D2Cブランドが第1四半期に「 B Corp認証 」取得を急いだ理由

DIGIDAY

食品のように規制の厳しい業界とは異なり、ファッションブランドが自社製品をどう呼ぶかということに関する規制は比較的少ない。どんなブランドも、実際にはなんの証明もなくても製品がサステナブルであると言うことができる。

だからこそ、B Corp(Bコープ)のような認証制度は非常に貴重なのだ。B Corpは、顧客が購入するブランドを判断できるように第三者が検証した基準を提供している。多くの顧客が自分の価値観に合ったブランドを求めるようになり、そしてブランドはグリーンウォッシュを避けることを目指しているため、B Corp認証はブランドにとって貴重なツールとなりつつある。特にD2Cブランドは、この半年で積極的に認証を取得するようになった。

この2カ月間、D2CファッションブランドのトムボーイX(TomboyX)、Bシャツ(The Bshirt)、プロエムパレーズ(Proem Parades)、アヌカジュエリー(Anuka Jewelry)がB Corp認証を取得している。一方、すでに認証を取得しているブランドであるトムズ(Toms)は、慈善寄付を総利益の3分の1にまで引き上げ、同期間にB Corpスコアを25%向上させている。これらのブランドの多くは設立から数年しか経っていないが、ブランド誕生から間もないうちに認証を取得することは、自社の価値を早期に確立し、倫理観の高い顧客を取り込む上で重要な方法である。

B Corp認証の仕組みとメリット

B Corpであることの利点は、データも示している。状況的なレベルでは、B Corpに認証された企業は、たとえば顧客の嗜好や購買習慣に関するB Corpコミュニティデータに無料でアクセスすることができる。さらに具体的なレベルでいえば、2018年のデータでは、B Corpはほかのブランドよりも全国平均で28倍速く成長したことが示されている。

B Corpは、米国ペンシルバニア州に拠点を置く非営利団体Bラボが与えている認証である。B Corp認証を受けるプロセスには、通常、最低でも6カ月はかかる。Bラボのスタッフは、サステナビリティの証明にとどまらず、企業のさまざまな要素を評価する。従業員の労働条件、多様性やインクルーシビティに対する取り組みなども考慮される。いったん認証されたブランドは、製造基準の詳細など、最新の情報をB Corpのウェブサイト上で定期的に公開しなくてはならない。州や企業の規模によって異なるが、Bラボはブランドに対して年間認証料を課している。

設立時から理念のある会社にとって、認証取得は難しくはない

2018年創業のスケートシューズブランド、カリウマ(Cariuma)は、11月に認証を取得した。共同創業者のデヴィッド・パイソン氏にとって、B Corp認証はブランド誕生当初から共同創業者フェルナンド・ポルト氏とともに思い描いていたものだった。パイソン氏によると、認証は顧客がブランドのサステナブルな主張を評価するのに役立つし、信頼性を与えてくれるという。

「我々は言っていることをきちんと守っているという、信頼できる証明だ」とパイソン氏は述べている。「ブランドの主張と実際の行動には往々にしてギャップがあり、だからこそ独立した第三者が役に立つ。多くの大企業が、ひとつの製品シリーズだけを取り上げて『これはサステナブルだ』と言い、ほかの事業はサステナブルではないというケースを目にしてきた。だがB Corp認証は包括的に判断される」。

パイソン氏も、D2C下着ブランドのトムボーイXの共同創業者ナオミ・ゴンザレス氏も、創業当初からB Corp認証と自社の価値観が一致していたため、認証プロセスはかなり容易だったという。だからといって、大企業は中小企業よりも認証取得が難しいということではない、とゴンザレス氏は指摘した。たとえばパタゴニア(Patagonia)やオールバーズ(Allbirds)は、毎年数億ドルもの売上を上げながら、認証を取得している。ただし最初からサステナブルで倫理的な実践をビジネスモデルに組み込んでいない企業は、元からそうである企業にくらべて自社を改革するのがむずかしいだろう。

小規模ブランドの課題は製造パートナー

しかし小規模のD2Cブランドの場合、製造パートナーに関する課題がある。

「B Corpがチェックする大きなポイントのひとつに、誰と一緒に仕事をしているかという点がある」とゴンザレス氏は話す。彼女のブランドは、2013年に最初の製品を販売した。「認証(を取得しやすい)という意味で優秀な工場の多くは、大手ブランドを顧客にもつ大規模な工場で、最低発注数も多い。そうした工場と仕事をするのはむずかしいかもしれない。なぜなら、大手ブランドがすでに取引しているからだ。なんとか頑張って、そこに入り込むことになる」。

トムボーイXはそうする代わりに、小規模な工場の中から価格の高い会社と仕事をすることを選んだ。安価な工場は倫理的な基準を満たしていなかったからである。現在、同ブランドは創業からおよそ8年を迎え、インドなどのよりサステナブルに運営されている場所にある大規模な工場に、容易に仕事を発注できるようになった。

「B Corpは、ブランドが工場に与えているガイドラインも要求している」とゴンザレス氏は言う。「当社には素材や労働条件など、工場が満たすべきチェックリストがあるのだが、B Corpはそのすべてを審査した」。

B Corpはブランドに多くのチャンスを与える

B Corpによると、B Corpステータスを申請したブランドのうち60%が認証を取得できていない

CMOのエイミー・セラーズ氏によると、トムボーイXではすでに新しいB Corp認証に関するマーケティング材料を展開しているという。ブランドのサイトにはお祝いのバナーが貼られ、社内チームはB Corp認証を得たことの意味を説明するページを追加した。トムボーイXのソーシャルチャンネルからこの新しいページに誘導されるようになっており、セラーズ氏いわく、初日だけで数千のアクセスがあったという。現在セラーズ氏は、ブランドのラベルやパッケージ、その他のマーケティング材料にB Corp認証を取り入れる方法を検討中だ。

「とくに18歳から20歳の若い消費者は、企業によりよいことをするよう求めており、ブランドにとって多くのチャンスがある」とセラーズ氏は言う。トムボーイXのコアとなるオーディエンスは18歳から34歳だが、70歳の顧客もいる。「私の中のマーケターは、ありとあらゆるものにB Corpというラベルを貼りたがっている。人々はそれを見て何だろうと興味を抱くにちがいないし、なぜほかの会社にはその認証がないのかと疑問に思うはずだ」。

[原文:Why DTC brands rushed to B Corp certification in Q1]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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