決済サービスのキャッチ、クレジット還元でリピート購入促す:「 BNPL ではロイヤルティを得ることができない」

DIGIDAY

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チェックアウト決済処理業者のキャッチ(Catch)は、買い物客が後払い(BNPL)サービスを捨てて、従来型のデビットカードに戻ることを望んでいる。

2020年に創設されたキャッチは、勢いを得てきたことで、協力している加盟小売店の数が今年になって2倍以上に増えたと述べている。同社はエバーレーン(Everlane)、ルーニャ(Lunya)、パレード(Parade)などのD2Cブランドと連携しており、最近になってソウルサイクル(SoulCycle)やパックサン(PacSun)も加わった。

同社のサービスの仕組みを説明しよう。決済ページに「キャッチで支払うと2.46ドル(約332円)お得です」などのメッセージが表示され、買い物客を勧誘する。買い物客が支払いオプションとしてキャッチを選択すると、自身のデビットカードや銀行口座と紐づけることで、購入金額の10%がストアクレジットとして還元され、次回からの買い物で使用できる。利用者が受け取ったクレジットは、獲得したのと同じブランドでのみ引き換え可能だ。

顧客が自分のデビットカードを使用することに報奨を与える一方で、そのブランドから再度買い物をするように動機づけするというのがコンセプトだ。キャッチは顧客が再度ブランドを訪問し、キャッチで獲得したストアクレジットを再び利用する際に、ブランドから料金を徴収する。このモデルによって、ブランドはクレジットカードの取引手数料を節約できると同時に、デビットで支払ったことへの報奨としてクレジットを還元することで、顧客の再訪問を促すことができると同社は述べている。このサービスは、後払いサービスがクレジットのリスクを明確に説明せず、過剰な消費を推奨することへの懸念が拡大している状況を受けたものでもある。これに対して、キャッチのようなサービスは、後払いサービスに対する反発を利用し、ほかの種類の支払い方法を使用することに報奨を与えようとしている。

若い顧客層への対応

キャッチは現在、「数十万人」のユーザーを抱えており、その大部分は参加ブランドでのショッピングのとき、この決済オプションを見つけた人だ。同社によれば、加盟している小売業者では再購入率が43%向上し、継続率も46%増加したという。

同社の共同創業者でCEOを務めるニコ・ペルドモ氏は以前、アファーム(Affirm)のプロダクトマネージャーを務めており、「BNPL業界で働いているあいだに、クレジットカードが何十年にもわたって米国での支払いを独占してきた後、若い顧客が支払方法を変えようとしている様子を直接目にすることができた」と述べている。しかし、「借金には依然として問題があり、後払いサービスでも解決できていない」と、同氏は付け加えている。

同氏は、次世代のために、クレジットの負債を負うことなく、プレミアムな報奨や特典へのアクセスを提供する機会があるとしている。

キャッチのソリューションは主に若い層のオンライン買い物客を対象としており、年齢層は一般に18歳から34歳で、女性を中心としている。そのため、同社の小売パートナーの多くは、美容品やファッションのカテゴリーに属している。この数カ月に同社は美容品ブランドのファーマシー(Farmacy)、ウェイ(Ouai)、バニティプラネット(Vanity Planet)とパートナーシップを結んだ。この層のなかでも若い顧客はクレジットカードを使いはじめたばかりか、一切保有していない。このような若い顧客に対して、購入した商品のクレジットを還元することで、リピート購入とロイヤルティの機会を生み出すことができると同社は述べている。

顧客のリピート購入が不可欠

キャッチは初期の頃にファッション小売業者のアリツィア(Aritzia)と接触した。アリツィアはキャッチに興味を示したものの、新興企業であるキャッチにまず、より小規模の企業とのあいだで技術を確立することを求めた。「そのため、よりデジタルネイティブで若いブランドで、より機敏で、多少のリスクを負うことができる企業とテストを開始した」と、ペルドモ氏は説明する。

2021年に最初に契約したD2C企業は、アクティブウェアブランドのガールフレンドコレクティブ(Girlfriend Collective)だった。「最初の1カ月でアフターペイ(Afterpay)の2倍の取引と金額を実現し、より大規模なブランドを呼び込みはじめた」と同氏は付け加えている。

キャッチの収益は、ユーザーにリピート購入してもらう能力とも直結している。同社の共同創設者でCOOを務めるデニア・エバーソール氏は、「当社は基本的に、小売業者がリピート取引で顧客を維持できるようにしなければ、ビジネスが成り立たない」と語る。これによって同社は、「どのオンライン小売業者も、今まさに顧客維持率を高めるかを模索していることを考えれば」、キャッチは小売業者にとって魅力的な決済パートナーとなったと、同氏は付け加えている。

ロイヤルティ向上に寄与

フィットネス用品ブランドのバラ(Bala)は、キャッチの初期のブランドパートナーで、過去18カ月にわたって同社のD2Cウェブサイトでキャッチの決済オプションを使用してきた。

バラの成長責任者を務めるサム・ウィルソン氏は、同社の大きな顧客層であるZ世代のロイヤルティを高めるという、より大きな目標の一環として、キャッチのテストに関心を抱いていたと、米モダンリテールに語った。「キャッチを利用している当社の顧客は、利用していない顧客よりも継続率が2倍も高い。そのため、当社はキャッチの仮説をブランドの観点から証明できた」と、同氏は述べている。

オンライン融資会社のレンディングツリー(LendingTree)で最高クレジットアナリストを務め、パーソナルファイナンスを担当するマット・シュルツ氏は、人々が日常的な買い物をBNPLのローンで支払うことで負債を抱えている現在、デビットの利用は特に歓迎されると語る。4月にレンディングツリーが行った調査によれば、アメリカ人の21%は食料品の支払いにBNPLサービスを使ったことがあると回答している。

「かつてはデビットカードに報奨があったが、この数年間に消滅した。全額前払いを好む人々のあいだで、未だに報奨への需要があることは明らかだ」と、同氏は述べている。

BNPLを利用することで、小売業者における1回の購入点数を増やすことはできるが、同氏の見方では、「小売業者は顧客のロイヤルティを得ることはできない。ユーザーとの関係を維持するのは、サービスだ」と付け加えている。

決済ネットワークの構築に向けて

小売ブランドにとって、全額現金払いを回収しながら、リピート購入を促すことは、今のところ双方に有利だ。「収益性の高い顧客獲得を目指すこの時代に、顧客維持を高めることができるプラットフォームは非常に重要だ」と、バラのウィルソン氏は述べる。この半年から1年のあいだに実施されたほかの戦術として、バラのデジタルフィットネスの定額プランを再開することなども試みられた。

キャッチは今後数年間に、より大手の小売業者と提携し、さらに多数の顧客にリーチすることを計画していると、ペルドモ氏は語る。長期的なロードマップには、より消費者に近いブランドとなり、店舗で使えるストアクレジットを友人と共有するようなソーシャル機能も含まれている。「キャッチを使って買い物ができる別の場所を示したり、クレジットを貯めることができるモバイルアプリを構築中だ」と、同氏は述べている。

同社の長期的な構想は、オンラインと現地の店舗の両方を含む何千もの場所で利用可能になることだと、ペルドモ氏は語る。「今すぐにそこまで拡大することはできないが、小売業者と買い物客の双方に役立つ決済ネットワークを構築できない理由は何もない」と、同氏は述べている。

[原文:How Catch is billing itself as an alternative to buy now, pay later]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Catch

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