広告支出 減少も、広告主は実験用予算を確保し続ける:「テストと学習を継続することが最善の利益となる」

DIGIDAY

経済の先行きが不透明ななかでも、広告主は積極的に実験的な広告費を支出している。広告費は全体的に減少しているが、エージェンシーはクライアントに予算を維持し、TikTokのような新しいチャネルや、デジタル動画やストリーミングオーディオのような彼らには馴染みのないチャネルでテストと学習を行うようアドバイスしている。

広告費がこれまで以上に厳しく監視されるなか、ブランドはブランド認度度を高めるために、費用対効果が高く、比較的新しい方法を模索し続ける必要がある。特に、各種のデータプライバシー措置の影響により、従来のパフォーマンスマーケティングチャネルの効果が低下していることが証明されているなかではそうなる。

Googleの崩壊寸前のCookie対策からAppleの「iOS 14」アップデートまで、過去18カ月間にわたるデータプライバシーの展開により、ターゲティングと測定は混迷を極めている。この変更により広告主は、消費者にリーチする新しい方法を見つけるために奔走させられている。

広告予算は減少もテストは続行

広告主たちは、Hulu、YouTube、そしていまではNetflix、TikTokなどの広告付きストリーミングサービスやその他のメディアチャネルを含む、より多くのブランド認知チャネルをテストすることでそれを実現している。そのテストと学習の予算を維持する目的は、彼らの卵が1つのカゴに収まらないようにすることであり、メディア費用を多様化させることにある。

広告エージェンシーのフィッツコ(Fitzco)では、クライアントの広告予算の通常10~15%がテストと学習に充てられると推定している。広告予算は全体として、横ばいもしくは5%減で推移している。それでも、フィッツコのメディア担当責任者、クレア・ラッセル氏は、経済情勢が不安定ななかでも、予算の10~15%を実験的取り組みのために確保し、テストと学習を継続することはクライアントにとってはほぼ必須事項であると述べる。

ラッセル氏は電子メールのなかで次のように説明している。「我々は、包括的な学習課題に合わせることで、実験的な取り組みをできるだけ保持しようと努力している。予算が横ばいから減少している場合でも、クライアントは楽観的な見通しを持っており、実験的な取り組みに寛容であることがわかる」

フィッツコのクライアントは過去に、ストリーミング動画広告を活用したことがあるが、その規模はごくわずかだった。最近では、YouTube、ディズニープラス(Disney+)、Huluなどのプラットフォームへの投資が増えている(ただし、ラッセル氏は正確な支出額は明らかにしていない)。「彼らは、どうすれば動画で異なるクリエイティブができるか、どうすればより多く(広告予算を)使えるか、どうすればブランドリフトなどを検討し始めることができるかについて考えている」とラッセル氏は言う。

消費者がいる場所へ投資する

一方、独立系メディアエージェンシーのオーシャンメディア(Ocean Media)の最高顧客責任者、クリントン・フレッチャー氏によると、ストリーミングオーディオだけでなく、ポッドキャスト広告でも顧客が増加しているという。その理由は、これらのサービスを利用する消費者が増えたためだという。

投資先の大半は、パンドラ(Pandora)、Spotify(スポティファイ)、ラジオネットワークのアイハート(iHeart)だ。「我々が気づいたことは、消費される場所こそが、テストや学習、そして最高の学びを得ることができる場所だということだ」とフレッチャー氏は話す(フレッチャー氏は正確な数字を示さなかったので、テストの内容がどのようなものかは不明だ)。

広告費は、景気の不透明感からより厳しく監視されるようになり、業界全体で減速している。イーマーケター(eMarketer)は、2023年の米国の広告費は2790億ドル(約36兆7100億円)に達すると予測しているが、これは、インフレ、オンライン広告の成長鈍化、そしてデータプライバシーの変更によって、2022年3月の当初の2840億ドル(約37兆3700億円)という予測値から減少している。ソーシャルメディアはこれらの変化の影響を受けると予想されるが、CTVは好調が予想されると、報告書には書かれている

テスト予算の効率性

クライアントの多くが効率化を求めているが、必ずしもテストを減らしたり、テスト予算を減らしたりしたいわけではない。その代わりに、クライアントは、まだ減速していないオーディオや動画ストリーミングのように、測定とアトリビューションが容易なチャネルを求めている、とフレッチャー氏は付け加える。

「我々のクライアントとブランドはすべて、効率化のための新しい手段を見つけようとしている」とフレッチャー氏は言う。「KPIがレスポンスであれ認知度であれ、彼らは新しい機会を探している」

しかし、メタバース、暗号通貨、仮想現実(VR)といった新興プラットフォームの試みは、いまのところ棚上げされているか、プロモーションキャンペーンやホリデーマーケティング、その他の一時的なイベントの際に限定的にテストされているのが実情だ。これは、Web3には未知の部分が多く、そのため学習曲線が急であることが主な原因だ(メタバースへの懐疑論についてはこちらを参照)。

「ブランドは、最も測定可能で最高の機会だと思うものに、確実に資金を投じることができるようにしたいと思うだろう」とフレッチャー氏は述べる。

「テスト」を正当化するのは困難だが

しかし、課題は、パンデミックの最盛期に見られたオンラインショッピング、ひいてはデジタル広告の成功と、今日の実験的チャネルの成功とを比較しないよう、クライアントを説得することだろう。

ラッセル氏は次のように話す。「これらの比較において勝つのは難しく、それが機能していないように見えるために、テストを正当化するのは難しくなる。我々はみな、リアルタイムの、そしてほぼ最後のクリックのパフォーマンスに執着しており、それがもたらす下流への影響において、ブランドの支出の一部を正当化するのは難しい」

クライアントが、オーディオやストリーミングなど実験的なブランド認知チャネルに戻ることに乗り気でないわけではない。しかし、それには、パートナーとなるエージェンシーからより多くの指導と手助けを受ける必要があるということだ。「すべてがリアルタイムでもたらされるわけではない。また、すべてが1対1になるわけでもない」とラッセル氏は付け加える。

最終的には、テストと学習を継続することがブランドにとっての最善の利益となると専門家は言う。特に、経済情勢の不安定性が懸念されるいまは、混雑度を増すメディア情勢のなかで十分際立つために、早期にテストと学習を行うことが必要だ。

電通クリエーティブでエクスペリエンス担当プレジデントを務めるアンドリュー・カスプシツキ氏は、米DIGIDAY宛ての電子メールでの声明のなかでこう書いている。「従来定義されていた『広告予算』は間違いなく削減されるだろうが、聡明な人々はその削減分をイノベーションと実験の推進に回すだろう」

[原文:Why advertisers are still making space for experimental budgets even with economic uncertainty

Kimeko McCoy(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:分島翔平)

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