アメックスが追求するデータドリブンなマーケティング設計:Yahoo! JAPAN MARKETING DAY 2023 レポート

DIGIDAY

デジタル広告の分野においては、ここ数年でますます広がりを見せるCookieレスの影響による、広告のパフォーマンス低下といった課題が避けられなくなってきている。この問題をどう解決するかは大きなテーマであり、デジタル広告の行く末を左右すると言っても過言ではないだろう。

そこで脚光を浴びているのが、プラットフォームが持つビッグデータの利活用だ。あらゆる世代にリーチでき、およそ100に及ぶサービスを通じてユーザーの行動データが蓄積されるYahoo! JAPANは、デジタルマーケティングにおいてその存在感を高めている。

Yahoo! JAPANがそのメディア力をフル活用して、企業のデジタルマーケティングをアシストするサービスの一つが「Yahoo! JAPAN予測ファネル(以下、予測ファネル)」である。ウェブ上で過去にコンバージョンしたことのあるオーディエンスの行動を分析し、その結果をもとに、今後コンバージョンする可能性があるオーディエンスを予測してスコア化し、見込み顧客層を可視化できるようファネルに落とし込んだものだ。各スコアのオーディエンスの特徴を把握することで、よりコンバージョンする可能性が高い広告配信ができる。

今回は、予測ファネルの活用事例として、「Yahoo! JAPAN MARKETING DAY 2023」で行われたセッション「データで効率的に新規会員獲得! アメリカン・エキスプレスの予測ファネル事例」を取り上げる。セッションは、予測ファネルに基づいたターゲティングやクリエイティブの改善によって、見込み顧客の獲得効率が向上したという、アメリカン・エキスプレス・インターナショナル(以下、アメックス)でカード事業部門マーケティング部部長を務める本間浩太郎氏と、ヤフーのマーケティングソリューションズ統括本部の横山文香氏の対話形式で行われた。

◆ ◆ ◆

Cookie規制が強まるなかで「予測ファネル」を活用

本間氏は、アメックスでデジタル広告配信などのマーケティング活動に従事。新規カード会員獲得および収益の最大化をめざして、デジタル広告の運用・配信の最適化を図っている。Cookie規制が強まる昨今、リターゲティング広告の効率低下やターゲティング広告の精度の低下など、デジタル広告を通じたコンバージョンに多くの企業が課題を感じているが、同社においても同様であるといえそうだ。

そのなかで同社が今回活用したのが、「Yahoo! JAPAN 予測ファネル」だった。

「Yahoo! JAPAN 予測ファネル」は、Yahoo! JAPANユーザーの中で自社サービスに強い関心を持つ層とそうでない層を可視化できるソリューションである。コンバージョン(以下、CV)ユーザーの傾向を分析して、Yahoo! JAPANユーザー約8400万人を対象に、コンバージョンする確率に従ってスコアを付与する。もっともCVする確率が高い場合は0.9のスコア、以下0.1刻みに0まで付与することで、10段階の階層を持つファネルを構築する。

予測ファネルはコンバージョンしたことのあるユーザーの傾向を分析し、コンバージョンする確率に従ってスコアを付与する

予測ファネルの活用の決め手は、Yahoo! JAPANのユーザーの行動データに基づいて顧客を可視化できる点だった。

本間氏は、この取り組みについて「ビッグデータをもとに、これまでの情報量では実現できなかったような、データドリブンなペルソナ設計ができるかもしれない。また、高いニーズを持つスコア0.9の方々だけでなく、将来的にCVし得る可能性が高いスコア0.5〜0.8の見込み顧客層もデータによって可視化できるため、ファネルごとに適したコミュニケーションアプローチをより科学的に設計できるのではないか、という印象をうけた」と語る。

データドリブンなペルソナ設計のメリット

予測ファネルを活用したマーケティングは、主に以下の3つステップを回して最適化を図っていく。

  • ステップ1:現状把握
  • ステップ2:広告配信・計測
  • ステップ3:予算配分の最適化

「Yahoo! JAPAN 予測ファネル」の活用方法

ステップ1では、予測ファネルを作成するために、データに基づいた「現状把握」を行う。まず、アメックスのCVユーザー(カード申込ユーザー)を教師データとしてモデルを作成。全ユーザーをYahoo! JAPANの行動データなどに基づいて10段階で分類する。

