注目してもらう方法を見つけ出そうとしているマーケターたちにとっては、これは驚くべきことではない。広告無しストリーミングプラットフォームや広告ブロックが増え、そして多くの消費者がリニアテレビから離れているなか、マーケターたちは人々が実際に視聴するコンテンツを作らなければならない。それが短編映画が登場する文脈だ。

「短編映画は、深い物語を語る自由を与えてくれる。最後に(ブランドの)ロゴを張り付ける必要はない」と、クリエイティブエージェンシーのリトルハンズ・オブ・ストーン(Little Hands of Stone)のオペレーション・プロダクション部門ディレクターであるクリス・ダングラ氏は語った。また、「今では従来のテレビを視聴する人が減っているため、30秒のフォーマットに固執する必要もない」とも述べた。

加えて、「有名人は企業とのパートナーシップを結び、それに居心地の悪さを抱かないでよくなった。どこからでも、どのデバイスでも、いつでもストリーミングコンテンツを視聴できるおかげで、これらのブランド短編映画は簡単に、ネットフリックス(Netflix)やHBO、プライムビデオ(Prime Video)のように人々の『テレビ』のローテーションに入れるようになったからだ。そして、もしブランドの映画が十分によければ、それらは単発のコンテンツのように扱われる」と話した。

メディアとして機能する鍵はコンテンツの質

しかし、広告を短編映画ほかのエンターテイメント形式にすることは、新しいアプローチではなく、また必ずしもマーケターにとって効果的であったとは言えない。業界の一部はそう推測している。

「BMWがオリジナルの映画シリーズを打ち出したとき、それは真に革新的だった」とTBWA NYグループの主任であるロブ・シュワルツマン氏は語った。「私たちはブランドがそのようなことをするのを見たことがなかった。だからそれは成功した。23年が経った今、ブランドが短編映画を打ち出しても、それほど大きな話題ではない」。

同氏は続けて、「今、このメディアが機能するのに必要なのはコンテンツの品質だ。だから、映画自体がAppleの最近の(短編映画)「アンダードッグズ(Underdogs)」のようによく、関連性があり、魅了するものでなければ、短編ブランド映画はブランドの虚栄心を満たす高価な取り組みに過ぎない」と主張した。

[原文:Marketing Briefing: Why BMW, Fender and Saint Laurent are hoping people will watch their short films — but some marketers are skeptical

Kristina Monllos(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)

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