ハイブリッド 勤務で、いかに多様な人材を育成すべきか?:「意見をしっかりと聴くことが鍵」

DIGIDAY

パンデミックにより、経営者も従業員も、仕事と生活に関するあらゆる要素について再検討するようになった。

マイクロソフト(Microsoft)によると、世界の労働者の40%以上が現在勤務している職を今年中に去ることを検討しており、ビジネスにおける意思決定者の66%は、ハイブリッドな勤務環境により適応するため、物理的なスペースの再設計を検討しているという。

従業員たちが新しい、より柔軟な働き方を受け入れるにつれて、多くの人は日々の通勤時間や厳しい労働時間に縛られずに、以前よりも広い視座を持つようになっている。一方雇用主にとっても、ハイブリッドモデルは、より広くより多様な人材を確保できるという点で有益だ。

従業員と雇用主、それぞれのメリット

インド、米国、中東にオフィスを持つワークフローソフトウェア企業、キスフロー(Kissflow)の最高経営責任者であるスレッシュ・サンバンダム氏は、従業員がリモートワークとオフィス内での共同作業の両方のメリットを享受できるようにする、ハイブリッドワークモデルを採用した。「我々は、これが既存の仕事の仕方や勤務形態が、根本的に変化する一助になると信じている」。この新しい働き方は、これまで都市地域が不当に優遇されてきた状況を変える可能性がある。

「人々は混雑した都市部を離れ、地域社会に根を下ろすことができ、生活の質を向上させるだけでなく、真の社会変化をもたらすための、意義深い取り組みも行うことができる」と同氏は付け加えた。「また、雇用主は幅広い人材プールへのアクセスが可能になるため、従来の労働市場に参加できていなかった人々にもチャンスを与えられることになる」。

米投資管理ソフトウェア専門企業、ジュニパースクエア(Juniper Square)の最高経営責任者で共同創設者のアレックス・ロビンソン氏も、サンバンダム氏と同じ考えだ。先日、同社は職場を3つのハブに再構成した。そのうち2つは、サンフランシスコとオースティンのオフィス、3つ目のハブはクラウド上にある。ロビンソン氏は、ハイブリッドな職場のもっとも有益なポイントは、人材を惹きつけ、維持できる点にあると考えている。

「実際、我々のようなハイブリッド型を採用している職場では、既存の枠組みを超えて、米国とカナダのどこからでも従業員を採用できるようになった。これにより、企業は新たな人材プールへのアクセスが可能になり、雇用の質を下げることなく、成長を維持できるようになった」。パンデミックがはじまって以来、ジュニパースクエアは200人近くを雇用しており、そのうちクラウドでの勤務を選択した人の数は、サンフランシスコとオースティンのオフィスでの勤務を選択した人を合わせた数よりも多いという。

ロビンソン氏はまた、この新たなモデルが、ジュニパースクエアがより多様で包括的な従業員を構築するのに役立つだろうと考えている。「最終的には、現在と将来における従業員のニーズを満たすために、物理的なハブ(オフィス)を追加でサポートすることも含まれる」と、ロビンソン氏は述べる。

育成や評価体制の見直しが必要

しかし、ハイブリッドモデルはより広い人材プールへのアクセスを可能にする一方で、経営者たちは彼らを採用したあと、育成しながら雇用を維持できるようにする必要がある。

英国に拠点を置く、モンキーパズル・トレーニング・アンド・コンサルタンシー(Monkey Puzzle Training and Consultancy)の共同設立者で組織心理学者のカレン・ミーガー氏は、「物理的な職場が生み出す特有のオフィス文化がなければ、リモート勤務者のなかには、自分の成長が停滞していると感じる人もいるかもしれない。ハイブリッド勤務体制下においてリーダーを務める人材は、場所に関係なく、すべてのチームメンバーに自己開発と成長のチャンスを与える責任がある。それが、どのような形で表れるかは組織によって異なるが、メンターシッププログラム、追加のトレーニング、またはバーチャルにおけるネットワーキング機会の提供などが考えられる」。

ただ、新たに採用された人材にとって、仕事はじめでほかの同僚たちや上司と直接のやりとりができない状況は、困難に感じるだろう。イングランド北西部にある、ブラックプール近郊に拠点を置くスタジオLWD(Studio.LWD)のクリエイティブディレクターであるローラ・ウェルドン氏は、クリエイティブ業界に参入する多くの人々にとって、物理的に会って行われるミーティングは、依然として重要視されていると述べている。「多くのメンタリングと支援が必要だ。対面環境でより広いチームの一員になることは、彼らの進歩を本当に支え、暗闇のなかに取り残されていると感じないようにすることができる」。

また、ハイブリッドモデルでは、企業が生産性を測定する方法についても、変更を加える必要があるろう。前出のサンバンダム氏によると、同社はハイブリッドワークモデルを発表する前からプレゼンティーイズム(出勤していながら、集中力や意欲が失われている状態が原因で起きる生産性の損失)概念を廃止し、タスク中心のモデルから目標中心モデルに移行したという。

「キスフローでは現在、生産性はプロジェクトの数ではなく、目標達成の基準でもって測定されている。このことが、メンバーの自由と自律性を強化する。職場における責任は個人に移った。人々は自分の時間と生産量の管理に関して、より責任を感じるようになった」とサンバンダム氏は述べる。

今後求められるのは、具体的な成果を評価し、継続的な貢献を認めるための公式、非公式の仕組みを整備することだろう。前出のミーガー氏も、「このことは、すべてのロケーションで働く従業員が、自分の価値を評価され、見られていると感じるのに役立つ」と述べる。

最高のリーダーとは?

リーダーたちは、各地に分散した人材を惹きつけ、保持することができるハイブリッドな事業がどのような形であるべきか、あらためて考えることに尽力しなければならない。採用、入社、自己開発、成果評価などの新しいプロセスを確立することに加えて、リーダーは彼らの言葉に耳を傾ける必要がある。

「最高のリーダーとは、やる気を起こさせ、やる気を起こさせるために実践的なアプローチを取る人たちだ」とミーガー氏。「従業員たちが複数の場所に分散しているなか、すべての意見に共感の態度を持って耳を傾け、アプローチすることを一層重視すべきである。コミュニケーションが鍵だ」。

[原文:‘Increased emphasis on listening’: How leaders are nurturing diverse workforce in hybrid spaces

NICOLA SMITH(翻訳:塚本 紺、編集:村上莞)

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