2022年の ビューティ業界 を決定づけた5つの瞬間とその重要性を解く

DIGIDAY

2022年は美容とウェルネス業界にとって、相変わらず忙しい1年だった。「美容」の定義は何年も前から徐々に拡大しているが、2022年にはセクシャルウェルネスを包含するようになった。2022年の美容業界を象徴する5つの出来事と、それがなぜ重要なのか、その理由を詳しく紹介する。

2022年は美容とウェルネス業界にとって、相変わらず忙しい1年だった。「美容」の定義は何年も前から徐々に拡大しているが、2022年にはセクシャルウェルネスを包含するようになった。セフォラ(Sephora)はそれを「インティメイトケア(Intimate Care)」、アルタ・ビューティ(Ulta Beauty)は「インティメイトウェルネス(Intimate Wellness)」と呼ぶ。どちらの小売業者も2022年にはバイブレーターと潤滑剤を品揃えに加えている。また、数え切れないほどの企業買収も行われ、特に「クリーン」分野での動きに注目が集まった。そして、とりわけグロシエ(Glossier)がセフォラに参入すると発表したこともあり、2022年はD2Cの終焉を迎えたと言う人もいるだろう。顧客獲得コストが上昇し、iOSのアップデートが売上に影響を与えることが大きな議論を呼ぶなかで、ブランドが自社製品の販売方法の多様化を選択したのは驚くにあたらない。そして最後に、セレブリティ・ブランドは引き続きいたるところに存在しているが、それに対する反発もある。キム・カーダシアン氏のスキンバイキム(SKKN by Kim)のデビューからブラッド・ピット氏のル・ドメーヌ(Le Domaine)のローンチまで、さらに多くのスターが美容分野に参入しており、TikTokerや美容ブランドの創業者たちがすぐさま反応している。以下では、2022年の美容業界を象徴する5つの出来事と、それがなぜ重要なのか、その理由を詳しく紹介する。

セクシャルウェルネスが全米の小売に進出

2月、セフォラのバス&ボディ・カテゴリーに、セクシャルウェルネスブランドのモード(Maud)とデイム(Dame)に特化した「インティメイトケア」コーナーがデビューした。ローンチされた製品は、バイブレーターはもちろん、そのほかマッサージキャンドルやバス用品、潤滑剤などである。セフォラのアプローチは、セクシャルウェルネス・カテゴリーで勝負する他の小売業者とは異なり、たったふたつのブランドでスタートしており、その2社が作る合計約30種類のほぼすべての製品を販売している。グープ(Goop)やバイオレットグレイ(Violet Grey)のような小売業者は、早くからセクシャルウェルネスの商品化に取り組んでいたが、米国内で最大級の有名美容小売業者のひとつがこのカテゴリーを取り入れたのは、決定的な出来事となった。この動きはすぐにトレンドとなり、アルタ・ビューティは9月に独自のインティメイト・ウェルネスの品揃えを発表、これはアルタの大規模なウェルネスの品揃えにおける6番目の新たな柱となっている。アルタの製品には、フロリア(Foria)、ヴァッシュ(Vush)、アンバウンド(Unbound)、スマイルメイカーズ(Smile Makers)、クレイブ(Crave)といったブランドによるボディオイルやプレジャーオイル、潤滑剤、バスソルト、セクシャルウェルネス器具などがある。ローンチ時には、合計35種類の製品を販売した。セフォラとアルタ・ビューティは、これらの製品をeコマースチャネルで独占販売しているが、両社のこれまでのカテゴリー展開に沿って、近い将来には店頭に並ぶ可能性がありそうだ。

クラランスの親会社がイリアを買収

クリーンメイクアップブランドとして早くからその名を知られているイリア(Ilia)だが、2月に行われた買収は、クリーンメイクアップカテゴリーにとって先駆的なものだった。買収したのは、ブランドのクラランス(Clarins)も所有しているクルタン=クラランス家の持株会社ファミーユC(Famille C)である。買収当時、創業12年となるイリアは2021年に約1億ドル(約132.5億円)の売上を達成しており、この売上高はしばしば買収の主要ターゲットとしてブランドを位置づけるマイルストーンとなっていた。Glossyが以前報じた内容によれば、イリアのCEOであるリンダ・バーコヴィッツ氏は、同社の売上の50%以上をコンプレクション製品が占めており、新規顧客の50%以上が同ブランドのスーパーセラムスキンティント(Super Serum Skin Tint)を購入すると述べている。さらに、イリアの「忠実な」顧客は、5種類以上の同社の製品を使用している。バーコヴィッツ氏いわく、イリアは「ミレニアル世代とその母親」という幅広い顧客層を抱えている。

「(イリアの買収は)、さもなくば懐疑的に思われるかもしれないときに、環境や社会、ガバナンスを重視する企業のビジネスモデルの正当性を証明するものだ。また、大企業がESGの目標(への注力)が将来の成長につながると考えていることを示唆している」と、フォレスター(Forrester)の小売アナリスト、サッカリータ・コダーリ氏は言う。ファミーユCは以前、主に敏感肌の人を対象としたクリーンなスキンケアブランドで英国を拠点とするパイスキンケア(Pai Skincare)に投資を行っている。また、ロウレスビューティ(Lawless Beauty)、ウェストマンアトリエ(Westman Atelier)、LYSビューティ(Lys Beauty)、コーサス(Kosas)、セイ(Saie)など、買収対象として考えられるクリーンメイクアップブランドはほかにも多々ある。イリアのイグジットは、こうしたブランドのイグジットの可能性を立証したに過ぎない。

