破産脱却から3年 花の宅配 FTD は「包括的なギフト企業」へ

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花の宅配企業であるFTDは、破産を脱してから3年以上が過ぎ、商品ラインナップを多様化し、花屋が即日配達を簡単に行えるようにすることで、再度ギフトビジネスへの足掛かりを得ようとしている。

同社は今秋、ベイクドバイメリッサ(Baked by Melissa)およびミルクバー(Milkbar)との提携を開始し、顧客が花の注文にスナックを追加できるようにした。ほかのスイーツを加える計画も進行中で、同社は現在サースティ(Thirstie)と協働し、いくつかの主要都市でアルコール飲料の配達のベータテストを実施しており、来年初頭には全国展開する計画だ。そして舞台裏では、新しい注文システムや、Shopify(ショッピファイ)をベースとするプラットフォームにより、花屋がFTDからのオンライン注文を簡単にこなせるようにすることをめざしている。

これまでのところ、FTDは120億ドル(約1兆6400億円)規模のフラワーギフト市場に再参入することからも、この変化は実を結んでいるように見える。同社は感謝祭の休暇中において、注文数量が前年比で150%増加した。払い戻しは前年比で10%減少した。2022年10月の時点で、ハロウィンや新学期シーズンなどのお祝いで花以外の収益が前年比で50%増加した。しかし、このような成長は一夜でなし得たものではない。

花屋との関係修復

FTDは2019年8月に未公開株企業のネクサスキャピタルマネジメント・エルピー(Nexus Capital Management LP)の関連会社に買収され、破産を脱した。そして2020年3月、コロナウイルスのパンデミックにより米国全体でロックダウンや経済の停滞が起きたとき、チャーリー・コール氏がCEOとして指揮を執ることになった。

その後、同社が一新されたビジネス戦略を実行するまでの約2年間は、同社の運営基盤を立て直す作業が行われたと、コール氏は述べる。そのうちでももっとも重要なのは、FTDと配達サービスのために提携し不満を抱いていた、全国で9000以上の花屋の会員との関係を修復することだった。

コール氏は次のように述べている。「改善しなければならないことは非常に多く、腐った部分を切り捨てる作業が必要だった。破産から発生した問題のほとんどは当社が引き起こしたものか、システムの不良、引き渡しの不良、または会員への情報の不備によるものだった。これは、当社が改善する必要がある最大の課題だった。これを修正しない限り、カスタマーエクスペリエンスは良好なものにならなかっただろう」。

ナットとボルトの関係

FTDは100年近くにわたって花の配達サービスとして操業してきたが、2019年6月に破産を申請した。同社は2014年にプロフラワーズ(ProFlowers)を4億3000万ドル(約589億円)で買収し、それによって2億ドル(約274億円)の負債を抱え、苦境に陥っていた。また、ブークス(Bouqs)、ファームガールフラワーズ(Farmgirl Flowers)、アーバンステムズ(Urban Stems)などの機敏な新興企業が市場シェアを獲得するにつれ、競合が激化していく情勢にも直面していた。

そして致命的な要素として、FTDを使用している花屋と顧客はポジティブな体験を報告していなかったことだ。顧客からの支持を表す同社のネットプロモータースコア(顧客の忠誠心を-100から100の尺度で評価)は、4だった。現在ではこの数値が前の四半期より25%増加し、40中盤に達していると、コール氏は述べている。

不満の多くは、注文方法によって花屋が「不利な立場」に置かれることから来るものだったと、同氏は述べている。顧客はアレンジメントをオンラインで選択でき、FTDはその注文を配達地域近くの花屋とマッチングさせ、注文に応じる。

しかし、FTDのウェブサイトは、季節や在庫のパターンによっては、すべての場所にあるすべての花屋が対応できるとは限らない花のアレンジメントが表示されることもある。たとえば、シャクヤクは気候によっては季節が限定される。

コール氏は次のように述べている。「顧客がウェブサイトを訪れ、好きなブーケを見つけて『これが欲しい』と言った場合、アラスカのフェアバンクスからフロリダのキーウェストまで、どこでもそのブーケを作れる必要がある。言い換えれば、50州のどこでも材料の花が入手可能である必要がある」。

一度破産を経験し、花屋へのヒアリングを何百時間にもわたって行った結果、FTDはウェブサイトの表示を変更し、より季節感のあるアレンジメントを反映させるようにした。同時に、コロンビアとエクアドルの花のサプライヤーと新しい流通経路を作り上げ、花屋が現地の卸売から特定の種類の花を入手できないときに仕入れられるようにした。

