90年代 のスーパーモデルがなぜ 最新のファッションキャンペーンを席巻しているのか?

DIGIDAY

スキムス(Skims)が新コレクション、スキムズフィッツエブリバディ(Skims’ Fits Everybody)のキャンペーンに元ヴィクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)のアイコニックなトップモデルを起用し、カレンミレン(Karen Millen)のコレクションではヘレナ・クリステンセン氏がメインを務めるなど、90年代のスーパーモデルがトップに返り咲いているようだ。

タイラ・バンクス氏やハイディ・クルム氏といったスーパーモデルとともに、ケイト・モス氏、ナオミ・キャンベル氏、アンバー・ヴァレッタ氏といった90年代のモデルたちが、再びファッションキャンペーンの焦点となっている。彼女たちの復帰は、当時の雰囲気を反映する一方で、ボディポジティブ運動の進展に疑問を投げかけている。

90年代のモデルはファッション以外の市場でも認知度が高い

スキムズフィッツエブリバディのコレクションのキャンペーンには、タイラ・バンクス氏、ハイディ・クルム氏、アレッサンドラ・アンブロジオ氏、キャンディス・スワンポール氏が起用されている。このモデルたちはヴィクトリアズ・シークレットのエンジェルズとして、長きにわたる同ブランドの歴史の異なる時期にそれぞれ活躍していたが、それ以来初めて一堂に会した。スキムスのプレスリリースによると、オーナーのキム・カーダシアン氏は「モデルたちの強さやエネルギー、永遠の魅力を、グループの不朽のレガシーを反映したイメージで表現する」ことを目的に、この4人の有名人をキャンペーンの主役に選んだという。

ブランドがスーパーモデルのアイコンをマーケティングに活用する風潮が最高潮に達したのは、2021年9月のフェンディ(Fendi)とヴェルサーチ(Versace)によるフェンダーチェ(Fendace)のショーだった。ケイト・モス氏、ナオミ・キャンベル氏、シャローム・ハーロウ氏、カレン・エルソン氏、アンバー・ヴァレッタ氏といった伝説のモデルが、アドゥ・アケチ氏、イマン・ハマン氏、ジジ・ハディッド氏といった新進気鋭のモデルとともにランウェイを気高く歩いていた。

90年代のモデルは他の業界のプロジェクトに長年取り組んできたため、一般的に若いファッションモデルよりもはるかに影響力がある。たとえば、アンバー・ヴァレッタ氏はFIT(ファッション工科大学)のアンバサダーを務めている。ナオミ・キャンベル氏のインスタグラムには1230万人のフォロワーがいるが、一方アドゥ・アケチ氏のフォロワー数は170万人だ。90年代のモデルをキャンペーンに起用するのはブランドにとってかなり容易なマーケティング判断だとされるのは、これが理由かもしれない。要するに彼女たちはファッション以外の市場でもアイコンとしてよく知られているのだ。

反抗精神があった時代のイメージが復活を遂げている

2月、デニムブランドのDL1961は、ローインパクトデニムの製造を推進する材料工学企業リカバー(Recover)とのコラボレーションで、キャンペーンにキャンディス・スワンポール氏を起用した。

女性が創業したサステナビリティを優先するブランドであるという点が価値観に合っているため、DL1961と一緒に仕事がしたいと思った、とスワンポール氏は語っている。スワンポール氏自身も、トロピックオブシー(Tropic of C)というスイムウェアのブランドを持っているが、DL1961の衣類のデザインには積極的な関与はしていない。

デニムブランドDL1961の共同創業者でチーフクリエイティブオフィサーのサラ・アーメッド氏は次のように述べている。「キャンディス(スワンポール氏)のオフのときの(クラシックな)イメージは、いつでも私の心に残っている。彼女はデニムの着こなし方を知っている。彼女には、母親、起業家、そしてファッションアイコンといったさまざまな役割から生じている魅力がある。そのすべてが彼女のジーンズの自然な着こなし方に表れている。それはまさしく私たちがブランドとして体現したいことであり、人々はそこに魅了されるだろう」。

90年代と2000年代のモデルの復活はより大きな変化の兆しだとアーメッド氏は言う。その20年間は文化の境界を押し広げる時代だったからだ。「2年間、家にこもって控えめに過ごした後では、あの時代の反抗精神が魅力的に思える」と彼女は言う。「サブカルチャーのストリートスタイルからメインストリームのファッションまで、あの時代のイメージが復活を遂げているのは、当時がどんな感じだったのかを少しでも味わいたい人のためのガイドとしての役割を果たすためだ」。

