Netflix の未来を左右するのはゲーミングか?:長期的な存続のために、ゲームを活用すべき理由

DIGIDAY

ストリーミング界の巨人、Netflixが最近発表したマイクロソフトとの広告提携は、この決算期に長い影を落としており、この戦略が減少中のサブスクリプション数と激化中の競争という向かい風を凌ぐための手だてになるのか、オブザーバーは疑問を呈している。

Netflixの積極的なゲーム事業への取り組みから、同社が長期的に存続するための計画、そしてゲームとNetflixの知的財産を活用した広告ビジネスの可能性について、いくつかの知見を得ることができる。

Netflixのゲーミング強化

Netflixのサブスクリプション数が落ち込みはじめるのは時間の問題だった。実際、同社役員室は少なくとも2019年1月以来、ほかの収益源に目を向けており、その方向転換を公にしたのが、CEOリード・ヘイスティング氏が株主に向けて発した悪名高き言葉だった。同社はHBOやAmazonといったストリーマー勢よりもむしろ、フォートナイト(Fortnite)をライバル視していると、同氏は断言したのだ。

同社がゲーミング幹部を初めて雇用したのは2021年7月のことで、元Facebookリアリティ・ラボ(Facebook Reality Lab)のコンテンツ部門VPマイク・ベルデュー氏を雇い入れ、以来8カ月の間にライアットゲームズ(Riot Games)やアクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)、PlayStation(プレイステーション)といった企業から計14名のゲーミング幹部を引き入れ、強化を図った。

Netflixのゲーミング強化は、同社がいわゆるアテンション・エコノミー(関心経済)を意識している証にほかならない。オーディエンスはもはや、種類の異なるエンターテイメントごとに分断されてはいない。現代の消費者はむしろ、異なるプラットフォームやフォーマットの間を自在に行き来しながら、新たなコンテンツを常に探し求めている。

「画面に目を釘付けにするエンターテイメントは、形にかかわらずすべて、同一メディア上で競合している」と、ライブストリーミングツールおよびサービスプロバイダー、ストリームエレメンツ(StreamElements)のCEO、ギル・ハーシュ氏は話す。「したがって、ストリーミングサービスとゲームは、捕らえにくいZ世代とミレニアム層をターゲットにしていれば、同じ観客を奪い合うことが多い」。

広告インベントリの拡大

Netflixは豊富な知的所有権の中に、誇るべき巨大な潜在的広告インベントリを有している。たとえば、人気シリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界(Stranger Things)」は、プロダクトプレイスメントで何百万ドル(数億円)という利益を生めると、一部の観測筋は話す。とはいえ、オリジナルゲームの増加は広告インベントリの種類および価値の拡大することにつながる。ゲーム内広告がより成熟したチャネルへと発展しつつある今、その可能性はさらに高まっている。

同社はすでに、自社のオリジナル作品に基づくゲームへの需要があることを示し、早くも2017年には「ストレンジャー・シングス」の無料モバイルゲームを開発した。さらに、「ブラック・ミラー(Black Mirror)」といったほかのタイトルでも、オーディエンスが自身でストーリーを選択できる2018年のインタラクティブ版「ブラック・ミラー:バンダースナッチ(Black Mirror: Bandersnatch)」を通じてゲーム化の実験を始めている。また、他社プロダクトにも門戸を開いており、たとえばインタラクティブアドベンチャー『マインクラフト:ストーリーモード(Minecraft: Story Mode)』は2018年以来、同プラットフォームで配信されている。

Netflixはおそらくこの先、ゲーム内に広告を打つのか、それともユーザーに高額のサブスクリプション費を課すのかの、二者択一を迫られることになるだろう。ゲーマーはプレミアムゲームよりも広告付き無料ゲームにはるかに前向きで、無料でプレイできるなら、多少の広告インプレッションに喜んで目を煩わされたい、と考える。Netflixがゲーミングを含むサブスクリプションを通常のサブスクよりも高額に設定した場合、ゲーム内への広告出稿がなおいっそう難しくなる可能性はある。

「仮にNetflixがこのスペースに参入し、サブスクリプション費に追加料金がかからない無料ゲームを大量に投入すれば、そこは広告を打つひとつの手だてになりうるだろう」と、コンシューマーリサーチ会社GWIのゲーミングインサイトアナリスト、トム・モリス氏は話す。「ようするに、トレードオフだ。人々はより高い料金の支払いに納得するかもしれないが――もっとも、その点については、必ずしも信用はできないが――視聴コンテンツとゲーミングをいずれも提供するストリーミングサービスに対価を支払わせれば、そこで広告を必ずしも見たいとは思わない人々が出てくることは十分に考えられる。つまり、ゲーム内広告はそれくらい微妙な存在、ということだ」。

パスワード共有の重要性

また、ゲーミングがNetflixの未来を左右し得る理由は、広告インベントリの拡大だけではない。Netflixは以前から共有アカウントの規制計画を公にしており、最近も複数の家庭でログインするユーザーに追加料金を課すことを決めた。

一般のTV/映画消費者にしてみれば、パスワードの共有は問題でも何でもない――マイナス面は事実上、ないに等しい。だがゲーマーにしてみれば、自身のアカウントは配信コンテンツへのアクセス手段以上の存在だ。それは、個人およびバーチャルアイデンティティを体現する唯一無二の個性の象徴にほかならない。ゲームが登場すれば、自身のキャラクター/アバターに相応の時間を投資してきたNetflixユーザーの目に、パスワードの共有が非魅力的に映るのは間違いないだろう。

競合他社から遅れをとるNetflix

ゲーミングと従来のストリーミングの融合に関して、Netflixが一部の競合他社に大きく遅れを取っているのは明らかと言える。たとえば、Amazonはゲーム開発とストリーミングの間の溝をすでに埋めており、Amazonプライム(Amazon Prime)を介して『ロスト・アーク(Lost Ark)』といったオリジナルシリーズおよびゲームをいずれも提供しており、GoogleやYouTube、TikTokもライブストリーミングまたはゲーム開発に特化したゲーミング部門を構えて久しい。失われた時間を取り戻すため、Netflixには迅速な行動が求められるだろう。

「テック企業勢は、主要な層が、ただ遊んだり、エンターテイメントを追求したりするためにゲームにますます多くの時間を費やすのを見ており、『我々はここでもっと展開する必要がある――このトレンドへの露出がもっと必要だ』と考えている」と、ゲーミングにフォーカスするベンチャー企業コンボイ(Konvoy)のマネージングパートナー、ジョシュ・チャップマン氏は分析する。

「それが今後、彼らの収益に大きく寄与することになるのは間違いない。彼らが持っているほかのプロダクトが斜陽に、あるいは不要となりつつあるいま、タイミング的にも抜群と言える」。

[原文:Why succeeding in gaming is critical for Netflix’s long-term plans

Alexander Lee(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)

Source

タイトルとURLをコピーしました