QRコード 広告の増加に比例し、技術トラブルリスクも増加:「セキュリティリスクやデータプライバシーも考慮する必要がある」

DIGIDAY

今年のスーパーボウルで、ブロックチェーンゲーム会社リミット・ブレイク(Limit Break)が第1クオーターに流したCMでは、無料のNFTのリンクにつながるというQRコードが表示された。ところが同社にとって残念なことに、CMの放映中もその後も、QRコードを使おうとした人の多くで、コードが機能しない事態が発生した(問題のコードはNFTではなく、リミット・ブレイクのTwitterプロフィールに人々を誘導した)。

QRコードが広告の定番となるにつれ、リミット・ブレイク以外にも、キム・カーダシアンの「スキン・バイ・キム(Skkn by Kim)」エリシアン・ブリューイング(Elysian Brewing)XFLなどのブランドが、実世界やオンラインのプラットフォームで消費者の注意を引くためにQRコードを活用している。しかし、リミット・ブレイクが身をもって知ったように、マーケターは目下、QRコードに付随する技術的な問題と、コードの信頼性を最大限に高めるにはどうすべきかという課題に直面している。

QRコードを効果的な戦略の一部にするためには、マーケターはそれを使う目的について検討し、確実にうまく機能させなければならない。また専門家たちは、QRコードには長期的に使えるだけの実用性を持たせるべきだと提言している。

使用が増えればリスクも増加

配送アプリのインスタカート(Instacart)は、ビールブランドのミケロブ・ウルトラ(Michelob Ultra)と提携し、2月の1カ月間、広告内に表示されるQRコードをスキャンすることで、視聴者がスナックやドリンクを購入できるショッパブルテレビ広告を放映している。また、インスタカートのミケロブ・ウルトラ用ページから、他の商品をショッピングカートに追加することも可能だ。インスタカートのCMOを務めるローラ・ジョーンズ氏は、QRコードが比較的新しく、まだ実験的な段階にあったのは10年近く前の話であり、QRコードにまつわるリスクは懸念材料にはならなかったと語る。

「QRコードの普及とパンデミックにより、広告主はQRコードを幅広く受け入れ始めている。これが2年前だったら、消費者に『そんなものスキャンしないよ』と言われたかもしれないが、今ではほとんど当たり前の存在だろう」と話すジョーンズ氏によると、インスタカートは以前からリアルタイム配送のアイデアに関心を寄せていたが、本当にシームレスな顧客体験を確実に提供できるようにしたかったという。そこでインスタカートは、顧客とのつながりを構築し、同時に自社プラットフォームへのトラフィックを増やす手段として、QRコードを利用している。

2020年に飲食店がデジタルメニューを導入し、消費者にタッチレス体験を提供するために使い始めて以降、QRコードの利用は以前と比べてスタンダードになっている。現在では、実世界やオンラインで目にすることがますます一般的になり、ブランドは広告やそれ以外での利用方法についてより戦略的になっていると、マーケティング幹部たちは述べている。

QRコードジェネレーターを手がけるQRタイガー(QRTIGER)のリポートによると、ユーザーによって生成されたQRコードは、2022年に世界で680万回以上スキャンされ、前年比433%増となった。フローコード(Flowcode)の創業者でCEOのティム・アームストロング氏によると、ブランドは通常、リアルタイム分析を備えたQRコードにお金を払い、また実世界とデジタル両方のエコシステムで使用することが多いという。フローコードは、アボカドス・フロム・メキシコ(Avocados From Mexico)やプランターズ(Planters)と提携し、スーパーボウル中のCMでQRコードを流した。

一方、「レストラン・レディネス・インデックス(Restaurant Readiness Index)」の調査では、レストランオーナーの3分の1が2020年以降、QRコードを使ってビジネスを強化したと回答している。また、シェアスルー(Sharethrough)の調査では、76%の人が、テレビ視聴中に自分に関連のあるQRコードが出てくればスキャンすると回答している。

必ずテストを実施することが重要

QRコードがブランドにとって、広告やその他の目的に日常的に用いるものとなるにつれ、コードを公開する前に必ずテストを行うことが重要になると、マーケターやエージェンシー幹部は指摘する。

アームストロング氏は、QRコードのテストは、スーパーボウルの広告などで大規模に流す数カ月前には実施すべきだと話す。たとえば2022年、スーパーボウルでQRコードを使った広告を流した後、コインベース(Coinbase)のウェブサイトはクラッシュした

「こうした課題の解決に我々は取り組んでいる。QRコードを、ブランドと消費者を結ぶ最も親密な空間として取り扱うことだ」とアームストロング氏はいう。「互いが直接つながるために用いるツールなら、消費者もブランドも信頼できるものでなくてはならない」

成長戦略コンサルティング会社プロフェット(Prophet)のアソシエイトパートナー、ロン・サーフィールド氏は、QRコードの仕様はISO規格であり、トラブルが生じる原因は多くないと述べている。入力文字列が正しくないと、目的のコードを生成できないからだ。

「これは、自分の電子メールアドレスやウェブサイトのURLを打ち間違えるのと同じことだ。つまり、マーケターがQRコード生成ツールに送信するキャンペーンサイトのURLを間違えて入力すると、ユーザーは壊れたURLや存在しないURLに誘導されてしまう」とサーフィールド氏はいう。

リスクが拡大し続けるQRコード

スマートフォンを持っている人ならいつでもQRコードをスキャンできるため、今やQRコードの使用は、さまざまなマーケティングキャンペーンや用途に広がっている。それと同時に、QRコードの機能性も年々高まっている。

「そのため人々はQRコードにすっかり慣れたが、マーケターとしては、それが約束するメリットについて明確に理解しておきたいところだ」と、テレビ広告のパフォーマンス測定を手がけるデータおよび分析企業EDOのCEO、ケビン・クリム氏は話す。顧客と長期的な関係を築くために、ブランドはこの技術をもっと活用すべきだとして、「この小さな四角の中にあらゆる情報を詰め込むことができるというのは、本当にある種のパワーを与えてくれる」と同氏は述べている。

しかし、QRコードの使用が拡大するにつれ、リスクも増え続けている。たとえば、米連邦捜査局(FBI)は2022年1月に、QRコードが改ざんされ、消費者を悪意あるサイトに誘導する恐れがあると警告している

クリム氏や、プロフェットのシニアパートナーでマーケティングおよびセールス部門の共同責任者を務めるマット・ザッカー氏は、実験する姿勢が重要であり、経験がものをいうと話す。なぜなら特にブランドは、QRコードに起こりうる接続トラブルを修正するだけでなく、セキュリティリスクやデータプライバシーを考慮する必要があるためだ。「QRコードによるデータ収集と保存は、顧客がどんな人々であるかという情報をマーケターにもたらし、それによって顧客への理解を深め、よりターゲットを絞った方法でつながりを築くのに役立つ」と、ザッカー氏は述べている。

[原文:As marketers’ use of QR codes grows, so does the potential for technical issues

Julian Cannon(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:分島翔平)

Source