【インタビュー】ゴルフ大手の テーラーメイド 、D2Cを強化中:「ほかのチャネルでは行えない独自サービスを行う」

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あらゆる規模の小売業者が、自社が営業しているカテゴリーに合わせた自社のD2C戦略の形を見つけ出そうと試みている。大手ゴルフ用具業者のテーラーメイド(TaylorMade)も例外ではない。

同社は5月1日、2012年に7000万ドル(約95億2000万円)で獲得したゴルフクラブのブランド「アダムス(Adams)」を、オンラインのみで販売するD2Cブランドとしてリニューアルした。これは同社のD2Cへの最大の投資のひとつだ。アダムスをD2Cブランドにした目的は、ゴルフをはじめたばかりで、新しいクラブの商品ラインを買うためにプロ用ショップを訪れるのに億劫な人々が買い求めやすいブランドにすることだ。さらに、この商品ラインは同社の中核の商品ラインよりも安価だ。たとえばアダムスのウェッジは最低価格が99ドル(約1万3500円)ほどなのに対して、テーラーメイドのウェッジは最低で119.99ドル(約1万6300円)ほどだ。

「どのようなD2Cブランドも、成功のためには、十分に対応できていなかった態度、価値観、行動を持つ人々のグループにリーチおよび再リーチできることが必要だ」と、テーラーメイドと共同でアダムスのリブランドを手がけた代理店、ブリッシュ(Bullish)のマネージングパートナーであるブレント・バルタン氏は語る。

しかし、テーラーメイドがD2Cへの参入を試みるのは、アダムスのリブランディングが初めてではない。同社のD2Cおよびデジタル担当バイスプレジデントを務めるジョン・ゴンザルベス氏は、ゴルフ大手である同社は過去10年間にわたってD2Cに投資してきたと語る。

同社のD2C戦略は、リーチしようとする顧客や、営業している地域によって異なる。本格的なプレイヤー向けには、ショットの追跡と分析を支援するアプリ群を開発した。一方、アジアでは、自社独自の小売店舗を数多く保有している。

これらの取り組みすべてを結びつけているのは、ゴルファーたちとより密接な結びつきを持ち、「ほかの流通チャネルでは大規模に行えないような独自のサービスを行う」という目標だ。

ゴンザルベス氏は、同社のD2C戦略についてさらに詳しく米モダンリテールに語った。この対談内容は明瞭化と簡素化のため編集を加えたものだ。

テーラーメイドはどのような理由から、D2C事業の構築に関心を抱いたのか?

私はこの事業に10年以上従事してきた。そして、ゴルフ事業の流通はかなり分散している。我々がグリーングラス、またはゴルフのプロと呼ばれる人が数多く存在する。米国には3万のゴルフコースのネットワークがあり、全世界ではさらに多い。当社はゴルフショップを通して、それらのコースで商品を販売している。ディックススポーティンググッズ(Dick’s Sporting Goods)やPGAツアー・スーパーストア(PGA Tour Superstore)のような大手小売店でも販売している。そのほかにも、コース外の小売店など、さまざまな小売チャネルが存在する。

これは、より大規模でマクロなものだ。消費者がブランドと関わる方法が以前から多様化していたのは知っていた。

ゴルフはわりと技術的なスポーツだが、商品を消費者に直接販売することは、どのような点で特殊だと感じているか?

人々は、見た目やセットアップ、打撃の音や感触など、道具に非常にこだわる。そのため、それをオンラインに反映させることは明らかに困難だ。我々はそのプロセスを簡単にするために、商品の提供や、カスタマイゼーション、オンラインツールについて検討している。

15~20年前なら、この商品はオンラインで販売できないと言われただろう。しかし、現在ではオンラインで販売できない商品はない。

我々の業界では、ゴルフは実際に出向いてクラブのフィッティングをする必要があると述べてきた。オンラインでこれを行うのは非常に難しい。しかし、当社には、バーチャルフィッティングや、オンライン上のツールやレコメンド機能など、それを容易にするツールやサービスがある。

当社はD2Cに参入するために、まず、我々のすべての商品をオンラインで揃えることから始まった。次に、当社が提供しているすべてのカスタムオプションをアピールした。これはつまり、当社ブランドをもっとも良いイメージで見せ、ゴルファーが当社の商品すべて、あるいは、すべての商品の組み合わせを見られるようにするということだ。

