貸しトラック企業Uホールの ソーシャル多様化戦略は成功するか:「ソーシャルは自社を伝えるのに、必ずしも最適な場とは限らない」

DIGIDAY

Uホール(U-Haul)は、トラックやトレーラー以外の製品およびサービスの認知度を上げたいと考え、多様なソーシャルメディアへのアプローチに乗り出した。

創業77年目の同社には、コンテナや収納ロッカーなど、引越っしに役立つ数多くのアイテムを提供。Uホールはそのメッセージを拡散するべく、TikTok、LinkedIn(リンクトイン)、ピンタレスト(Pinterest)、YouTube、Facebook、インスタグラムなどを通じて、それらプラットフォームで時間を費やす人々へのリーチに努めている。

「弊社の顧客は、大学入学を控えた若者から断捨離中のシニア世代、親を自宅に呼び寄せて同居を始めるZ世代まで多岐にわたる。人生のあらゆる段階にある人々が対象だ」と、Uホール・インターナショナル(U-Haul International)のローカルサーチおよびソーシャルマーケティング部門ディレクター、エルノラ・カニンガム氏は話す。「弊社の製品ラインおよびサービスは、個人の一生をカバーできるほど幅広い。それを人々に伝えるべく、動画やイメージ、ブログ、ウェブサイトなど、ソーシャルプラットフォーム上で可能なあらゆる戦略を駆使するストーリーテラーとなることが、我々の職務だ」。

2009年からデジタルには力を入れてきた

「1955年創業のUホール社内エージェンシーであるA&Mアソシエーツ・インク(A&M Associates Inc.)は、数年前からブランドロイヤルティ向上のためにソーシャルメディアの効果的利用に取り組んでいる」とカニンガム氏は説明する。その狙いは、同社が引越用のトラックやトレーラーの貸与だけでなく、収納設備の提供、箱類の販売、プロパンガスタンクや自転車ラックなどの貸与も行なっている事実を、顧客に確実に伝えることにあるという。

同社がソーシャルメディアにかけている予算については、具体的な数字を明かさなかったため定かでない。カニンガム氏は、Uホールという組織の各部門にそれぞれ予算があり、各部門が行なう各キャンペーンにもそれぞれ予算が組まれていると話す。

「印刷物に6000万から7000万ドル(約84億から約98億円)を費やしていたが、それはまた別の話だ」と、カニンガム氏は10年以上前の予算について話す。「当時はイエローページに広告を出す以外、何もしていなかった。だが2009年から2010年期にそれを改め、デジタルに力を入れはじめた。まずは予算をかけず、Google、Yahoo、ビング(Bing)、Facebook、インスタグラム、イェルプ(Yelp)などとの関係構築に力を入れた。その結果、多くと関係を構築できた。それ以来、長年にわたり、ディスプレイとテスト用チャネルの間を行きつ戻りつしている。支出は年によって異なるが、それまでの予算6000万ドル(約84億円)よりはるかに少ないことは断言できる」。

多様化したソーシャルメディアに、手を広げすぎとの指摘も

カンター(Kantar)のデータによれば、2022年の前期6カ月間、Uホールの広告費は76万7477ドル(約1億700万円)で、2021年同時期の19万3706ドル(約2700万円)から大幅に増加している。ただし、この数字にソーシャルメディア費は含まれない。パスマティックス(Pathmatics)のデータによれば、ソーシャルメディアおよびストリーミングへの広告支出において、Uホールは今年これまで32万8500ドル(約4500万円)を費やしており、内訳は月予算の51%がストリーミング、44%がデスクトップ動画、4%がFacebook、1%がインスタグラムとなっている。

ソーシャルメディアを通じてブランドロイヤルティの構築およびブランドアウェアネスの拡散の方法を探るのは、理に適ったアプローチだと、マーケティングの専門家らは話すが、効果を上げられるかどうかは、メッセージングの戦略およびフォーカス次第だとも指摘する。

「ソーシャルは自社が提供するものを伝えるのに、必ずしも最適な場とは限らない」と、パフォーマンスマーケティングショップ、テイク・サム・リスク(Take Some Risk)の創業者デュエイン・ブラウン氏は話す。「Uホールの場合、その製品およびサービスが引越関連問題の解決にどう役立つのか、明確に示す意図があれば、うまく行くかもしれないが」。

ブラウン氏はさらに、「多様化戦略は一理あるが、なかには手を広げすぎて手に負えなくなっているブランドもある」とも指摘する。「まずはどれか1つのチャネルから始め、その新戦略が功を奏すると証明できてから、手を広げるほうが得策なのではないか」とブラウン氏は続ける。「あれもこれもと手を出そうとするあまり、存在感をかえって薄めてしまい、ソーシャルという長距離走において、ほとんど前進できていないブランドが多すぎる。最近は大量のブランドがTikTokに群がっており、そのためコンテンツのハードルが1年前に比べてかなり上がっている」。

[原文:U-Haul diversifies its social strategy to tell people it’s more than moving trucks

Kristina Monllos(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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