こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります
Amazonは11月30日、今年のブラックフライデー(11月25日金曜日)とサイバーマンデー(11月28日月曜日)(BFCM)のショッピング週末が「過去最大」のものとなったと自信を持って宣言したが、内情を少し掘り下げると、実態はそれほど良好なものではないようだ。
今年のイベントには多くの要因が影響しており、困難な販売状況が起きていることが示唆される。もっとも明らかな要因は、現在の経済的混乱だ。インフレは何カ月にもわたって続行中で、その結果として消費者の支出が、特に裁量的なカテゴリーで個人消費が減速している。
Advertisement
さらに、多くのブランドや小売業者は、今年初頭の時点で商品需要の予測を誤ったため、一部のブランドは過剰な在庫を抱え、その過剰在庫の解消を必要としている。しかし、アマゾンのブランドには予想外の事態が発生し、年末商戦の初動に悪影響が出た可能性がある。Amazonの広告プラットフォームが、感謝祭(11月24日木曜日)の週末の金曜日から日曜日にかけて、レポート作成に支障をきたしたと伝えられている。つまり、マーケティング担当者が広告のパフォーマンスを確認することができなかったと言われている。
手探りで行われた広告運用
Amazonの広報担当者は、電子メールによる声明のなかで、「当社は、この週末に一部のスポンサー付き広告の指標について報告の遅れが生じたことを確認している。この問題は解決され、現在は最新のレポートが作成されている。当社は、すべてのAmazon Ads商品について、可能な限り最高のエクスペリエンスが得られるよう、広告主と協力していく」と述べた。同社は、影響を受けたブランドに対して、どのように事態を収拾する予定なのかは明かしていない。
「これは驚くべきことだ」と、アカディア(Acadia)の小売マーケティング戦略責任者を務めるキリ・マスターズ氏は語る。Amazonの広告プラットフォームはときに問題が発生はするものの、「これほど長く、しかも最悪のタイミングで」プログラムが停止するのは見たことがないと、同氏は語る。
この停止により、同氏が担当しているブランドは「手探りで行うこと」を余儀なくされたと、同氏は語る。ブラックフライデーやサイバーマンデーのような大規模セールのある週末の前に、アカディアは同社のブランドと協力し、適切な予算や、その資金をどのように割り振るのが最適かを見つけ出す。たとえば、ある広告の費用対効果が平均以上の場合、事前に合意済みの金額が与えられる。「当社はその目標に従って、期間中に調整を行っているのだ」と、同氏は述べる。
しかし今年は、誰もリアルタイムで広告の成果を確認できなかった。「実際に何が起きているかがわからなければ増減の調整を行えない」と、同氏は述べる。その結果として、一部のメディアバイヤーは気づかないうちにキャンペーンに過剰な投資を行ってしまったのだ。Amazonの広告プラットフォームでどれだけの金額が消費されるかをバイヤーが知ることができなかったため、割り当てられた予算が日曜日にはなくなってしまった。「十分な資金を割り当てられず、商品を購入する可能性がある人々が存在したにもかかわらず、売上の機会を逃したブランドもあるだろう」と、マスターズ氏は述べている。
これは、ただでさえ裁量的カテゴリーの商品を売るのが厳しい時期に、塩を塗り込む結果となった。最終的なデータはまだ確定していないものの、アカディアによると、感謝祭の週末における5日間の売上の平均値は、前の2週間と比べて49%増加していた。昨年は同じ統計で88%増、2020年は83%増と急増していた。
もっとも売れたのはギフトではなく家庭用品
実際のところ、プロフィテロ(Profitero)のデータは、BFCMでもっとも成功したブランドのいくつかは、ギフトではなく家庭用品だったことを示している。家庭用の紙製品は、この週末にもっとも売れた商品トップ20のうちの5つを占めており、売上2位はバウンティ(Bounty)の40パックのペーパータオルだった。
この消費シフトを、Amazonも認識していたようだ。Amazonの元従業員で、現在はファーストパーティーベンダーの戦略コンサルタントを務めるマーティン・ヒューベル氏は、「『お買い得品とキャンペーン』のページでもっとも目立っていたお買い得商品は、美容品やパーソナルケア用品など再入荷可能なアイテムがあるカテゴリーだった」と述べている。しかし、ギフトになるようなアイテムである「家電、コンピューター、スマートフォンなど、より裁量的なカテゴリーの商品は、確かに取り上げられてはいたが、食料品やパーソナルヘルス用品ほど目立つかたちでは扱われていなかった」と、同氏は述べる。
Amazonの結果もこの事実を示している。同社によれば、もっとも人気のあるカテゴリーは、家庭、ファッション、玩具、美容品、Amazonデバイスだった。しかし同社は、この週末のイベントが、「米国の中小企業に10億ドル(1350億円)以上の売上をもたらした」と述べただけで、これらのカテゴリーについて、売上の詳細を明らかにしていない。
消費に対する考えの変化
ヒューベル氏によれば、売り手、ベンダー、Amazon自身など、すべての関係者が「安全策を重視していた」というのが、今回のイベントで見られた全体的な傾向だ。ファーストパーティーベンダー(Amazonと商品の卸売価格について直接交渉し、それはAmazonでの消費者への販売価格にも影響する)にとっては、「価格の割引が従来ほど劇的ではなかったことが明らかだ」という。これは、「カテゴリーによっては、Amazonが自社の利益を増やす必要に迫られていることを示す指標」だと同氏は説明する。
要するに、ホリデーシーズンの売上増加を鈍らせる可能性が高い経済的な混乱は、ホリデーシーズンの販売戦略も鈍らせている。そして、それによってブランドの売上の数値が軟調になり、経済性を発揮させることを難しくしているのだ。
アカディアのマスターズ氏は、ものを買うことについての買い物客の考えが総体的に変化してきていると評している。「昨年は『在庫があるなら買おう』という考えだった。しかし現在は、『セールになるまで買うのを待とう』という考えに変わってきた」と、同氏は述べている。
CALE GUTHRIE WEISSMAN(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)