スティッチフィックス、スタイリングサービスの需要減で苦戦:新規顧客への依存も裏目に

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サブスクリプション型のオンラインパーソナルスタイリングサービスであるスティッチフィックス(Stitch Fix)は、コスト高と、スタイリングサービスへの需要減少に直面し、苦境が続いている。

同社は過去1年間、同時に厳しい労働市場とサプライチェーンの問題に対処しながら顧客基盤を拡大するために苦闘してきた。第3四半期決算で、収益は4億9290万ドル(約665億円)、損失は7800万ドル(約105億円)であると報告した。一方、同社のアクティブな顧客数は390万人強と、前年同期比で20万人、5%の減少となった。

これと並行して、ダウンサイジングも進めている。同社は、6月9日木曜日の決算発表に先立ち、従業員の15%をレイオフしたと、CNBCは報じた。この数値は約330人に相当し、これらの従業員はCEOを務めるエリザベス・スポールディング氏から社内文書で通知を受けた。同氏は、従業員への通知のなかで、「我々は、当社のビジネスと、当社の将来を築くために何が必要かを新たに見なおした」と記した。「これは極めて難しい決定だったが、当社を収益可能な成長に向かわせるには必要なものだった」。

新規ユーザーへの依存

小売調査企業のジェーン・ハリ&アソシエイツ(Jane Hali & Associates)でCEOを務めるジェーン・ハリ氏は、「スティッチフィックスは多くの逆風に直面している」と述べている。

同社は今年3月、2022年度前半におけるアクティブなクライアント数の減少を理由に、年間の指針を引き下げた。「そして、2022年の顧客ベースはこれまで、前年比で4%減少した」と同氏は述べている。同社のコンバージョン率が改善するタイミングについても不確定な部分があると、同氏は説明している。

同氏は次のように付け加えている。「スティッチフィックスの成長は顧客ベースの増加に依存しており、その顧客ベースが減少している。パンデミックの頃に購入者だった人々が去っていくにつれ、アクティブなクライアント数はさらに減少していくだろう」。

カテゴリー全体では、サブスクリプションスタイリングへの関心が薄れてきているという意識もある。ノードストローム(Nordstrom)は5月下旬、自社独自のサブスクリプションによるスタイリングサービスであるトランククラブ(Trunk Club)の終了を発表した。小売業者である同社は、2014年にこの新興企業を3億5000万ドル(約473億円)で買収した。このサービスの終了は、2010年代の前半に一般的となったサブスクリプションボックスへの需要の減少を示唆している。

ハリ氏は次のように述べている。「サブスクリプションモデルが失速しているのは、我々がCovidの期間中に、より少ない費用でより多くのことを行えると学んだためだろう。ワードローブを毎月更新する必要はどこにもない」。

新規事業がサブスク事業に与えた影響

さらに、スティッチフィックスは自社の単発のショッピングサービスであるフリースタイル(Freestyle)を通じて、より伝統的なeコマース小売業者への転換を試みているが、これはまだ事業のごく一部である。この新しい方向性は、同社のサイトをはじめて訪れる顧客から、同社が期待したほど多くの共感を得られなかったため、同社の中核であるスタイリングビジネスを打撃を与える結果になったと報じられている

ハリ氏は、同社がフリースタイルの事業を拡大しているが、代償としてフィックスが犠牲になり、結果として同社のニッチな差別化要素だったものを排除する結果になっていると語る。

消費者調査企業のエムサイエンス(M Science)のアナリストであり、スティッチフィックスのユーザーベースを追跡しているマット・ジェイコブス氏は、同社の苦闘は長いあいだ予想されてきたものだと語る。「過去数四半期において、当社の調査の大きなテーマは、顧客数の減少だった」と同氏は語り、過去2四半期にわたってスティッチフィックスの経営陣からの指針が弱かったことも指摘している。

スティッチフィックスのサービスは何年にもわたり、新規顧客がもっとも多くの金額を消費することに依存してきたと、同氏は説明している。「消費額は時間とともに減少していくのが普通で、特定の四半期内では、消費額の大部分は新たに加入した顧客が占めることになる」と同氏は語る。

同氏は、過去1年間にスティッチフィックスのスタイリングサービスに加入した顧客が「収益の45%近くを占めていた」と言及している。この割合は、2020年度の年頭までさかのぼる割合だ。この数値は、同社の顧客維持における困難や、新規ユーザーをコンスタントに獲得することの難しさも浮かび上がらせている。「今後の四半期に顧客が増えなければ、スティッチフィックスの苦闘が続くのは間違いない」と同氏は述べている。

同社はここ数か月、ビーナス・ウィリアムズ氏などセレブリティのインフルエンサーと協力することで、リーチを広げようとしている

しかし、フリースタイルのショッピング機能を拡大できない限り、依然として同社の困難は続く可能性が高い。しかしハリ氏によれば、仮にそれに成功しても、同社の安泰が保証されるわけではない。スティッチフィックスが創設されてからの年月に、eコマースの体験はよりパーソナライズされたものとなり、オンラインでのスタイリストの必要性は減少している。

多くの小売業者は、顧客のプロファイリングと、ブラウジングジャーニーに基づいて、特定の顧客が何を好み、何を必要としているかを把握できるようになったと、同氏は言う。「サービスに料金を払ってまで、それを行う理由はなくなった」。

[原文: Stitch Fix struggles continue as demand for styling services declines]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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