「動画視聴」とはいったい何だろうか。これはまじめな疑問であり、広告バイヤーたちが頭を悩ませている課題だ。というのも、その答えはいつでも、どうも腑に落ちない「場合による」になりがちなのだ。
「いまや動画視聴の定義は無数にある」と、広告エージェンシーのバトラー・シャイン・スターン・アンド・パートナーズ(Butler, Shine, Stern & Partners)でメディアおよびコミュニケーション戦略担当責任者を務めるケリー・スタンポ・グベイア氏は言う。「YouTubeでは、ユーザーが意識的に30秒見続けることをいう。Facebookでは、3秒たったあとから視聴数にカウントされる。そして現在人気爆発のTikTokでは、最初の1秒からカウント対象だ」。
「動画視聴」にまつわる測定方法の変化
- 動画視聴のカウント方法のばらつきは、短編動画プラットフォームの登場によりさらに増大した。
- 従来型テレビの視聴測定についても、平均CM時間からインプレッションベースの測定に移行しつつある。
- 後者への変化により、競争は平準化され、広告バイヤーにとって状況がよりシンプルになる可能性がある。
「視聴」の定義とは
歴史的に見て、これまでは(つまり従来型テレビでは)視聴者数はある1分間にチャンネルを合わせた視聴者の人数を番組全体で平均したものとして測定されてきた。つまり、「1億人がスーパーボウルを観戦した」という場合、3時間の中継番組のどこかでチャンネルを合わせた視聴者の合計人数が1億人というのではなく、3時間の試合のあいだのどの1分をとっても、1億人が観戦していたということだ。
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対照的に、TikTokやインスタグラムのリール、YouTubeショートの1億回視聴は、単に1億人のユーザーがスワイプの途中で自分のフィードに現れた動画を目にしたあと、すぐ次に移ったという意味かもしれない。動画が1ミリ秒でもスクリーンに現れたら視聴にカウントされるわけではないが、それに近いものがある。
「視聴を定義する最低提示時間の閾値はある。だがこれまでのところ、我々はあまりこのことを公に話題にしてこなかった」と、YouTubeショートのプロダクト責任者であるトッド・シャーマン氏は、YouTubeクリエイターのコリン・アンド・サミール(Colin and Samir)がクリエイターサポート・ポッドキャストで行ったインタビューで述べている。その動画は2月上旬に公開された。
短編縦型動画プラットフォームでは視聴を定義する時間閾値が小さいことが、広告バイヤーのあいだに不安を呼んでいる。「強制視聴がないのはまったくかまわない。プラットフォームに最適化する必要があるのだから。だが、平均視聴時間は5秒なのか? それとも2秒なのか? CPMとCPVを比較する際にどのように考慮に入れるべきなのか? まだ理解しなければならない要素がいくつもある」と、あるエージェンシー幹部は語る。
重要性を増す視聴時間
一方で、従来型テレビの測定方法もまた、平均CM時間からインプレッションベースの測定方法に移行しつつある。この変化は混乱を招く一方で、全体として状況をシンプルにする動きでもある。つまり、数年前にはデジタルプラットフォーム間の視聴回数カウント方法の差異をどう考慮に入れるかが課題だったが、いまやそれがテレビ、ストリーミング、デジタル動画のすべてに関わる問題になっているのだ。
「従来型テレビによる定義にまで異議を挟めるようになって、(視聴)時間の重要性はこれまで以上に増している。新たな測定パートナーが平均CM時間からスポットレベルに移行しているなか、動画視聴の現在の定義とは何なのか?」と、別のエージェンシー幹部は言う。
インプレッションベースの広告購入と測定がますます一般化し、テレビ広告業界がマルチカレンシー時代へと突入するなかで、こうした定義はある意味でデジタルに傾いている。こうした変化は、動画視聴として認められるハードルを下げるように思えるが、広告バイヤーたちは、これが広告主のビジネスにもたらす(ウェブサイト訪問や商品売上など)結果を考慮した測定への足がかりになり、測定の質が上がることを期待している。
「インプレッションベースの広告購入と効果測定への転換は、競争を平準化させ、どのチャネルが最も人々を動かしているかを可視化する目的にかなっている。すべての投資が効果をもたらさなければならない状況で、次にどこに投資すべきかを判断しやすくなる」と、こうした変化をポジティブに捉えているスタンポ・グベイア氏は言う。「断片化と、競争の平準化の必要性、そしてすべての広告費を効果的かつ責任ある形で使わなければならないというプレッシャーが、こうした変化を推進しているのだ」と、同氏は述べた。
[原文:Future of TV Briefing: What counts as a video view? It depends]
Tim Peterson(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:分島翔平)