御社の最新の発表は、アダムスのゴルフ用品をオンラインのD2C専用ブランドとして再スタートするというものだった。この決定を行った理由を教えてほしい。

その発端は、過去3~4年間、Covidによって起きたことだった。短い期間において、ゴルフは屋外で安全に行えるわずかな娯楽のひとつだった。当社はこの3、4年のあいだに、何百万人ものゴルファーが新しいゴルフをはじめたり、戻ってきたりするのを目にした。

その結果、ゴルフを始めたばかりの人、ゴルフに熱中し始めた人が数多く存在するということがわかった。あるいは、15年くらい前にゴルフをプレイしていたが、世の中で起こっていることをきっかけにゴルフコースに戻ってきたという人々もいる。そして今、これらの人々は「またゴルフを楽しむようになったので、新しい道具が必要だ」と考えているということでもある。

現実には、新規ゴルファーや、戻ってきたゴルファーは、自分の選択肢について多くの障害に直面する。我々は、消費者に直接販売することで、その障害を減らすことができると考えた。

アダムスをD2Cブランドに移行し、クラブをオンラインで購入できることを人々に知らせるために、どのようなプロモーションを行うのか?

ソーシャルチャネルを通して直接行う。オンライン広告やディスプレイ広告など、我々にとってコアで限られたゴルフメディアの枠から踏み出すということだ。

当社が対象にしているゴルファーは、ゴルフをプレイするが、ゴルフ以外のことをしないわけではない。常にゴルフチャネル(Golf Channel)を見ていたり、ゴルフダイジェスト(Golf Digest)を読んでいたり、そのほかにも我々が従来重視してきた場所にばかりいるわけではない。

テーラーメイドを完全に離れるわけではない。当社はテーラーメイドとしてTikTokにも多くのフォロワーが存在する。しかし、それは我々の中核ではない。また我々の主な業務ではない。あくまで補助的なものだ。アダムスのブランドでは、主な認知の推進方法として、TikTokやインスタグラムをより多用していくだろう。

アプリ戦略についてもっと話してほしい。最初に実験したのは何で、成功を収めたアプリは何か?

5、6年前だったと思うが、データを使って自分のプレーをより深く理解したいという人たちからの意見に基づいて、統計追跡アプリのようなものを発表した。

このアプリは当時、マイラウンドプロ(My Round Pro)という名前だった。ショットごとにラウンドを追跡するもので、使用したクラブ、ゴルフコース上の場所、フェアウェイやラフのコンディションなどを追跡する機能があった。そして、ゴルフ用語でストロークスゲインドを計算して教えてくれる。

それから1年半ほどすぎたごく最近、マイテーラーメイドプラス(MyTaylorMade+)というアプリを開始した。これにはラウンドのトラッキング機能、バーチャルコーチング機能を搭載しており、スイングをアップロードすると、24時間以内に実際のPGA(プロゴルフ協会)のコーチから、注釈や解説、プレイヤーが取り組む演習など、リアルなフィードバックを受け取ることができるものだ。

これについては、利用状況のすべてをここで明かすことはできない。しかし、このマイテーラーメイドプラスアプリはGoogleとAppleの両方で数十万回もダウンロードされた。そして、我々が誇りに思っているのは、このアプリで記録されたショットが、4000万回以上を記録していることだ。

アジアに直営店があるという話だったが、なぜその地域で独自の小売を開始したのかが気になる。購買力だけが理由なのか?

アジアでは、小売店舗で直接買い物をする消費者が多い。アジアでは、テーラーメイドのブランドでアパレルを販売しているが、これは欧米市場では行っていないことだ。

アジアにおいて、ゴルフはファッションや文化に関して、米国とは異なる地位を占めている。私がゴルフ用の服装をするときは、ドレスダウンするか、カジュアルな服装にする。しかし、アジアではゴルフをするのがステータスで、それ自体がファッションであり、名声となり、特別な地位を示す。そのため、流通も大きく異なっている。

[原文:How golf giant TaylorMade is building out its DTC business]

Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via TaylorMade

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