グロシエがセフォラとの卸売りに参入

グロシエの製品がセフォラの棚に並ぶようになるのは2023年初頭だが、この有名かつ不動のD2Cブランドによる発表は、美容業界とD2C消費者業界の双方に波紋を投げかけた。技術部門のレイオフ漠然と理解されていたコミュニティ重視のプラットフォームからの戦略的な方向転換、CEOで創業者のエミリー・ワイス氏の退任、初のセレブリティブランドアンバサダーとして歌手のオリヴィア・ロドリゴ氏の任命など、グロシエにとっては波乱の1年の集大成となった。だが、D2Cモデルを早くから主唱してきたグロシエがセフォラに進出したことで、卸売り小売の覇権と価値が再確認されることとなった。それはまた、D2Cの没落の重要な転機でもある。オンライン広告費と顧客獲得コストの上昇、さらにAppleのiOSのプライバシー規則による新たな広告ターゲティング問題で、D2Cは過去2年間苦戦してきた。かつてのD2Cブランドの多くは、現在では単に「デジタルネイティブ」とみなされている。そのなかには、ヒムズアンドハーズ(Hims and Hers)、ハリーズ(Harry’s)、ヒーローコスメティックス(Hero Cosmetics)などがある。

セフォラの拡大により、グロシエは多くの新たな顧客にリーチする機会を得た。グロシエの顧客は、セフォラでグロシエの製品を購入しながら、セフォラのビューティインサイダー(Beauty Insider)プログラムにも参加できるようになり、ショッピングでさらによいインセンティブが得られることになる。グロシエはポイントプログラムを提供しておらず、年に数回の割引セールを開催するのみだ。

キム・カーダシアン氏が自身の美容の帝国をリローンチ

6月末、キム・カーダシアン氏がスキンバイキムをローンチ、これはカーダシアン氏のミニマルでニュートラルな色調の家を思わせるパッケージに収められた、9点のスキンケア・コレクション(合計金額575ドル、約7万6300円)である。2021年7月にKKWビューティ(KKW Beauty)を閉鎖し、KKWのフレグランスとメイクアップコレクションの販売を停止して以降、今回、カーダシアン氏の次の時代の姿を初めて目にすることになった。2020年、コティ(COTY)はカーダシアン氏の美容事業の株式20%を購入している。このブランドの背後にある名前がキム・カーダシアン氏であることから、さまざまな強い意見が寄せられ、ハッシュタグ#skknbykimは、TikTokで8600万ビューとなっている。特にその「リフィル」のシステムは、元の製品とほぼ同じ材料を使用していると批判を浴びている。カーダシアン氏はメイクアップとフレグランスのコレクションをリローンチする予定で、すべてひとつの会社の傘下で買い物できるようにすると過去に明言している。

セレブリティによる美容ブランド疲れ、我慢の限界に

9月末、ブラッド・ピット氏の美容ブランド、ル・ドメーヌが『ヴォーグ(VOGUE)』で発表された。そのインタビューのなかで「日頃からスキンケアのよいルーティンがあるか?」という質問に対し、彼は長い沈黙の末に「ない」と答えている。その前日、トラヴィス・バーカー氏は自身のブランドであるバーカー・ウェルネス(Barker Wellness)のスキンケアに特化した展開について発表していた。その直後の10月中旬には、ジャレッド・レト氏が自身のスキンケアコレクションとなるトゥエンティナイン・パームス(Twentynine Palms)を発表している。その反発は大きく、美容ブランドの創業者たちのグループが「notanothercelebritybrand.com」というURLを立ち上げるほどだった。ただしそのサイトは現在は「工事中」となっている。創業者たちが作ったそのウェブサイトは、「ビューティインディペンデント(Beauty Independent)」や「デイズドビューティ(Dazed Beauty)」などのメディアで取り上げられた。デイズドビューティは、次のように書かれた紹介状の一部を引用している。「親愛なるセレブの皆さんは、この業界では何の経験もない。我々はあなたがたの業界に気軽に参入して、映画に出演することはできない。もしそれが可能なら、ぜひそうしたいものだ。そうすればあなたたちにも、これがどんな気持ちなのかがわかるだろう」。セレブリティの美容についてどう感じるかはともかくとして、この分野へのローンチは衰える気配がない。2022年にはシアラ氏がOAM(「on a mission」の略)というスキンケアブランドをローンチ、ペイトン・リスト氏はプレイビューティ(Pley Beauty)を、イドリス・エルバ氏とサブリナ・エルバ氏はセーブルラボ(S’able Labs)をローンチしている。そしてよくも悪くも、2023年にはさらに多くのブランドがデビューする予定だ。

[原文:5 defining beauty industry moments of 2022]

EMMA SANDLER AND SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)


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