プレステージビューティ の売上に打撃。好調なカテゴリーは?:消費者が支出を控える影響

DIGIDAY

近頃では景気が不安定なことから、この「不況知らず」という概念が再び注目されているが、最近の企業業績が示すように結果はさまざまである。第3四半期に4.6%の成長を遂げたロレアルグループのリュクス部門のように、企業側が成長していると報告しても、採算ベースを下回っていると見なされている。

現在の経済的混乱による影響を、美容業界はようやく実感し始めている。

Glossyは、2019年に美容は不況に強いカテゴリーであるという考えを突きつけ、「リップスティック・エフェクト(口紅効果、経済危機には安価な高級品が売れるという現象)」について分析した。当時は、特に米国がもっとも長く続いた経済成長期だったこともあり、「おそらく」そうだろうという結論だった。スキンケアは回復力があると予想され、実際その通りではあったが、一方でD2Cブランドの行く末については懸念されていた。D2Cブランドは、グロシエ(Glossier)のような強固なブランドでさえ、その後は実店舗での小売やAmazonを採用している。

低調なプレステージビューティ

近頃では景気が不安定なことから、この「不況知らず」という概念が再び注目されているが、最近の企業業績が示すように結果はさまざまである。第3四半期に4.6%の成長を遂げたロレアルグループ(L’Oréal Group)のリュクス(Luxe)部門のように、企業側が成長していると報告しても、採算ベースを下回っていると見なされている。ロレアルのリュクス部門は、マスマーケットの売上成長率の10%を下回っており、10月20日の決算説明会後、ロレアルの株価はこの7カ月でもっとも大きな値下がりを経験した。ロレアルグループのCEOニコラス・ヒエロニムス氏は、ブルームバーグTV(Bloomberg TV)のインタビューで、生活費危機の渦中にある英国の買い物客が、より安価なスキンケア製品に買い換えていることが見てとれると述べている。

さらに10月27日、バイヤスドルフ(Beiersdorf)が、それまで年間20%の成長を達成してきたラ・プレリー(La Prairie)のスキンケア製品の売上が、今年1月から9月にかけて5.5%の成長にとどまったと発表した。エグゼクティブらは、これは中国でのロックダウン措置が続いているためだとしている。エスティローダーカンパニーズ(Estée Lauder Companies)は11月2日、2023年度第1四半期の純売上高を発表し、11%減の39億ドル(約5733億円)と報告、中国での売上減少が続いていることと、米国市場が低迷していることに言及し、残りの会計年度の見通しを下方修正した。エスティローダーの製品シリーズは、アクティブコスメティックスやプロフェッショナル製品といったカテゴリーが多いロレアルのような同業他社にくらべ、よりプレステージ性が高い。

よいポジションにあるマスビューティ

エスティローダーカンパニーズのエグゼクティブバイスプレジデントでCFOのトレイシー・トーマス・トラヴィス氏は、11月2日に行われた決算説明会で、「2023年度に目を向けると、プレステージビューティカテゴリーには力強い成長を続けるだけの十分な機会があると信じている」と述べた。「だが、今年度の業績回復が、再び順調ではなくなることを懸念している。記録的なインフレと多くの市場における景気後退や減速の脅威は、一時的に消費意欲を減退させる可能性があり、一部の小売業者が在庫に関してさらに慎重になる原因となっている」。

ここから得られるいくつかのメッセージは、現在はプレステージやリュクスよりもマスビューティがよいポジションにあるというものだ。同じく11月2日に発表されたE.l.f.ビューティ(E.l.f. Beauty)の決算では、2023年度第2四半期の売上高が前年同期比33%増の1億2230万ドル(約179.8億円)になったことが明らかになった。小売とeコマースのチャネルが牽引し、同社は15四半期連続で売上高を伸ばしたことになる。9月30日締めの上半期の業績は、前年同期比30%増の2億4500万ドル(約360億円)である。

「歴史的に、不況の時期であってもマスのカラー(コスメティックス)とマスのスキンケアはなかなかよく売れており、かなり回復力がある。これは高額な商品から低価格の商品まで、価格帯が広いプレステージとは異なる点だ」とE.l.f.ビューティのCEOタラン・アミン氏はGlossyに語った。「マスカテゴリーは、手頃な価格のラグジュアリーなので健全だ。カラー(コスメティックス)の側にいる人々は、(Covid-19のために)あまりにも長く抑圧されていて、外に出て自分を表現したいと思っている」。

多様性に欠けるカテゴリーは停滞が露呈

そのほかのメッセージとしては、こうした時期には、より多様化したビジネスに支えられるという点が挙げられる。

オラプレックス(Olaplex)のヘア製品のみを扱うオラプレックス・ホールディングス(Olaplex Holdings)は10月末に業績見通しを下方修正し、株価が57%急落した。同社は11月9日に第3四半期決算を発表する予定だ。成長の主な阻害要因として、オラプレックスは、マクロ経済の圧力、値引きなどの競争の激化、新規顧客獲得の減速を挙げている。経済的に困難な時代には、企業はビジネス全体の成長促進のためにさまざまなカテゴリーを組み合わせて、それに頼ることができるが、そのような多様性がないと企業の停滞がより露呈してしまう。

「2022年度のガイダンスを引き下げるのは残念だ。機敏なビジネスとして、当社はすでに需要を加速させるための行動を特定し、実行に移している」と、オラプレックスのCEOジュイ・ウォン氏は業績修正プレスリリースで述べている。「当社は引き続き長期的な成長戦略の実行に力を入れていく。当社の競争優位性によって、この動的な時期を乗り切り、将来的に強力な地位を築くことができるよい体制にあると確信している」。

[原文:Prestige beauty sales takes a hit as consumers cut back on spending]

EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)


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