明るい未来、という表現はやや陳腐だが、2022年はコロナ禍を踏まえて次のフェーズに進む「新たな1年」になると、誰もが考えていたのではないだろうか。
しかし、ロシアによるウクライナ侵攻をはじめ、世界的な景気低迷とそれに伴う広告・メディア支出の混乱など、波乱に満ちた1年となった。DIGIDAY[日本版]恒例の年末年始企画「IN/OUT 2023」では、 DIGIDAY[日本版]とゆかりの深いブランド・パブリッシャーのエグゼクティブや次世代リーダーに、2022年をどのように受け止め、2023年にどのような可能性を見出し、新たな一年を切り開いていこうとしているのか伺った。
ロケットニュース24を運営する株式会社ソシオコーポレーションにて、メディア事業部・Managerを務める瓦野晋治氏の回答は以下のとおりだ。
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――2022年を象徴するトピック、キーワードを教えてください。
メディア事業の収益規模が、2019年水準に戻ってきたことに安堵しました。編集部の尽力で読者の熱量は高く、アクセス指標が好調なことを背景に、タイアップは新規、継続とも発注も増え、運用型広告はRPM(1000PVあたりの収益)が低迷しているもの、総収益は良い状況です。
一方で記事メディアを取り巻く環境は、ますます厳しさが増しています。動画がインターネットを席巻し、接触の頻度と時間が増え、また、個人の発信した情報が多くの人に届きます。ウェブは存在感を減らし続け、スマートフォンでブラウザアプリを立ち上げて能動的に閲覧する機会はほとんどないのではないでしょうか。
そのような環境でも、媒体社は個人よりもはるかに多くの資本を注ぎ込んでいます。
「個人発の情報よりも圧倒的に求められているか?」
今年もこの問いに対峙し続ける1年でした。
――2022年にもっとも大きなハードルとなった事象は何でしたか?
嫌悪感を引き起こすのはプライバシー懸念よりも、もっとプリミティブな問題の影響が大きいのではないでしょうか。
ネット全体に不快なクリエイティブとLP、法的にも問題のありそうなものが変わらず溢れています。ウェブでは、サイト訪問、離脱時やリンク遷移時の全画面表示等、ブラウザが期待通りに動作しないフォーマットに高頻度で遭遇します。
当社メディアでは、そのようなクリエイティブ、LPの案件は配信されないよう、日々のメンテナンスでブロックし、UXを毀損しそうなフォーマットは導入しないようにしています。アドブロッカーの利用が増えたり、ウェブが忌避されたりしないよう、業界の取り組みとして、UXと収益のバランスを追求することが何よりも大切だと考えます。
――2023年に必ず取り組むべきだと考えていることは何ですか?
2022年と同じ、この3つが最大のミッションに変わりありません。
1. 新規読者の獲得と来訪頻度の向上
2. 読者一人ひとりの熱量を増やす
3. 熱量を生かしたビジネス展開
3について、媒体各社が国内外で取り組んでいるチャレンジの状況を見聞きする限り、多くの媒体社が応用可能な決定打となるものはなく、今は各社が媒体特性に応じて創出するフェーズなのだと、自社のチャレンジを通じて改めて感じています。
危機感の背景には、運用型広告の収益が頭打ち状態になっていることが挙げられます。しかしながら、運用型広告はアクセスと収益が比例する貴重な収益源で、全てを代替できるビジネスを構築できるとも考えてはいません。ウェブが広告主にとって魅力的なものである限り、これからも出稿してもらえるはずです。
運用型広告とタイアップに並ぶ、メディア事業の柱になる可能性の種に出会い、育てていけるように、2023年も小さくチャレンジを積み重ねます。