注目を集める ゲーム内広告 、業界ではM&Aの嵐となるか:「広告主の求めに応えられる企業は、10社もいないのでは」

DIGIDAY

ゲームデベロッパーがモバイル市場での活動に力を入れている。そんな彼らが目指しているのは、ゲーム内広告部門の設立だ。となると、最善の手段は、難問を抱えるゲーム内広告企業の買収かもしれない。

黎明期にあるゲーム内広告業界にとって、この数カ月間は平穏とはいい難いものだった。オラクル・モート(Oracle Moat)などの測定プラットフォームが、IABのゲーム内測定に関する最新版ガイドラインに完全対応するのは、2024年になると見込まれている。

モバイルゲーム内広告は爆発的に成長

正確なデータが得られないため、ブランド各社はゲーム内広告企業のF2Pモバイル/PCインベントリに対する懐疑心を強めている。ゲーム内広告企業のビッドスタック(Bidstack)が今年1月、アゼリオン・テクノロジー(Azerion Technology)を支払いの保留で訴えるとビッドスタックの株価は急落した

こうしたマイナスの兆候もあるにはあるが、ゲーム内広告企業各社によるモバイルゲームへのフォーカスが、2023年に良い結果を生む可能性は十分にある。モバイルゲームはこの2年で爆発的に成長しており、特に顕著なのが、ゲーム機本体やPCが法外に高額な南アジアなどの市場だ。data.aiのリポート「State of Mobile 2023(モバイル市場年鑑2023)」によれば、2022~23年にかけて、世界のモバイルゲームアプリのダウンロード数は対前年比で8%成長したという。

モバイルゲームの収益力を実感するにつれ、ゲームデベロッパーと大手テック企業は、共にM&A活動に注力してきた。アクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)やテイクツー・インタラクティブ(Take-Two Interactive)といったゲーム業界内の大企業は、利用できるモバイルインベントリーの拡大を目指して、キング(King)やジンガ(Zynga)などのモバイルゲームデベロッパーを買収している。インベントリーの確保に成功したこうした企業が次に狙いを定めているのが、それを広告売上へと変換するのを助けてくれるアドテク企業だ。

大手パブリッシャーは自分たちの手で切り開いていく必要性を認識

「こうした企業の多くが(長期的な視点から)強く望んでいるのが、自社のエコシステムを強化するために、大手プラットフォームに買収されることだ。すぐにもそうなる可能性はあるが、格安かアクハイヤー価格での契約になるだろう」と、大手ゲーム内広告企業の懐事情に詳しいある消息筋(匿名希望)は語る。

「アクティビジョンのような企業が、自社スタックを強化するためにそのような企業を買収し、最低でも年間2000万ドルを要求すればいい」と、同消息筋は語る。ゲーム内広告企業のほとんどは、こうした要求を満たすのに苦労するだろうと、同氏は付け加える。

ジンガは以前から、ゲーム内広告を安定した内部事業として確立する構想を公言してきた。ジンガは2021年5月、ゲーム内広告企業のチャートブースト(Chartboost)を買収した。これを皮切りとして2022年9月には、モバイル成長とアプリストア最適化を専門とする企業のアメイブン(Storemaven)も買収した。

ジンガの最高プロダクト責任者、スコット・コーニグスバーグ氏は、こう語る。「創業以来、ジンガの得意分野はライブ事業であり、それを中心に据えて顧客を維持し、ベストプラクティスを実践してきた。しかし、プライバシーやアドテクをめぐる状況の変化を目の当たりにし、自分たちの運命は自分たちの手で切り開いていく必要性を認識するようになった」。

「ゲーム内広告に対する関心は依然として高まり続けている」

ゲーム内広告業界が、今後相次ぐかもしれないM&A活動の入り口に立たされるのは、これがはじめてではない。ゲーム内広告企業の第一陣が台頭したのは、2000年代なかばのことだった。マイクロソフト(Microsoft)は2006年、そのなかの1社であるゲーム内広告企業のマッシブ・インコーポレーテッド(Massive Incorporated)を買収したが、最終的には2010年に同社の事業を終了させることになった。これを境に、ゲーム内広告業界は暗黒期に突入した。

ゲーム内広告企業のプレイヤーワン(PlayerWON)でプレジデントを務めるデイブ・マッデン氏は次のように語る。「2010年の再来だ。我々はいま、テクノロジーやデジタル、広告に関するあらゆることの驚異的な活況という好機の窓を開けつつある。確かにいい話に聞こえるが、果たしてそれができる企業が10社あるかどうか、私にはわからない」。

今回は、状況が一変している。ゲームはニッチな趣味から主流のポピュラーカルチャーへと変貌し、世界のゲーマー数も数十億人規模へと膨れ上がっている。プログラマティック広告の台頭により、ゲームデベロッパーはブランド統合を彼らの世界へ直接ハードコード化しなくてもよくなった。マイクロソフトやソニーはゲーム内広告部門を独自に立ち上げると言われており、業界内のゲームデベロッパー各社もそれに倣おうとしている。

「広告主に対し、程度の差はあるが、『御社が求めるすべてのオーディエンスにリーチできます』と言えれば、それはM&Aの正当性とは別として、言えないよりは効果的だろう」と、モバイルゲームデベロッパーのファンプラス(FunPlus)で最高ビジネス責任者を務めるクリス・ペトロビック氏は言う。「モバイルゲームデベロッパーのあいだでは、ゲーム内広告に対する関心は依然として高まり続けている」。

[原文:Why acquisitions could be the inevitable future for embattled in-game ad companies

Alexander Lee and Ronan Shields(翻訳:ガリレオ、編集:分島翔平)

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