ジェネレーティブAIブームのいま、 Web3 はこのまま尻すぼみで終わる?

DIGIDAY

電通のR&D組織である電通イノベーションイニシアティブは2023年6月、Web3準備指標を導入する。その目的は業界がAI一色のいま、ブランド勢にWeb3の利用に必要な準備を教え、同技術のスムーズな導入を促すことにある。

これは、電通が6月末に開催されるカンファレンス、プロキュアコン(ProcureCon)に先立ち、クリプトトレードパブリッシャーとして知られるデクリプト(Decrypt)との提携を通じて実施する、新規事業開発兼研究開発だ。

Web3技術の利用準備は整っているのか

電通は以前からメタバースおよびWeb3における教育と実験に勤しんでいる。専用メタバースキャンパスの構築といったマイクロソフト(Microsoft)との提携による取り組みや、2022年に実施された企業向け教育ブログラムであるWeb3センター・オブ・エクセレンス(Web3 Center of Excellence)はその一環だ。

このたび同社が導入する準備指標は自己診断ツールであり、クライアントに一連の質問を回答させ、その結果に基づいてWeb3に対する準備態勢のほどを判断するというもの。質問はカスタマーエンゲージメントやコンペティション、エンタープライズテクノロジー、コンプライアンスといった分野から出題され、診断結果には一定のガイドラインと指標となる得点が1~5で示される。満点の5は、Web3の利用準備が万全であることを意味するようだ。

「これは我々にとって、事業開発ツールでもある」と、電通イノベーションイニシアティブのトップであるブライアン・モナハン氏は話す。「つまり、企業のウォレットポリシーやデジタル資産について、クライアントとの会話が促進されるだろう」。

また、「より多くのデータが集まれば、最終的にはもっと多くのベンチマークを含むものになる」と同氏は言う。そしてこれは、こうしたプログラムをクライアントに理解させ、適切なツールおよびポリシーを確立するために同社が続ける努力の一環だという。これまでのところ、クライアントの関心が最も高いのは非代替性トークンとWeb3技術を利用したロイヤルティプログラムだが、同氏いわく「クリプトウィンター(暗号資産・冬の時代)」のせいで、一部のクライアントのデジタルウォレットおよび通貨の導入に悪影響が及んだようだ。

Web3は死んでいない

ジェネレーティブAIツールに対する多大な注目に鑑み、Web3およびメタバースの試みはこのまま尻すぼみに終わるだろう、と決めつけるのは簡単だが、その一方でAIとWeb3は同等ではないとする見方もある。しかも場合によっては、補完し合うテクノロジーになりうるという。

Web3マーケティング&エンゲージメントプラットフォームのアブソリュートラボ(Absolute Labs)CEOであるサミア・アダミン氏は、「Web3ビジネスは事実、自身のセクターでは最近伸びを見せている」と話す。同社は、ここ3カ月で100を超える一流ブランドと話しており、同氏はそれをWeb3マーケティングに対する興味が依然、十分に存在することの証と見ている。

「潜在顧客と顧客の需要に応え、彼らが望む場にいる必要があることは、マーケター勢もわかっている」とアダミン氏は言う。「ただ、冬の時代のせいで変わった点があるとすれば、彼らが見る前に飛ぶ、のではなく飛ぶ前に見るようになったところだ。つまり、どこに最良の機会があるのかについて、彼らはデータが示すものを慎重に吟味している。我々にとっては朗報だ」。

それでもなお、AIとWeb3の開発を一括りにするのは軽率だ。どちらも新たなアプリケーションを有しており、破壊的テクノロジーへの対応が混乱を招きかねない点も共通している。

だが、アダミン氏はこう説明する。「両者は相互排他的ではない。AIは能力であり、Web3はエコシステムだ。人々がAIに期待する点は、自分たちがすでに行なっていることの何ができるようになるのか、そしてよりよくできるのか、ということだ。Web3については、成長と機会のまったく新たな分野と捉えており、人々は我々のような企業に対し、そこにより速く到達できる手助けを、最小限の摩擦で堅固なビジネスモデルとともに提供することを期待している」。

AIとの協力関係は、Web3が生きる道なのか?

レイザーフィッシュ(Razorfish)のチーフクリエイティブディレクターであるアンソニー・イエル氏も、「AIとWeb3は長い目で見れば互いを高め合える」と指摘する。現在はAIばかりが注目されているが、クライアントは「Web3を忘れてはいない」と同氏は話し、「AIは斬新なものではない」とも指摘する。「たとえば、一部の自動およびマシンラーニングツールは、エージェンシーにおいてすでに統合されている」。

イエル氏は、「明らかな利点を有する専門ツールがマーケットには数多く存在している」と続け、「かつてはマーケットへの迅速な到達が中心だったが、我々はその姿勢を改め、長期的可能性とインテグレートされたブランドエクスペリエンス全体への影響を、より深く広範に解析するに至った」と語った。

一方、「クライアントからは実際、両テクノロジーの融合を望む声も聞かれている」と、モナハン氏は言い添える。ただし、AIとWeb3の両プログラム融合の実現性は依然、不透明ではある。

「AIがワークフローのオートメーション(自動化)に有用であり、ジェネレーティブAIがカスタマーエクスペリエンスおよびチャットボットに利用されている一方、Web3はブランド勢にバーチャル界でユーザーとエンゲージさせ、新たなかたちでのロイヤルティプログラムの開発を促進する」と、モナハン氏は言う。

また、「Web3とAIは単に同じものであり、一定の集団のみがそれを取捨選択できるのか?」と同氏は問いかける。「いや、たしかにオーバーラップ(重複)する部分はある。だがいまのところ、Web3スペースで大量のエネルギーが見られるのは、バーチャルイベントやバーチャルワールドにおけるプレゼンス、記念NFTドロップ、トークン化したロイヤルティプログラムだけだ」。

[原文:Dentsu’s new Web3 readiness tool shines light on the tech’s potential to complement AI

Antoinette Siu(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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