ファッション業界 に悪影響を与えている3つのトレンド

DIGIDAY

ファッション企業は、一向に収束する兆しを見せない厳しい年度末と闘っている。レイオフやインフレによる経済見通しの悪化により、従来の小売環境では店舗の閉鎖が進行中だ。同時に、外部の人間が標準的な業界のフォーマットをよい方向へと刷新しているため、ブランドのあいだでは経営幹部レベルの停滞の拡大に対処する必要性が生じている。以下では、今年、業界に悪影響を及ぼすとされる3つの傾向を紹介する。

コスト削減のためのレイオフ

コスト削減のため、エバーレーン(Everlane)、H&M、PVH、ノードストロム(Nordstrom)など数多くのブランドが、最近10~15%の社員のレイオフを実施した。特にD2Cブランドが大きな打撃を受けており、ベーシックブランドのエバーレーンは社員175名のうち、17%を解雇、11店舗のうち3店舗のスタッフも削減している。エバーレーンが従業員を解雇するのは、この2年間で2度目だ。以前にも2020年3月に、組合つぶしによって数百人の小売およびカスタマーサービス従業員をレイオフしたと報じられている。

「スティッチフィックス(Stitch Fix)やエバーレーン(Everlane)のような、いわゆるディスラプターとされるいくつかのブランドは、D2Cビジネスモデルの妥当性に対する強い懸念に対処している」と小売アナリストのスティーブ・デニス氏は言う。「ブランドはTAM(総獲得可能市場)に対する根本的な過大評価に対応している。上場した企業は、最初に多額のベンチャーキャピタルの資金を獲得し、これらのビッグブランドは主にオンラインのみで構築できるという信念を掲げた。これは前提として根本的に欠陥のある投資であり、現在その報いを受けているにすぎない」。

D2Cファッションブランドは、かつてD2Cのみだった他のブランドの先例にならって販売チャネルを拡大している。グロシエ(Glossier)はD2Cのサクセスストーリーとして注目されていたが、昨年セフォラ(Sephora)との提携によりオムニチャネル化した。

ファッション業界におけるレプリゼンテーションの向上を目的とした非営利のインキュベーションプラットフォーム、ジ・アウトサイダーズ・パースペクティブ(The Outsiders Perspective)の創設者ジェイミー・ギル氏は、余剰人員は世界的に大きな打撃を与えるだろうが、業界が前向きに変化するための優先順位は下げるべきではないと述べた。

「混乱の時代には新鮮な視点を持つことが不可欠だ。したがって、多様なバックグラウンドを持つ人材を取り入れるべきだという主張は、さらに力を増す」とギル氏は言う。「パンデミックで学んだように、不確実な時代には、我々はビジネスリーダーとして深く掘り下げ、進化する消費者心理に適応するためにビジネスを再構築し、新たなビジネスの優先事項を強固にせざるを得なくなる」。

景気の見通し悪化による店舗の閉鎖

インフレ、景気後退、ウクライナ戦争によって市場は混乱し、2023年上半期の経済見通しは悪化している。小売企業が手元資金を蓄え、価値提案を再構築しようとする中で、無関係なコストは「人材」と「店舗」というふたつの分野に集中していると考えられている。パンデミック時に消費者はeコマースに注目し、続く2022年は店舗型ファッション小売業にとって好調な年となったが、ホリデーシーズンなど店舗における重要なショッピングイベントはインフレのせいで不調だった。現在、たとえばメイシーズ(Macy’s)はフルライン店舗のうち4店舗を閉鎖している。UBSのアナリストによると、コールズ(Kohl’s)やノードストロム(Nordstrom)などの百貨店も2023年に店舗を閉鎖する予定である。

「中程度の価格の百貨店の小売業者やブランドで、驚くほどの価値がなかったり、需要のないブランドは、すでに問題を抱えていることになる」と、デニス氏は言う。「H&Mのようなブランドは、市場での地位を正当化するのに苦労しているメイシーズやコールズ、JCペニー(JCPenney)ほど困ってはいないかもしれない。(市場が)少し平坦になったり後退したりすると、マーケットシェアと、いかに大きな取り分を手に入れるかがすべてになってしまう」。

経営陣の停滞

経済が変化するなかでブランドは優先順位を見直しており、多くのブランドが経営幹部レベルで変化を起こしている。ラコステ(Lacoste)では、ルイーズ・トロッター氏がクリエイティブ・ディレクターを退任し、集団クリエイティブモデルへと移行した。昨年は、GAPのソニア・シンガル氏、マッチスファッション(MatchesFashion)のパオロ・ド・セザール氏、リスト(Lyst)のクリス・モートン氏が、7月に経営幹部の地位を離れた。GAPリストはどちらもここ数カ月でレイオフを報告している。

エグゼクティブサーチおよびコンサルティング会社DHRグローバル(DHR Global)のグローバルコンシューマー&リテールプラクティス・マネージングパートナー、トリシア・ローガン氏は、過去1週間におけるCEOの交代を鑑みても、昨年の経営幹部の活発な交代劇は2023年も続くだろうと予想している。DHRグローバルのクライアントは、中堅の非上場企業から数十億ドル規模の上場企業までと幅広く、あらゆる分野で採用のニーズが高まっている。

「企業が第4四半期を終え、年初に変化が見られるのは珍しいことではないが、初期の指標では、動きが活発化することが示唆されている」とローガン氏は述べた。「経済の不確実性、オムニチャネルへの再注力、ESGの優先順位は多くの企業にとって最重要事項であり、最終的には新規採用や現職の変更につながる。今もっとも大きなふたつのチャンスは、革新的なリーダーに対するニーズと組織の再編成だ」。

従来の百貨店のリーダーでさえ、経営幹部の改革を検討する際に新鮮なプロフィールをターゲットにしはじめるだろうと、デニス氏は予想している。

「しばらく前から存在する従来の小売業者は、引き続きみずから経営管理しており、かなり慣習的な枠組みに適合するリーダーを探し続けている。そのため、より多様な経験を持つリーダーが必要な一部のブランドでは劇的な変革にはつながっていない」と彼は述べた。

[原文:3 trends negatively impacting the fashion industry]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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