Slackの ブランドマーケティング 、大型イベントへシフト:「人々がイベントに戻りつつある」

DIGIDAY

今年、企業用メッセージングアプリのSlack(スラック)はブランドマーケティング戦略の軸足をSXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)、Dreamforce(ドリームフォース)などの大型イベントへと移す。同社のブランド/クリエイティブ部門の責任者であるコリン・マクレイ氏は、企業のソフトウェア担当者や小規模事業のオーナーというターゲットオーディエンスに対し、より効率的にリーチするためだと説明する。

イベントに注力することでフルファネルの実現をめざす

「2023年は、当社の従来のブランドマーケティング戦略とは非常に異なるアプローチをとっている」と同氏は語った。「これまでは、トップオブファネルでの展開を通して認知度を高めることに力を入れており、それには常時展開というアプローチが必要だった。2023年は、経済的な逆風やテック業界で起きているさまざまなことを考えると、ブランドマーケティングに関してはもっと細かく考えて進めたいと思った」。

SXSW、Frontiers(フロンティアーズ)、Dreamforceなどの大型イベントに焦点を当てることによって、Slackは「トップオブファネル的な数値を伸ばすだけでなく、ファネルの効果の掘り下げをめざす」と同氏はいう。「社内の企業担当部門やセルフサービス担当部門と連携し、認知度向上だけでなく実績を伴ったエンドツーエンドのカスタマージャーニーを狙った、本格的なフルファネルを確実に実現したい。これらのイベントはそれぞれのオーディエンスに一気にリーチできる絶好の機会だ」。

ブランドマーケティングの焦点をイベントに移すなか、電波放送、コネクテッドTV、デジタル動画、ペイドソーシャルなど、従来のペイドメディアによる「常時展開」的なアプローチに対しては予算削減が計画されている。マクレイ氏が具体的な予算の詳細は明かせないとしたため、実際にどれくらい削減するのかは不明だが、大型イベントでのOOHなど、従来型の有料の取り組みを引き続き展開していく予定はあるそうだ。

ペイドメディアからイベントへ

「2022年に大いに展開していた30秒のスポット広告を中心に据えることはない」とマクレイ氏は話し、「アーンドメディアを増やし、リーチするオーディエンスとの直接的なつながりを拡大して検討してもらうことをめざす」という。

パスマティクス・バイ・センサータワー(Pathmatics by Sensor Tower)の広告費データによると、Slackはデジタルペイドメディアに2022年は660万ドル(約8億5800万円)、2023年はこれまでに220万ドル(約2億8600万円)を投じている。Slackの2022年の月間広告予算の割合は、Facebookが33%、PC向け動画が26%、ストリーミングが21%、Twitterが7%、PCのディスプレイ広告が7%、インスタグラムが4%、モバイル向けディスプレイ広告が2%だった。

2023年は、1日の広告予算の59%をYouTube、39%をPCのディスプレイ広告、1%をモバイルのディスプレイ広告、1%をストリーミング広告に割り当てている。

2022年、Slackはフィールドマーケティングのイベントで公共部門に狙いを定め、ワシントンDCでOOHを中心としたマスマーケティングを展開した。マクレイ氏は「担当営業がCTOとのミーティングに臨んで売り込みをかけるときに、CTOがすでにSlackのことを知っていると話がスムーズに進むため、これがセールスチームにとって効果的だった」と話し、イベント中心への移行はブランドマーケティング部門が「ほかのプログラムと足並みをそろえる助けにもなる」と付け加えた。

イベントはかなり勢いが出てきている

ブランドコンサルティング会社のプロフェット(Prophet)のシニアパートナーで、マーケティング/セールス部門の共同責任者を務めるマット・ザッカー氏は、この状況を「イベントとOOHが今ふたたびホットになっている」と評した。

「人々がイベントに戻りつつある。かなり勢いが出てきているため、今試してみるのにはよい戦略かもしれない。イベントに力を注ぐことでかなりの効果を得られる可能性がある」と同氏は続けた。

また同氏は、特定の大型イベントに的を絞ることが、とくにアトリビューションについて明確に把握できるという戦略的な利点があると認めたうえで、常時展開的な広告支出によって得られるような効率性、ターゲティング、最適化では不利になるかもしれないとも指摘する。「アルゴリズムと時間を味方につけることはできないし、CPA(顧客獲得単価)は高くなるかもしれない。だが、こちらのほうがはるかに効果的であることを期待したい」。

[原文:Slack shifts brand marketing efforts from ‘always on’ paid media to tentpole events like SXSW and Dreamforce

Kristina Monllos(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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