モモフクやマグノリアベーカリーも参戦、食料品店の陳列棚を奪い合う レストラン たち:高収益・低リスクな収入源に

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レストラン各社は、食料品店の棚スペースをめぐり、CPG(消費者向けパッケージ商品)ブランドと競い合っている。

調味料、香辛料、スナックなどのパッケージ商品を販売するためのD2Cチャネルを確立した後、レストランは安定した収益を促進する要素として、食料品店に目を付けている。ハイエンドレストランで知られているモモフク(Momofuku)は、同社の消費者向け商品ビジネスが、年末には収益の約50%を生み出すと推定している。ニューヨーク市の有名ベーカーリーであるマグノリアベーカリー(Magnolia Bakery)も、同社のバナナプディングクッキーがザ・フレッシュ・マーケット(The Fresh Market)やハリスティーター(Harris Teeter)などの数百の食料品店で3月22日から販売されると発表した。

こうしたレストランによるCPGカテゴリーへの参入が加速したのは、食料品業界で数千のレストランが閉店し、全米レストラン協会(National Restaurant Association)がパンデミック前に予測した売上を2400億ドル(約31兆4000億円)も下回った2020年頃のことだ。従来はパンデミックを生き延びる方法だったものが、現在は多くのレストランにとって安定した収入源となった。さらに成長を促進するため、レストランは人気のある商品を食料品店で販売し、パッケージ商品を成功させるための専任のチームを持つことで、従来型のCPGメーカーから小売店の陳列棚のスペースを奪い取ろうとしている。

「これらのレストランにとってはより大きな利益を得ることができる。レストラン内で食事を提供することを考えると、そこに関連するコストは非常に高いためだ」と、インフォシスコンサルティング(Infosys Consulting)の消費者向け商品および小売のグローバルマネージングパートナーを務めるアンドリュー・ホゲンソン氏は述べる。「これは、レストランにとって自社ブランドを収益化するもうひとつの方法になった」。

レストランは陳列棚をめざす

レストランの運営には多くのコストを要する。不動産のコスト、従業員と顧客の比率、さらには光熱費や装飾のコストさえもがレストランの利益を食い尽くすと、ホゲンソン氏は語る。歴史的に見ても、多くのレストランがほんの数年の営業で失敗する理由は、利益率が小さいことだった。さらに、全米レストラン協会によれば、レストラン経営者の47%は、2022年に比べて今年は競合がより激しくなると予想している。

これに対して、消費者向けパッケージ商品を食料品店で販売するのは、より収益性が高く、リスクが低いと、同氏は語る。大手食料品店とパートナーシップを築けば、レストランはその地域でフルサービスのレストランを運営するコストを支払わなくても、より多くの買い物客にリーチできる。レストランにとって、食料品店で商品を販売することは、自宅で料理をすることを好む層の買い物客を獲得できるチャンスだと、同氏は述べている。

モモフクグッズ(Momofuku Goods)の共同創業者でCEOを務めるマーガレット・マリスカル氏は、同社が食料品店で商品を販売することで、あらゆる場所のフォロワーにリーチできると語る。同社は現在、ニューヨーク、ロサンゼルス、ラスベガスなどの都市で8つのレストランを保有している。一方、同社のシーズンドソルト、チリクランチ、ヌードルなどの商品ラインは現在2000店舗で販売されている、年末までには3500拠点の卸売店舗で販売され、これにはホールフーズ(Whole Foods)や、ターゲット(Target)、パブリックス(Publix)などが含まれている。

「CPGは、レストランより多くの計画と予測が必要となるため難しい。春や夏までの計画を立てるのは当社にとってはじめてのことで、うまくいかせるためには数年を要した」と、マリスカル氏は述べている。

専任チームを発足

モモフクは最初、ソースの商品ラインを2020年にオンラインで発売し、すぐに食料品店の注目を集めた。現在同社のレストランチェーンには14のSKU(在庫管理単位)があり、成長のための資金として1750万ドル(約22億9000万円)を調達したと発表している。同社は当初から、レストランとCPG市場との収益を50対50にすることを目標としており、今年はそれを達成できる見込みだ。

CPGのカテゴリーはレストランとまったく異なる事業であるため、同社は販売、運営、財務にわたる、消費者向け商品事業専任の18人からなるチームを発足させたと、マリスカル氏は語る。同氏は、現在置かれているグローバル食品の売り場で成長を続けたいと述べる。また、同社は2月に発売されたモモフクグッズ×ラッカのチリチョコレートクランチバー(Momofuku Goods x Raaka Chili Chocolate Crunch bar)のような新商品への取り組みにも挑戦してきた。

モモフクは有名なレストランであることから、トレンドの商品を自社の陳列棚に置きたいと考えている食料品店にとって魅力的なパートナーでもある。「当社はすでに、店舗を訪れる顧客の多くと関係を築いており、それが事業において有利に働いている。商品のいくつかは『レストラン級』と銘打たれており、それは実際にレストランからのお墨付きがあるということだ」と、マリスカル氏は述べている。

CPGとレストラン事業の共生的な関係

モモフクに限らず、レストランのCPG商品は食料品店からの注目を集め、品揃えを拡大しつつある。シェフでTVのパーソナリティでもあるステファニー・イザール氏のディス・リトル・ゴート(This Little Goat)は、ソース、スパイス、チリクランチを提供しており、2022年にすべてのチャネルにわたって売上が60%増加した。デザート企業のミルクバー(Milk Bar)は2021年に、自社のアイスクリームパイントを全国のホールフーズ店舗で発売した。

マグノリアベーカリーも同様の需要を受けている。同社の最高マーケティング責任者を務めるエディー・レビス氏は、食料品店からの注目が高まっていることから、小売パートナーの数は毎週変化していると語った。同社は3つのSKUを、主に北東部から東海岸までの主要な市場に位置する店舗で販売する予定だと語る。

レビス氏は、食料品店に参入することは、自社のチャネルを多様化して新しい市場に商品を持ち込む機会とみなしている。「当社にはベーカリーとしての店舗があり、全国規模のD2C事業を行っている」と同氏は述べる。しかし、「買い物客は毎週食料品店を訪れる」。

同社のCPGおよびレストラン事業には共生的な関係がある。レビス氏は、マグノリアベーカリーの店舗で食事をした人々が、食料品店で同社の商品を買い求めたいと思うようになるのが理想的だと語る。食料品店で同社の商品を見つけた人々もまた、ベーカリーの店舗を訪れたいと思うようになるかもしれない。

「当社は27年近くにわたり、実店舗のベーカリー小売として運営してきた。当社は成長し、小売やD2C事業のあとで最後に取り組むチャネルが食料品店のチャネルだった」と、レビス氏は述べる。同社はCPG事業でのプレゼンスを拡大するため、チームを構築し、店舗でサンプルを提供することを計画している。

レストラン業者参入による市場の変化

潜在的なチャンスはあるものの、これらのレストランが参入しているのは競合の激しい業界だと、インフォシスコンサルティングのホゲンソン氏は語る。従来型のCPG事業はすでに食料品店で自社の地位を確立しており、さらに運用能力を発達させてきた。同氏は、レストランが自社のブランドを活用し、従来型のCPGメーカーよりも高品質であることを全面に押し出していく必要があるだろうと述べている。

「これまでは、従来型のCPG企業が互いに陳列棚のスペースを奪い合っていた。レストランが新たに参入したことで、市場に新しい切り口をもたらす新規参入者が生まれることになる」と、同氏は述べている。

[原文:Restaurants like Momofuku are nabbing more shelf space in grocery stores]

Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Momofuku Goods

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