「当社はSKUの設計まで立ち返り、注文が適切な方法でルート化されるようシステムレベルまで修正を加えた」と、コール氏は述べている。

新たな付加価値

会社の舞台裏がうまく機能するようになった後、2021年9月にはリブランド化が稼働した。

「人々に広める前に、確実にエクスペリエンス、ブランド、サイトを適切にする必要があった」と、コール氏は述べる。

新しいウェブサイトとロゴに加え、FTDのウェブサイトをShopifyに設置したことで、同社は花屋のための新しい小規模ビジネスeコマースサービスを開始できるようになった。

このシステムはマーキュリーオンライン(MercuryOnline)という名前で、2022年3月に開始され、会員である花屋は配達料金や終了時間を設定したり、店頭での引き取りを選べるようにしたりできる。このサービスはパーセンテージモデルを使用しているため、花屋は行った注文以外に支払う必要はない。

これによって、ほかの商品の卸売配送も可能になった。

コール氏は次のように述べている。「当社独自の方式からようやく脱却し、花に関する問題を修正して、次の目標について考えたとき、米国でもっとも急速に成長しているギフトのカテゴリーは、率直に言って、花ではないということに気がついた」。

同社は今秋、ベイクトバイメリッサおよびミルクバーと提携し、花とデザートを組み合わせて提供するサービスを開始した。これらの提携の目標は、最高クラスのデザートを見つけ、卸売配送ネットワークによって地元の花屋が利用可能にすることだと、コール氏は語る。

「当社は扱い品目を広げはじめており、花を扱う企業から、より包括的なギフト企業への変貌をめざしている」と、同氏は述べている。

最後までの実行

新しいビジネス戦略を実装し、顧客やサプライヤーとの関係を修復するのは、破産から抜け出した企業にとって一般的なやり方だと、モリソンフォースター(Morrison Foerster)のビジネス再構成および破産グループの弁護士を務めるセス・クレイマン氏は語る。

「このような企業の課題は、書類の上で裁判官にできると宣言したことを実際に行えるかどうかだ」と、同氏は述べている。

しかし、実際のストーリーは企業ごとに異なる。弁護士たちのあいだで俗に「チャプター22」と呼ばれているもの、すなわち再興計画に失敗し、二度目の破産申請を余儀なくされる企業もあると、同氏は語る。

クレイマン氏は、これらの企業の命運を分けるのは、企業を最初に破産へと追い込んだのと同じ過ちを避けられるかどうかにあると語る。また、企業はマクロ経済の状況や、商品やサービスが発売された時点で、それらに対応する存続可能な市場存在するかどうかにも影響を受けることがあると、同氏は述べている。

「これらの問題の多くは、管理の実行や、企業の資本構成に関連している。すべての資金を貸し手に戻さないように、企業は組織化された方法で負債を処理できるかどうかだ」と、同氏は述べる。

見出し

FTDにとって、破産から抜け出すことは、ギフト業界で何が起こっているのかに注視し続けることを意味する。

コール氏は、FTDが新興企業の競合他社に対して優位に立つことができたのは、同社の幅広いネットワークを利用した即日調達によって優位点を得られたことにあると述べている。アレンジメントは直送モデルを使用せず、現地で配達されると、同氏は語る。

また同氏は、商品の品揃えを拡充したことで、さらなる成長を遂げるだろうと予測している。スナックやアルコール飲料の配達は、同社が注目している主な成長分野だと、同氏は語る。また同社は顧客基盤を拡大するため、ケンタッキーダービー(Kentucky Derby)でのフラワーウォールによる広告や、AARP(米の巨大高齢者NPO団体)会員に割引を行うなど、ほかのブランドと提携することも模索している。

「当社はテクノロジーのソリューションからはじめた。現在は商品のためのソリューションと深く関わっており、花屋がほかの誰も入手できないようなものを手に入れられるようなパートナーシップを作り出したいと考えている」と、コール氏は述べている。

また同氏は、倒産後に発足した経営陣の功績について触れ、目の前の問題点を修正するために、企業が自らの非を認めることが企業に求められる回復力であるとしている。

「破産からの回復は気の重くなる作業だ。心底から使命を確信している人々が行う必要がある。そして当社の使命は、人々の人生の最良と最悪の瞬間を、少しでも良いものとすることだ」。

[原文:How floral delivery company FTD revamped its operations following bankruptcy]

MELISSA DANIELS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via FTD

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