今回はCV率が高いスコア0.9のロウアー層に対する施策だけでなく、0.5〜0.8のミドル層のユーザーにもアプローチを行った。これにより「中長期的なCV獲得を目指す施策を打つこともできる」と横山氏は語る。

そしてステップ2ではステップ1を踏まえて「広告配信・計測」を実施。顕在層がどれだけ増加しているかをチェックしてから、ステップ3ではその効果を踏まえて広告ボリュームを調整するなど「予算配分の最適化」を行う。

アメックスの予測ファネル活用方法。それぞれの数値のユーザー群を分析し、ペルソナを作成
(左:ヤフーの横山文香氏、右:アメックスの本間浩太郎氏)

また今回のアメックスのマーケティング活動では、クリエイティブの制作にも工夫を凝らした。それぞれのファネルごとのセグメントを、データに基づいて分析し、ペルソナを設計するだけでなく、そのペルソナに合わせて複数種類のクリエイティブを制作して、CV率が高いと見られるユーザーから広告配信を行った。横山氏は「セグメントごとにクリエイティブを制作して、配信するという取り組みは新鮮だった。これはアメックスさまの広告代理店の協力もあって実現できた」と振り返る。

4種類のペルソナを作成(画像クリックで拡大)

本間氏も、今回取り組んだクリエイティブ制作について、「データドリブンでペルソナを設計するなかで、私たちにとっても新たな気づきがあった。ビッグデータを分析しないと見えてこないこともあると、改めて認識した」という。

教師データ精緻化による、デジタルマーケティングの新たな可能性

こうした一連のサイクルを回した結果、CV率の向上とそこにつながる見込み顧客の増加が見られた。

以下のグラフは広告配信後、アメックスのLPを訪れたUU数の変化だ。もっともCVするであろうスコア0.9は施策を行う前の配信と比較して130%の増加を見せたが、スコア0.7、0.8の見込み顧客層からのアクセスも増えている。

配信後の各スコアの増減率

また、初期の教師データには、本来アメックスが獲得したい顧客層とは異なるユーザー群のデータも含まれていたため、これらのユーザー群のデータを除去した教師データに基づいてファネルを再構築したことにより、獲得効率が向上。本間氏は「獲得効率の向上を実現することができただけでなく、その先にあるLTV向上にもつながるかもしれない」と語った。

見込み顧客層の育成モデル構築も視野に

予測ファネルでの一連のサイクルについて、セッションの最後に横山氏がレビューした。

「今回の事例では、カードごとに教師データからモデルを作成して、Yahoo! JAPANの行動データを踏まえてスコアリングして、ファネルを作成した。また、ペルソナを分析・設計することで、感覚だけに頼らないクリエイティブの制作が可能になる。その後、CV率の高いセグメントに対して広告を配信し、広告の接触の有無によってスコアが高いセグメントへの遷移があったかを確認。その結果を踏まえて、CVのさらなる増加に向けてターゲティング・クリエイティブの改善を行うというサイクルを回した。これにより、今回お伝えした成果を得ることができた」。

本間氏はセッションの最後に今後の展望を明かした。

「セグメントごとにどのような見込み顧客がいるのかデータを用いて明らかになったことは、意義が大きいと感じている。各ターゲット層に対して、どのようにコミュニケーションを設計するかは日々試行錯誤で進めているが、よりデータの分析精度を高めてコミュニケーション設計ができれば、中長期的に会員になり得る見込み顧客の育成モデルの構築もできるのではないかと思う」。

変革期を迎えているデジタルマーケティング。プラットフォームを活用したデータドリブンな施策は、顧客起点のマーケティングを実現するうえで、より一層求められるようになるだろう。

「Yahoo! JAPAN MARKETING DAY 2023」
アーカイブ動画はこちらからご覧ください。

「Yahoo! JAPAN 予測ファネル」についての詳細はこちらからご覧ください。また、新規導入など広告サービスに関するお問い合わせはこちらからお願いいたします。
この記事に関するアンケートにご協力ください。回答は今後の参考にさせていただきます。

Sponsored by ヤフー

Written by DIGIDAY Brand STUDIO(山田雄一郎)
Image courtesy of ヤフー

Source

タイトルとURLをコピーしました