Twitter に回されるはずだった広告費、どこへ消えたのか:「広告主は別のプラットフォームへ予算を回す計画を練っている」

DIGIDAY

Twitterの広告売上が急速に減少している。そんななか浮かび上がってくるのは、こんな疑問だ。いったい広告主はその資金をどこに移動するのだろうか?

ひとことでいえば、その答えは「いたるところへ」だ。

イーロン・マスク氏が経営権を握って以来、Twitterは広告主にとってますます有害な環境となった。その結果、自社ブランドがオーナー交代の大混乱に飲み込まれることを懸念して、Twitterから撤退する広告主が続出している。この撤退により、マーケターの手元には、よそへ回さなければならない、使われなかった広告費が残っている。

一部の広告主はその予算を再配分して、ほかのプラットフォームへ回すという選択肢を選んでいる。

Twitterへの広告費は、別のプラットフォームへ移るか

デジタルマーケティングエージェンシーのニュー・エンゲン(New Engen)でメディアサービス担当バイスプレジデントを務めるアダム・テリアン氏は、こう語る。「Twitterでの出稿を開始するつもりだったが、思いとどまったクライアントが何社かある。彼らは現在、別のプラットフォームへ予算を回す計画を練っている」。

Snapchat(スナップチャット)などのプラットフォームが、Twitter広告衰退の恩恵にあやかっていることを示す(と思われる)初期兆候もある。デジタル分析企業、シミラーウェブ(Similarweb)のデータによれば、ads.twitter.comへの10月のトラフィックは前年比で19%減少している。それに対して、ads.snapchat.comへのトラフィックは47%増加したという。

オーナーシップがマスク氏へ移って数週間になるが、多くのエージェンシーがTwitterへの支出を一時停止するようクライアントにアドバイスしている。そのなかの1社がザ・ソーシャル・エレメント(The Social Element)だ。同社はクライアントに、ソーシャルリスニングツールを使ってオーディエンスの動向を探ることを提案。状況が悪化の一途をたどるなか、次にどのプラットフォームに向かうべきかを判断するように伝えている。

「この『アクシデント』のせいで、クライアントのメインオーディエンスのTwitter離れが起きているのであれば、たとえばTikTok(ティックトック)への投資を増やしたほうがいいかもしれない。TikTokのほうが、コミュニティから感じられる歓迎ムードははるかに強い。ブランドにとって好ましい場所だ」と、同社CEOのタマラ・リトルトン氏は語る。

バイシクル・ロンドン(Bicycle London)の共同創業者、グレアム・ダグラス氏も同じ見解だ。同氏もまた、特別な場合を除き、満たすべき基本的な目標があるのなら、予算を別のチャネルへ移すことをクライアントに進言している。とはいえ、「いまのところ、クライアントは総じて警戒心を強めている」という。

支出の一時的抑制

ダグラス氏のいっていることは間違っていない。

Twitter本社における大混乱とは別に、いま起きているマクロ経済的イベントの数々の作用によって、広告は猛スピードで下降線をたどっている。つまり、業界を潤すはずの広告費が減っていることは間違いない。もちろん、いま支出されている予算をもっと働かせる必要もある。

そして、ほかで働かせることができない場合、その予算は往々にして、そのインパクトが明白な場所に落ち着くことになる。つまり、貯蓄だ。

ダグラス氏によれば、Twitter内で事態が悪化しつつあるという懸念がクライアントのあいだで高まっている。「ひとまずは支出は控えておこうというのが、いまやるべきことと目されている」と、同氏は語る。「そうするのに好都合な理由があるケースでは、とくにそうだ」。

しかし、もし予算が貯蓄に回されていても、マーケターが最高財務責任者にそれを報告するとはかぎらない。グロウ・ロンドン(Glow London)のCEO、エマ・ハリス氏は、マーケターがこの機会を利用して、それをどこかへ隠ぺいしてしまう可能性もあると指摘する。「支出を控えているせいで売上が下がった場合など、これによる悪影響が最終損益に出ているのであれば、それをほかへ投じる必要が出てくるだろう」と、同氏は語る。「だが、いまはまだ、このようなかたちで収益を振り向けるには早すぎる」。

