全サイズで同じ価格を実現。 サイズインクルーシビティ を推進するコロンビア・スポーツウェア

DIGIDAY

2月のニューヨークファッションウィークでは、サイズインクルーシビティに関する業界の歩みが後退しているという感覚があった。しかし、ショー以外の場所では、コロンビア・スポーツウェア(Columbia Sportswear)のようなアウトドアブランドがサイズインクルーシビティの動きを推し進めている。

インクルーシブなサイズ展開と価格への取り組み

オレゴン拠点のコロンビアは少なくとも20年間、男性用と女性用の拡張サイズを販売しているが、最新の2023年春のコレクションは最小から最大まで全サイズが同じ価格で販売される最初のものとなる。これは何年にもわたる尽力の結果だ。同社のインクルーシブサイジング担当部門マーチャンダイジングマネージャー、アンドレア・ケリー氏は、これはほかのブランドが採用しているいきなり0から100になるようなアプローチよりも優れていると述べている。

ケリー氏は2011年からコロンビアに勤務しており、2015年以降インクルーシブなサイジングの取り組みに尽力してきた。ケリー氏によると、2015年から2016年の間にコロンビアはプラスサイズの商品数を2倍に増やしたという。それまでプラスサイズはベストセラー製品に限られていた。それ以来、同社は再び商品数を2倍に増やしている。

インクルーシブなサイズ展開に対する需要の増加

「アウトドアコミュニティは要望についてさらに声高に発言するようになっている」とケリーは語る。同氏は、15万人を超えるメンバーを擁し、大柄な人向けのハイキングやアウトドア活動を組織しているアンライクリー・ハイカーズ(Unlikely Hikers)のようなグループのおかげで、アウトドアカテゴリーでインクルーシブなサイズ展開の需要が高まっていると考えている。

Glossyがトライブダイナミクス(Tribe Dynamics)から得たデータでは、そこに大きな需要があるという考えが裏付けられている。コロンビアとパタゴニア(Patagonia)のプラスサイズ、インクルーシブサイズ、エクストラサイズの服に関連するオンラインコンテンツは、2022年に320万ドル(約4.3億円)のアーンドメディアバリュー(EMV) をもたらしている。EMVとは、トライブダイナミクスがソーシャルでの話題、検索、購入を組み合わせてコロンビアやパタゴニアのようなブランドに対する需要を測定するために使う用語である。これは2ブランドを合わせた1年間の合計3780万ドル(約51億円)のEMVのうちの一部であり、拡張サイズ関連のコンテンツが両社のEMVの10%近くを占めていることを意味する。

オールドネイビーの撤回

ケリー氏は、インクルーシブなアパレル業界を提唱する多くの人々と同様、オールドネイビー(Old Navy)が拡大したサイズ展開をローンチからわずか1年後の2022年、公然とそれを撤回したことに不満を感じていた。

「『当社はそのような報道はごめんだ』と思った」とケリー氏。「オールドネイビーが初めにサイズ展開を拡大する発表を行ったとき、好意的に受け止められたのを見た。誇張するわけではないが、あのような大ブランドが(インクルーシブなサイズ展開を)全面的に受け入れているのは多くの人にとって人生を変えるような出来事だった」。

インクルーシブなサイズ展開への課題

ケリー氏は、大幅なサイズ展開の提供は軽々しく考えるべきではないことをブランドが理解するのが重要だと述べている。「容易ではないが、重要だ」。コロンビアにとって、プラスサイズを提供するうえでもっとも難しい点は同じ価格にすることである。大きいサイズではコストが高くなるというのは残念ながら事実である。より多くの生地が必要であり、輸送用コンテナに収められる製品数は少なくなり、大きなサイズに対応するために製品全体の再デザインが必要になることも多い。

ケリー氏は全サイズを同じ価格にするために舞台裏でどのようなコストの削減があったかについては詳しく語らなかった。リサーチ・アンド・マーケッツ(Research and Markets)によると、プラスサイズの女性服の世界市場は約2000億ドル(約27兆円)で、年間約5%の割合で成長しているという。

コロンビアは過去3カ月で記録的な収益を上げ、前四半期から11%成長し、35億ドル(約4755億円)に達した。これはD2Cと卸売販売の両方によってほぼ均等に推進されている。ケリー氏によると、コロンビアの卸売パートナーのほとんどが拡張サイズを購入しており、それを受け入れていないのはわずか数社だという。

「2017年に多くの小売業者がよりインクルーシブなサイズの購入を検討し始めたとき、当社は実際に対応できる数少ないブランドの1社だった」とケリー氏。

そのような小売業者の1社にREIがある。REIは、アウトドアアパレルのインクルーシブなサイズ展開を推進するリーダーである。REIのローカル・インクルージョンマーケティングのシニアマネージャー、ニコール・ブラウニング氏は、2月27日、アウトドアブランドらはインクルーシブなサイズ展開に取り組む前に、信頼を築くために顧客の特定のニーズに耳を傾けることが重要であるとGlossyに語った。

ブラウニング氏は次のように述べている。「当社はフォーカスグループとコミュニティと一連の対話を開始し、(アンライクリー・ハイカーズやアダプティブ・アドベンチャーズ(Adaptive Adventures)といったグループの)人々を集めて、彼らが顧客として直面している課題について尋ねた」。

コロンビアも同様のアプローチを取り、インフルエンサーのマリエル・ターハート氏らプラスサイズの数十人のアスリートと協力した。アスリートらを招いて、コロンビアの製品デザインチームとマーチャンダイジングチーム向けにアドバイスをしてもらい、また、彼らに製品をシーディングしてインスタグラムとTikTokでソーシャルメディアテイクオーバーを行った。

「大柄な人々にとって(自分に合った)製品を見つけるのは難しく、品質やフィット感がいまひとつの製品しかなく、他人からはアウドトア初心者だと思われる」とケリー氏。「彼らは経験豊かかもしれないのに、他人から活動しても大丈夫なのかと思われたり、(活動中に)休息するように言われたりする。(いろいろなサイズを必要とする)人々と対話すれば、当社がもっと尽力できることについて優れた洞察を得ることができる」。

[原文:Columbia Sportswear achieves price parity across inclusive sizing

DANNY PARISI(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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