グロシエ(Glossier)は事業の新段階に差し掛かっており、ブランドとしての成熟度を反映するために旗艦店をアップデートしている。
組織再編に続く旗艦店のオープン
グロシエは、2月16日木曜日、(ニューヨークの)ソーホーに面積7000平方フィート(約650平方メートル)の新しい旗艦店をオープンする。これは、2019年にオープンし、2020年にコロナで休業して最終的に閉鎖された店に続くものだ。前の店は2階建てで広さ約5500平方フィート(約511平方メートル)、1階の小売スペースは3000平方フィート(約279平方メートル)だった。新しい店舗は前の場所から1ブロック離れたところにあり、500平方フィート(約46平方メートル)のラウンジを含む3100平方フィート(約288平方メートル)のショッピングスペースを擁する。
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このニュースは2022年の大規模な組織再編に続くものとなる。これには、理解が曖昧だったコミュニティ中心のプラットフォームから離れるための技術部門の解雇、創業者のエミリー・ワイス氏の辞任と新CEOの任命、初のセレブリティブランドアンバサダーとしてオリビア・ロドリゴ氏の起用、ディスカウントストアのTJマックス(TJ Maxx)での一部の製品の販売などがあった。
旗艦店の立ち位置と今後の計画
グロシエのグローバルマーケティング担当シニアバイスプレジデント、クレオ・マック氏は、同社がその出身地へ物理的に再進出することについて、この新しい旗艦店のオープンを「帰省」として捉えていると語っている。
「グロシエが人だとしたら、(この店舗はその人の)家になるようなものだと言いたい。店ではつながりとコミュニティ、(そして当社の)製品では感情と感覚が重要だ。当社のユニークな特徴の多くを結び付けようと試みている」とマック氏。「パンデミック後のフォーカスはもっと多くの人々にグロシエを届けることだ」。
2023年初頭、グロシエはSephora.comで製品の販売を開始した後、セフォラの実店舗でも取り扱われることになる。2月23日には、米国とカナダのセフォラ全店がミレニアルピンクに染まり、店頭のショーウィンドウすべてにグロシエのクラウドペイント(Cloud Paint)リキッドブラッシュのポスターが飾られて、グロシエのセフォラ進出が発表される。ソーホー店のオープンにより、グロシエは現在、アトランタ、ワシントンD.C.、ロンドン、ロサンゼルス、マイアミなどに9店舗を持ち、今春にはボストンとシカゴに店舗をオープンする予定がある。
「当社が際立っている理由、そしてこのオムニチャネルアプローチが機能している理由は、(イベントのような)瞬間によって、エミリー・ワイス氏が(2014年にグロシエのローンチを発表した)ブログ投稿で語っていたようなことを讃え続けられているからだ。つまり、現在の自分に対する喜びと自由だ」とマック氏は語っている。「来店して素晴らしいイベントを体験したり、当社が「ボーイフレンドのカウチ」や「父親のカウチ」(訳注:店舗で女性が試着する際に付き添いの男性が座って待つ場所)と呼んでいるソファで友人と交流したりできる」。
新しい旗艦店は、以前の店と比較して、より高い洗練度の大人向けデザインになっている。同社は「ミレニアルピンク」の感性の定義に貢献しており、これは以前のニューヨーク旗艦店にも反映されていた。新旗艦店のインテリアには以前よりも赤のアクセントが増え、トープカラーのスタッコ仕上げの壁とサブウェイスタイルの白タイルが印象的だ。当初はミレニアル世代対象だったグロシエだが、10年ほどを経て顧客ベースは成長している。シミラーウェブ(SimilarWeb)によると、同社のウェブサイト訪問者の約37%が18歳〜24歳、約31%が25〜34歳、14%が35〜44歳である。
4月には新しいウェブサイトがローンチする予定で、また、今年は未公開の製品が4~6週間ごとに販売されるという。グロシエは1月に3つの香りで初のデオドラントをローンチ、ビーガンとアルミニウムを含まない処方を強調されている。これは48時間で完売し、予想を400%上回ったとマック氏は述べている。ニューヨーク・タイムズ紙によると、グロシエは2月に、Z世代にアピールするビーガン処方とアプリケーターチップを更新して14ドル(約1900円)のバームドットコム(Balm Dotcom)を再発売、最初の1週間で100万ドル(約1.3億円)相当を売り上げた。また、ベンチャー支援の資金調達で2億6500万ドル(約355億円)を達成し、評価額は18億ドル(約2414億円)。グロシエは2018年に、年間売上高は1億ドル(約134億円)だったと述べている。
地下鉄を彷彿とさせるデザイン
イソップ(Aesop)は個々の店舗にその土地柄を反映することで知られているが、それと同様にグロシエもコミュニティを店舗デザインに取り入れている。この新しい旗艦店には、茶色の木製ベンチや地下鉄のモザイクタイルなど、街と産業と地下鉄のディテールが織り交ぜられている。近隣の地下鉄駅5駅にあるメトロカードの自動販売機では、赤いリップスティックが印刷されたグロシエのカードが発行される。地下鉄のOOH広告も2月初旬からニューヨーク全体で展開されている。2月17日の金曜日には店員と社員がスプリングストリート駅で地下鉄の乗客にピンクのバラを配る予定がある。
「総じて顧客には入店したときに帰属意識を感じてもらいたいと思っている」と述べているのは、グロシエのシニアバイスプレジデント兼エグゼクティブクリエイティブディレクターのマリー・スーター氏だ。同氏はソーホー店のデザインを統括した。「この旗艦店では来店者にさまざまな体験の可能性を提供して『自分の冒険を選ぶ』という感覚を提供したかった。たとえば、製品の発見やお試しに関心の高い人が多いので、長さ15フィート(約4.5メートル)のトライオン用テーブルを用意した」。
インテリアには斬新で若々しいタッチも見られる。顧客はクレーンゲームで遊んで、Gの形をしたクッキー型やヘアクリップなどのアイテムを獲得できる。また、以前はマイアミ店でしか入手できなかった限定版2022ビーチバッグなど数年前のグッズが現在のグッズと共に販売されている。
「グロシエはインターネット上で生まれた。オムニチャネルになるずっと前から対面のつながりのための物理的なスペースを持つことの重要性を認識していた」とスーター氏。「没入型の対面小売は当ブランドに命を吹き込むための優れた方法のひとつである」。
[原文:Why Glossier’s new flagship store is a ‘homecoming’ for the brand]
EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)