さらに、ヴィンテージファッションの台頭によって、当時のルックがより身近になっていると彼女は指摘した。「人々はノスタルジックなルックだけでなく、そのスタイルを定義したモデルにも魅力を感じている」。

90年代のスタイルを作り上げたトップモデルたち

英国を拠点とするウィメンズウェアブランドのカレンミレン(Karen Millen)は、今週リリースされたカプセルコレクションのアイコンズ(Icons)でスーパーモデルのヘレナ・クリステンセン氏とタッグを組むことを決めた。「ファッションアイコンといえば、ヘレナはその代表格だ。彼女のアイコニックなスタイルは、カレンミレンの品位を完璧に物語っている」。カレンミレンのマネージングディレクターであるジェーン・エスクリエット氏は声明でそう述べている。

同ブランドのスポークスマンは、53歳になるこのスーパーモデルがキャンペーンにとって完璧な選択だった理由をインスタグラムのキャプションで次のように説明した。「当時の大胆不敵なシルエット、美しさ、自信、影響力を体現する@helenachristensenは、常に現代に蘇り今日でも人気の90年代ファッションの代名詞となる無比のレガシーを残している。アイコンズは、この時代を最高のスタイルで祝うために、ノスタルジーに関する先進的な解釈を提供する」。

ヘレナ・クリステンセン氏とナオミ・キャンベル氏は、リンダ・エヴァンジェリスタ氏、シンディ・クロフォード氏、クリスティー・ターリントン氏、クラウディア・シファー氏と並んで、1980年代に長い間アイコンとしての座についていた元祖スーパーモデルのグループに属していた。この6人はいずれも、今日復活をみせている90年代スタイルを定義することに貢献している。クリステンセン氏はプレス声明でこう述べている。「大きなヘアスタイル、つけまつげ、そして超クールな音楽に満ちていた90年代に、私はファッション業界で働き始めた。多くの人の人生において、まさにすばらしい時代だった」。カレンミレンとの仕事は一回限りのコレクションになる予定だ。

インクルーシブに取り組むヴィクトリアズ・シークレット

一方、同じく元ヴィクトリアズ・シークレットのスーパーモデルだったミランダ・カー氏は、2017年以降はルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)とさまざまなプロジェクトでパートナーシップを組んでいる。

ヴィクトリアズ・シークレットは数々の変化を経て、最近はリブランディングを行ってきた。2019年、ヴィクトリアズ・シークレットは、親会社エル・ブランズ(L Brands)の創業者で億万長者のレスリー・ウェクスナー氏とジェフリー・エプスタイン氏との金銭的な紛争に巻き込まれた。また、長年ボディインクルーシブが欠如していたことへの批判にもさらされてきた。ウェクスナー氏は2021年3月に辞任し、その後同ブランドは初めてマタニティブラを販売するなど、さまざまなインクルーシブな取り組みを開始している。昨年6月には、プラスサイズモデルのパロマ・エルセッサー氏やサッカー選手のミーガン・ラピノー氏といったボディポジティブなロールモデルとともに、VSエンジェルズのイニシアチブをよりインクルーシブなものへとアップデートした「VSコレクティブ(VS Collective)」をローンチした。さらに同ブランドではサイズの幅を拡大し、より大きなサイズのマネキンを店舗に追加している。

元祖スーパーモデルを起用するマーケティング戦略とは

スキムスやそのほかの新しいブランドは、すでにサイズインクルーシブな製品を提供している。そして、そうしたブランドが新たなキャンペーンにスリムな体型の元祖スーパーモデルを起用することは、ブランドイメージの向上につながるのか、それとも批判を招くのかという疑問が残る。スキムスの最新キャンペーンは、ソーシャルメディアでは好意的な反応が圧倒的多数である。

ビューティブランドもまた、元祖スーパーモデルを活用している。たとえば、ラグジュアリーメイクアップブランドのシャーロット・ティルブリー(Charlotte Tilbury)が今月ローンチした新しいピロートーク(Pillow Talk)キャンペーンには、ケイト・モス氏とツイッギー氏が出演している。新たな戦略に取り組むにはリスクが伴うなかで、こうした現象はマーケターが消費者に影響を与えるための実績ある戦略に頼っていることを示唆しているのかもしれない。

[原文:Why ’90s supermodels are dominating the latest fashion campaigns]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida、編集:黒田千聖)

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