D2C 新興企業、2023年業績は軒並み厳しい見通し:パンデミック後に目にした「消費行動の変化」

DIGIDAY

こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります

上場したD2C新興企業からの最近の決算報告には、かつては躍進していたブランドも、現在は成長率の大きな低下に苦しんでいることが示唆されている。

おそらく、もっとも厳しい結果なのは、3月9日に公表されたオールバーズ(Allbirds)の決算だろう。アパレルおよびフットウェアブランドである同社は、この日の第4四半期の決算発表で、売上が前年同期比で13.4%低下したと報告した。また、2023年第1四半期の収益も前年同期に比べて20〜28%減少するだろうと予測した。

しかし、ほかの上場ブランドがこの1カ月に発表した業績予想も、それほど良いものではない。フィグス(Figs)、ソロブランズ(Solo Brands)、ワービーパーカー(Warby Parker)などの各社は、2023年の前年比の収益成長率が最悪で1%未満、最高でも10%と予測している。これらの企業の多くが、20%以上も成長した昨年の収益とはかけ離れてたものとなった。この結果は、上場しているD2C新興企業が現在、従来型の小売ブランドと同じ課題に直面していることを示している。つまり、コアな顧客と再度つながりを持つ新しい方法を見つけ、多くの人々が店舗での買い物に戻ってきている現状に適応することだ。

「我々はビジネスのアイデンティティとして、販売チャネルに魅了された」と、BMOキャピタルマーケッツ(BMO Capital Markets)のマネージングディレクターとシニアアナリストを務めるシメオン・シーゲル氏は述べている。

同氏はさらに付け加えた。「D2Cのビジネスモデルは消費者とつながる方法のひとつであるため重要だが、D2Cモデルが会社のアイデンティティとなるべきではないと理解することを、我々は学んだと思う」。

商品の発売によって課題に直面

レギンスなど一部の商品の販売を取りやめることにしたと、共同創設者で共同CEOを務めるティム・ブラウン氏はそのときに述べた。

もうひとつの失策はランニングシューズのフライヤーズ(Flyers)だった。「この商品は、技術的なランニングの性能に優れていることを強く押し出してマーケティングされた」と、ズイリンガー氏は決算発表で述べた。「当社は、自社にとってもっとも重要な層の顧客が、このような技術的な性能のメッセージには共感していないことを、今になって知った」。

その結果、「当社は、共感を得られなかった新商品に多くの時間とリソースを費やしたため、コアな消費者の好む商品に十分な投資を行えなかった」と、同氏は述べている。

ホーガン氏は、これは新興企業が新しいカテゴリーへの展開を行うときに犯しがちな過ちだと語る。新興企業がすでに飽和している市場、たとえばアスレジャーに参入を試みると、「思っていたほどの成功を収める能力はなかった」ことに気づく。

成長方針の再調整

ほかの上場D2C新興企業の場合、課題の多くはオンライン販売の成長が鈍りつつあり、人々が裁量的支出を切り詰めているということに集約される。そしてこれらの企業は、成長のためにこれまで同じような方針に頼ることはできないと知る。特に、2020年と2021年、人々がショッピングの大部分をオンラインで行っており、自由に使える収入が多かった頃の方針は通用しない。

D2Cのスクラブブランドであるフィグスの共同CEOを務めるトリーナ・スピアー氏は、2月末に行われた同社の第4四半期の決算発表において、新色の発売が、「昨年のような高レベルの成功を収めなかった」と述べている。同社の収益は第4四半期も依然として、前年同期比で20%以上伸びたが、今年の収益成長は1ケタ半ばだと予測している。

これは、最高財務責任者を務めるダニエラ・テュレンシャイン氏が説明したように、同社が過剰在庫を一掃するためにプロモーション活動重視に転じたことが一因だ。しかし、「マクロ経済の不確定性と高インフレ率によって、当社商品のリピート購入率が影響を受け続けると予測している」のも理由のひとつだ。

このため、フィグスはほかのD2C新興企業が成長を促進するために採用してきた方針の多くに目を向けている。同社は、これまで実店舗を開設していなかったという点で、D2Cブランドのなかでも例外的だった。しかし、その方針を変え、センチュリーシティーに最初の店舗を建設し、今秋には開店する予定だ。

ワービーパーカーは店舗数を拡大

ワービーパーカーも同様に、来年の収益増加のために、店舗の成長に期待している。同社は2023年に店舗数を20%増やし、年末までに240店舗を保有する計画だ。しかし、同社は来年の収益増加率を8〜10%になると予測しており、これは2022年に記録した10.6%をやや下回っている。

これは主に、eコマースの収益が2023年の前半に減少し、2023年の後半に再度増加すると同社が予測しているためだ。同社は、マーケティングへの支出を切り詰めることで、eコマースの収益が減少すると予測している。パンデミックの最中には、多くの人々がオンラインでショッピングを行っていることを活用するため、収益の大部分をマーケティングに注ぎ込んだ。しかし現在は、パンデミック前の支出割合に戻す計画であると語っている。

ホーガン氏が指摘したように、デジタルネイティブなブランドの多くは、パンデミックのあいだに多くの人々がオンラインで買い物をするという事実から恩恵を受け、従来型のブランドよりも優れたeコマースの運営を行っていた。

しかし現在、人々が店舗での買い物に戻ってきている状況で、「これらのブランドはおそらく、人々の購入頻度が多少増えた小売業者や、百貨店でより広く販売されているブランドとの競合が激化するのを目にしただろう」。

パンデミックで覆い隠されていた事実

ワービーパーカー、オールバーズ、フィグスなど各社の予測は、2023年にD2Cブランドを待ち受けるものの前兆だ。すなわち、多くの商品や新色を投入したり、多くの顧客をオンラインで獲得することでは、もはや確実な収益増増は望めないということだ。

あるいは、シーゲル氏が言及しているように、D2C新興企業もまた、ほかの小売業者のほとんどが現在直面しているのと同じ課題に直面しているということだ。パンデミックのあいだは、多くの人々がオンラインで買い物をするという事実によって、そうした課題のいくつかが隠されていたにすぎない。

シーゲル氏は次のように述べている。「D2C企業を別のビジネスととらえるのは、そろそろ止めるべきだと思う。これらの企業もまた、ほかの小売業者と同じ課題に直面することになるだろう」。

[原文:DTC Briefing: Recent earnings indicate a bleak forecast for startups in 2023]

Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via allbirds

Source

タイトルとURLをコピーしました