ダグラス氏も、最高マーケティング責任者の観点から、これに同意する。マーケターが予算の削減にひとたび同意すれば、今後それを取り戻せなくなるという大きなリスクが生じるという。

「もし理由があれば、あとから『これだけの予算がまた必要な理由は?』と問い詰められる確率は、多少は下がるかもしれない」と、同氏は語る。「『どうなるか確かめるために、支出を一時的に控えています』といったことをいっておけば。予算が全体的に縮小傾向にあるあいだは、Twitterの混乱劇はちょうどいい理由になるのではないか」。

使われるはずだった広告費を追い求めるメディアオーナーたち

マーケターが次の一手の決断の前に固唾を呑んでいるのに対し、一部のメディアオーナーは、彼らが一時的に止めているキャッシュを追い求めて積極的に動いている。しかも、あからさまに。

その一例がボックス・メディア(Vox Media)だ。同社のメディア売上担当シニアバイスプレジデントで、コンサート(Concert)の責任者を務めるA・J・フルッチ氏は先日、Twitterが直面する逆境に乗じて、マーケターに向けたメッセージをLinkedIn(リンクトイン)に投稿した。

「現在、Twitterへの支出を一時停止、再分配しているマーケターの方々へ:コンサートは安全で効果的な代替手段です。信頼できるパブリッシャー環境でプレミアムなブランド広告を配信し、毎月約2億5000万人のエンゲージドユーザーにリーチしています。第4四半期も対応可能であり、コンサートを利用すれば、貴社のブランドは魅力的に映ります。約束します」と、同氏はその投稿の中で述べている。

Pinterest(ピンタレスト)も、そんななかの1社だ。テリアン氏によれば、Pinterestの担当者からニュー・エンゲンのチームに、同プラットフォームのサイトやアプリ、ニュースレターにある情報とは違う、「勝つための競争:Twitter版」と題された文書が特別に送られてきたという。その文書には、Pinterestがいかに信頼できるか、ブランドセーフティに優れているかが詳しく書かれており、Twitterに対して一部のユーザーが抱く懸念についても大きく取り上げられていた。その根底には、こんなメッセージが込められているようだった。「Twitterから完全に離れた場合には、もっと安全なピンタレストがこうした懸念に対処するお手伝いをさせていただきます」。

「ディスプレイサイドのメディアパートナーも数社、ブランドセーフティを声高に叫びながらアプローチしてきている」と、テリアン氏は語る。「『Twitterには危険が潜んでいます。その点、当社はブランドセーフティに長けており、ありとあらゆる保護対策を講じています。ぜひうちへ』と売り込んできている」。

「プラットフォーム自体に対する懸念、生み出された環境に対する懸念、抑えられた支出は必ずどこかほかへ回されるはずだという見込み。そのチャンスの種類はさまざまだが、誰もがここぞとばかりにそれに飛びついている」と、テリアン氏は補足する。

Twitterに再び予算が戻るのは?

Twitterを飲み込んでいるこの大混乱は、まさに広告主のメディア予算に若干の余裕が残っているタイミングで生じた。その予算は年内に消化されなければ、失われてしまうことになる。

気がつけば、マーケターたちがよくおちいる難問のなかにいる。おそらく余った予算の一部は、増え続ける一方のプラットフォームポートフォリオをサポートするために、12月31日までにアドテクベンダーやマーテクベンダーの手に渡るだろう。エージェンシーは、TikTokなどのプラットフォーム向けネイティブコンテンツの制作を可能にするために、その業務と制作努力の倍増を強いられてきた。この事実を考慮に入れると、そう思えてならない。

一方で、その予算がまたTwitterに回されるようになるのは、まだまだ先になりそうだ。

[原文:Where exactly are Twitter’s lost ad dollars going?

Krystal Scanlon(翻訳:ガリレオ、編集:島田涼平)

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