「NFTでさえ簡単に販売できるのが Shopify の魅力だ」:Shopify Japan 太原真氏

DIGIDAY

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この2年間におけるEC需要の急拡大は、企業やブランドのデジタル化への意識を高め、動画やSNS、さらにはNFTといったトレンドを積極的に受け入れる動きを作り出している。しかし、EC領域のニーズの移り変わりは早く、最新トレンドを盛り込んだ自社ECサイトが一気に廃れてしまうリスクもある。

EC構築プラットフォームのShopify(ショッピファイ)も、こうしたECの隆盛を好機として事業を成長させている企業のひとつだが、好調の背景にあるのはそれだけではなく、ニーズの変化に柔軟に対応してきたことが大きい。「ノーコード、ローコード」をコンセプトに、ビジネスの規模に関係なく、エンジニアでなくてもECサイトを構築・更新できる点も支持され、利用者を増やしている。

「日本の企業に特に多いのが、自社のECサイトが年月を重ねてフレキシブルさを失ってしまっていることだ」と指摘するのは、2021年5月にShopify Japanのカントリーマネージャーに就任した太原真氏だ。太原氏は同社に参加して以来、拡張性や操作性の高さといったShopifyの強みをアピールするとともに、Shopifyの機能・サービスを日本の市場向けに最適化、ローカライズ化することに力を注いでいる。「我々の強みは、NFTにおいてもマーチャントが専門知識やスキルを必要としないことだ」という太原氏に、日本国内のEC市場の課題や、それに対するShopify Japanの施策などについて、話を聞いた。

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――太原氏がShopify Japanに参加して1年弱。日本のEC市場にどういった課題を感じているか?

私はこれまでAmazonやGoogleなど、「デジタル化を推進する」というビジョンを持つ外資系テクノロジー企業で働くなかで、その経験を生かし、日本でもeコマースをもっと普及させたいと感じていた。日本のeコマースは楽天、ヤフー、Amazonといったマーケットプレイスが主戦場になっている。しかし、企業のデジタル化が盛んになり、自社サイトを構築する動きも見えてくるなか、Shopifyが選択肢のひとつに上がるようになってほしいという思いで、Shopifyに参加した。企業が自社サイトを作る場合、ビジネスの規模に関係なく、Shopifyが一番いいツールだと思っているからだ。

――Shopifyの2021年度業績を見ると、売上高が前年比57%増、流通総額が同47%増と好調だ。日本での事業はどう総括するか? また、それを踏まえて注力することは何か。

2021年はまだコロナ禍の影響があり、企業のECに対するアンテナは依然高かった。営業自粛や営業時間短縮などで実店舗での集客ができない分、ECに投資する企業が増える。また店舗に行けない分、ECでの買い物を検討する消費者も増えたということだろう。

我々は、日本のマーチャントが、Shopifyをはじめやすく、使いやすく、また長く使ってもらえる体制を強化していきたい。私がShopify Japanに参加してからは、特にShopify Plusを導入するブランドのサポート体制を強化した。ECにはマーチャントの将来のビジネスがかかっているため、サポート体制には継続して力を入れる。

Shopifyのサービスを日本にローカライズすることにも注力している。たとえば3月には、Shopify Flowというタスクの自動化ツールがShopifyプラス(大規模ビジネス向けサービス)より安価のプレミアムプランでも利用できるようになった。また、Shopify内の自動メール機能のシステムを強化した。商品・サービス向上のため、日本でもこうした機能を順次導入していきたい。

――越境ECに強いのがShopifyの特徴のひとつだが、引き続き訴求していくのか?

日本のマーチャントは、特にグローバルに成長する機会を求めている。我々のマーチャントのなかには、国内向けECサイト構築の次のプライオリティーとして、越境ECを構築したいという声が依然として多い。Shopifyは、日本のマーチャントのグローバルな成長を支える存在でありたいと思っている。

Shopifyは昨年9月、越境ECのための新サービスであるShopify Marketsを立ち上げた。あらゆる規模のマーチャントの海外市場参入をより簡単にするためのソリューションで、マーケットの特定から販売の準備、立ち上げ、最適化まで、すべて1つのShopifyストアで行えるものだ。多言語・多通貨などにも対応しているため、Shopifyで国内向けECサイトを作れば、越境ECへと簡単に拡張できる。

――2022年に入り、大規模ビジネスをサポートするShopify Plusを本格展開している。競合とはどういった部分で差別化を図っていくのか。

Shopifyの一番の強みは、使いやすいという点だ。管理画面の操作が簡単な上、エンジニアでなくても「ノーコード、ローコード」でサイトを作れる点が、ビジネスの規模に関係なく、支持されている理由だと思っている。

