TikTok のトップ・インフルエンサー、皮膚科医がついに遠隔医療スタートアップに参加

DIGIDAY

TikTokで1800万人近いフォロワーを持つ皮膚科医のムネーブ・シャー医師の元には、ブランドコンテンツで彼と組んで仕事をしたいという遠隔医療のスタートアップから頻繁に話が来る。だが、彼は慎重な姿勢を崩さない。

「昨年1年間で、6、7社の遠隔皮膚科企業が私に接触してきた」と彼は言った。

シャー医師はそうした話を断るという選択をした。2年前には、そのうちの1社が正式な皮膚科医の資格を持つ医師を採用していると知り、一緒に仕事をしたことがある。ところが、その会社はビジネスモデルを変更し、皮膚科医でなくてもオンラインで皮膚の治療の処方ができるようにし始めたため、彼はその会社との契約を終了することにした。

「そうしたプロセスには、正式な皮膚科医が関わるべきだと強く思っている」とシャー医師は述べた。

昨年、彼は遠隔皮膚科プラットフォームのコルティナ(Cortina)から、スポンサードコンテンツに関する打診を受けた。同社はハーバード・メディカル・スクールの教授が設立してまだ7カ月のスタートアップで、正式な皮膚科医を起用するというその姿勢に感銘を受けたシャー医師は、投資家および取締役として参加することにした。現在、彼は同社のメディカルコンテンツ・アドバイザーとして、TikTokを中心としたソーシャルコンテンツに関するアドバイスを行っている。

フォロワーが信頼するのは、正式な免許を有する専門家

コルティナの創業者でCEOのリード・マクレラン博士は、シャー医師のフォロワー数と専門性に目を留めたと語る。「我々は皮膚科の専門家と一緒に仕事をしたいと考えている。シャー医師のフォロワーが彼を信頼しているのは、彼がその分野で正式な免許を有する専門家だからだ。印刷物からデジタル、TikTokまで、あらゆる形態のメディアでメッセージを共有するには、適切な人物と一緒に仕事をすることが重要だ」。マクレラン博士は、現在ハーバード・メディカル・スクールの非常勤教授を務めるほか、ボストン小児病院で先天性異常の治療を行う外科医でもある。

アポストロフィ(Apostrophe)やナークス(Nurx)といった複数の遠隔医療プラットフォームが、サービスを売り込むためにTikTokの強力なスキンフルエンサーを利用している。そうしたインフルエンサーには、皮膚科医、エステティシャン、自分が試した製品のレビューをシェアする個人など、スキンケアに焦点を当てたさまざまな人物が含まれる。マクレラン博士は、最初のコンテンツパートナーシップでは、正式な免許を持つ皮膚科医との協働が重要だと述べたが、同社は将来的にはほかのタイプのTikTokインフルエンサーとスポンサードコンテンツを行うことも視野に入れている。

遠隔医療はビジネスだが、ヘルスケアでもある

多くの消費者がTikTokで皮膚科医に注目するのは、高額な費用や長い待ち時間など、従来の皮膚科医にかかる上でのハードルも理由となっている。シャー医師によると、彼のフォロワーは頻繁に肌の状態を写真に撮ってはDMで送ってきて、医療的なアドバイスを求めるという。

対面診療にはこうした障壁があるため、パンデミック後に社会が再開しても遠隔医療への関心は依然として高い。2022年2月のマッキンゼー(McKinsey)の調査で、調査回答者の40%がパンデミック後も遠隔医療を利用すると答えており、60%が対面診療よりも便利だと言っていることがわかった。

しかし、医師は消費者よりも遠隔医療に警戒心を抱く傾向がある。マッキンゼーの調査では、患者の55%が対面診療よりも遠隔診療の方が「かなり満足を得られた」と答えているのに対し、遠隔診療が患者の体験を改善できると考えている医師は32%に留まっている。

「多くの医師と業界関係者は、変化に対して懐疑的だ」と、シャー医師は医療業界について語った。「どの業界でも、技術的なディスラプションが起こるときはいつも、その業界で昔から受け継がれてきた場に属している人々は懐疑的になる」。

だが、シャー医師は、一緒に仕事をする企業に対しては引き続き高い基準を求めていくという。

「人はよい治療の受託者になる必要がある。(遠隔医療は)ビジネスだが、ヘルスケアでもあるのだ」。シャー医師は、ケアの標準が損なわれることがないように、このふたつの側面の「バランスをとる」必要性を指摘した。

遠隔皮膚科診療の大きな成長の可能性

コルティナには、生検が必要になりそうな症状など、オンラインでの診療が適切でない場合、診療所で治療を行う皮膚科医を紹介するネットワークがある。現在のところ、同プラットフォームで診療するのは、ニキビ、酒さ、色素沈着、男性の脱毛、女性の脱毛の5つの症状のみである。マクレラン博士いわく、バーチャルでの診療が可能な症状は「ざっと3000ほど」あり、同社は将来的にその数を増やしていく計画だ。

このスタートアップの今後のソーシャルコンテンツは教育に注力したものになる予定で、シャー医師は、まずはプラットフォームのために酒さとニキビの違いについてのコンテンツを作成中である。

マクレラン博士は遠隔皮膚科に大きな期待を寄せる。遠隔皮膚科は、小さな皮膚トラブルの治療をより効率化し、対面での治療が必要な人のために対面診療の時間をより多く確保することを目的としていると博士は言う。「今後5年で、遠隔医療、特に遠隔皮膚科の分野において非常に大きな成長の可能性があると考えている。なぜなら医療において、皮膚科は画像ベースの分野だからだ」と博士は述べている。

[原文:TikTok’s top dermfluencer Muneeb Shah joins telehealth startup]

LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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