日本の企業に特に多いのが、自社のECサイトが年月を重ねることで、フレキシブルさを失ってしまっていることだ。過去のウェブ担当者が何をしていたか可視化されておらず、5〜10年前にECをカスタムメイドしたまま、手を加えられていない場合も多い。Shopifyであれば、社内の担当者が簡単な操作でECサイトを変更していくことができる。ECサイトの見直しを検討している企業には、その点を強みとして訴求したい。

――まだ日本で導入されていないもので、注目しているShopifyの機能は?

欧米ではNFTがバズワードになりつつある。Shopifyでも、NFTの発行と販売を検討しているマーチャントが米国を中心に増えていて、昨年12月にはNFTを発行・販売できる独自サービスを発表した。NFTにはブロックチェーンというやや複雑な基盤技術を用いるが、我々の強みは、マーチャントが専門知識やスキルを必要としないことだ。

3月に開かれたSXSWでは、ドゥードゥルズ(Doodles)とのパートナーシップにより、NFTを紹介する展示館を設け、NFTにおけるトークンゲーティング(トークン保有者限定でコンテンツを提供できる機能)の可能性について紹介した。ドゥードゥルズは、イラストレーターのバーント・トースト氏がデザインした1万個に及ぶNFTコレクションを販売するShopifyマーチャントだが、Shopifyはそこで、ドゥードゥルズのNFT保有者と新しいファンに限定し、オンラインストアと実店舗の両方でNFTを販売した。

Shopifyを使うことによってNFTを簡単に取り扱えるというのは、個人的にも非常に面白いと感じている。また、NFTは本質的に一点ものであるため、マーケットプレイスではなく、単独店舗での販売が向いていると考えている。日本でも今年から来年にかけて、さらに注目されるのではないだろうか。

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SXSWで行ったNFT販売の模様

実際に日本国内では、Shopifyのパートナーでもあるplayground社が、来場証明NFT付チケット機能の提供をはじめた。これは、チケットの本人認証技術とNFT技術を組み合わせることにより、実際に来場したファンだけが取得できる「本物の来場証明」となり、NFTを目的とした転売の抑止にもつながる。Shopifyのマーチャントやパートナーはいち早くNFTを実用化しており、今後ShopifyはNFT販売へのソリューションを世界で展開していければと思っている。

――コロナ禍では、eコマースへの注目度が高まった一方、サプライチェーンでの混乱も見られる。その影響はあるか?

直接的な影響は見られないが、マーチャントは3つのコスト高に直面している。1つめは、CPA(顧客獲得単価)の上昇だ。GoogleやFacebookの広告単価が上がっているという声があがっている。2つめは、物流コストの上昇。特に中国などで商品を生産しているマーチャントは、輸入コストが上がっている。2019年、40フィート(約12メートル)のコンテナに入った商品をアジアから米国に輸送するのにかかる費用は2000ドル(約24万円)未満だったが、2021年10月には、同じサービスにかかる費用は約1万ドル(約120万円)に跳ね上がっている。そして3つめは、原材料の高騰によって商品の値上げをする傾向が強まっているということだ。

企業はコスト削減や顧客サービス向上のため、製造や物流の戦略を見直している。Shopifyの調査によると、43%と約半数のマーチャントが「世界的な物流遅延による影響を軽減するため、戦略を変更した」と回答し、45%が「製造能力の増強に努めるつもりだ」と回答した。戦略の見直しは単なる予防策だけでなく、商品の調達や出荷方法を刷新し、消費者や企業に利益をもたらす機会でもある。今まで配送拠点を集約していた企業が、倉庫の拠点を分散させ、複数拠点からの配送にシフトしている動きも見られる。

――eコマースへの関心がより高まったが、その揺り戻しについてはどう見ているか?

Shopifyには、eコマースだけでなく、リアル店舗も、B2B向けのホールセールビジネスも含め、すべてのコマースの起点となる「コマースOS」になりたいというゴールとビジョンがある。ポストコロナは誰にも予測できないが、eコマースも、消費者が店舗に行ってモノを買う習慣も、なくならないのは明らかだ。そのためマーチャントは、顧客が買いたいと思う場所や場面すべてに対応できるような存在であるべきだ。我々は、コマースOSを通じて、マーチャントのすべての取引をサポートするソリューションを実現したい。

Written by 戸田美子

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