ソーシャルメディア担当のマネージャーたちは今、Twitterに関して新しいアプローチを模索している。かつては世界中のソーシャルメディア戦略担当者にとって、安定した信頼できるプラットフォームであったTwitterだったが、現在ではマーケティングのツールのなかで最も予測不可能なソーシャル・プラットフォームとして捉えられつつある。
Twitterでは大量解雇に続いて、残ったスタッフのなかでも、新しい経営者が提示した従業員に求められる労働条件に愕然として辞職をする者が大量に出た。その結果、一時的なオフィス閉鎖につながった。
そしてここ数日、サッカー選手に向けた人種差別的ツイートが殺到し、Twitterがそれを削除せず放置するなど、より憂慮すべき事態が発生しており、11月20日にカタールで開幕したワールドカップ期間中にTwitterがプラットフォーム上の人種差別を取り締まるかどうかが懸念されている。
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Twitterの変更は多くの広告主たちにとって有害に
Twitterの運営方法にこのような重大な変更が加えられたことで、多くの大手広告主たちはこれが彼らにとって有害な事態であることを確信している。また、企業の公式Twitterアカウントを管理するソーシャルメディア・マネージャーたちは、今後の展望も明らかでないまま、Twitterマーケティング計画の変更に奔走することになった。
混乱に拍車をかけているのは、ソーシャルメディアのマネージャーたちが、これまで連絡を取っていたTwitter側の窓口スタッフが解雇されていたり、辞職したりしていることだ。さらに、ブルーチェックの認証に月額8ドルの定期購読料を課すかどうかで賛否両論が巻き起こっている。ブルーチェックの認証は以前は無料だったが、Twitterスタッフが有名人や組織のアカウントを偽者やパロディのアカウントと区別するために検証するサービスだった。
ソーシャルメディア戦略担当者は、継続的な変化にリアルタイムで対応するのに苦労しており、混乱が落ち着くまでアカウントを一時停止するか、活動を減らすか、通常通り継続するかをクライアントにアドバイスする明確な舵取りができていない。一部のマネージャーにとっては、適切なアプローチが取られるように、短い時間(すでにかなり過酷な仕事であるにも関わらず)のスパンで仕事に取り組むことを意味している。
グローバル・マーケティング代理店のフィン・パートナーズ(Finn Partners)の統合マーケティング戦略ディレクターである、エリカ・タケット氏は、顧客にアドバイスできるよう、ニュースをできるだけ注意深くフォローするよう努めてきたという。Twitterで、何百人もの従業員が自主退職に飛びついたというニュースを聞いて、彼女は夕食の席から急いで帰宅し、午後10時にノートパソコンを起動させ、全社に連絡を送信した。
「イーロン・マスクがTwitterを買収するかもしれないというニュースが流れて以来、すべてのソーシャルメディア・マネージャーたちが注目している」とタケット氏と述べ、「これがブランドにとって何を意味するのかを理解しようとしてきた」という。
Twitterに新しい文化が生まれたことで、フィン・パートナーズは、もはや同社や顧客の信念と一致しないことを認識した。そのため、同社は11月上旬にはTwitter上のオーガニックおよび有料コンテンツをすべて一時停止。タケット氏は、マスクと彼の決断についての新しいニュースが出るたびに、Twitterは「終末論的」に感じると述べた。「(Twitterは)ブランドがあるべき場所ではない」。
「イーロン・マスクがTwitterを買収するかもしれないというニュースが流れて以来、すべてのソーシャルメディア・マネージャーが注目している」 – マーケティングエージェンシー、フィン・パートナーズ 統合マーケティング戦略ディレクター エリカ・タケット氏の場合
今のTwitterでは、ブランドの安全性が担保できないか
Twitterのスタッフの規模が当初の半分になったことで、コンテンツを監視したり、ブランドの安全性をチェックしたり、ヘイトスピーチがエスカレートしていないことを確認したり、Twitterの広告をチェックして、それらが実際に運用され、連邦取引委員会の規制の範囲内であることを確認したりする業務を誰がおこなっているのか、タケット氏は疑問に思っている。
ブランドの安全性や、政治的な二極化を巡る議論にブランドが関与すべきか否かという厄介な問題は、今に始まったことではない。しかし、タケット氏によると、Twitterの変更により、この問題はブランドにとってさらに避けられなくなった。
戦略的コミュニケーション代理店ミッション・ノース(Mission North)のデジタル戦略担当ディレクターであるジャッキー・オブライエン氏もこの認識を共有している。しかし、同社の中には、Twitterに対してより強い姿勢を示すことを望む従業員も存在するという。
「代理店としては、Twitterに残るか降りるかを顧客に強く勧める立場にはない」とオブライエン氏は述べた。「私たちは彼らが混沌のなかを進む手助けをしている。あまりにも多くのことが起き、感情が昂った会話が多く発生しており、私たちはそこに加わりたくはない」「それはつまり、イーロンが経営するTwitterの件はとりあえず置いておいて、我々があなた(クライアント)のために構築した戦略を振り返ろうと呼びかける姿勢だ」。
ほとんどのソーシャルメディア・マネージャーは、Twitterが今日のほとんどのブランドにとって最重要のプラットフォームではないことに同意している。ほとんどのブランドは、メタ(Meta)、Instagram、ティックトック(TikTok)、YouTube、そして最近ではビーリアル(BeReal)のようなプラットフォームを含む、総合的なアプローチを持っているからである。それにもかかわらず、Twitterには顕著な役割があった。
「Twitter/イーロン・マスクは我々の戦略をリードしていない」とオブライエン氏は述べた。「我々の目標には影響しない。将来的には、これはInstagramやFacebookでも起こる可能性がある。ブランド安全性の問題が出てくるたびに、問題のあるチャンネルを離れるというアプローチを続けていくと、将来、より大きな問題に直面してしまうだろう」。
ほとんどのソーシャルメディア戦略にはすべてのプラットフォームが含まれているため、(問題が起きたときに)ほかのソーシャルメディア・プラットフォームに焦点を当てるという方向転換は、それほど問題となる調整とはなっていない。
Twitterの変更で小規模プラットフォームの存在感が高まる
インフルエンサー・マーケティング代理店オブビアスリー・ソーシャル(Obviously Social)の共同創業者兼CEOであるメイ・カーワウスキ氏は、「これが(Twitterから)より革新的なプラットフォームに移行するきっかけとなる」と述べている。「誰もがこの状況に不安を感じており、Twitterは参加する価値があるのか、と悩んでいる。これは多くのブランドにとって、Twitterを止める最後のきっかけとなる」。
たとえば、マストドン(Mastodon)のような小規模なプラットフォームは、これまでは得られなかった規模のユーザーを得ている。仮想通貨のベッティング・レビュー・ウェブサイトであるCryptobetting.orgがまとめたGoogleトレンド(Google Trends)のデータによると、11月に入ってからのマストドンのオンライン検索数は、米国で40万5000件、英国で51万000件の計92万件だ。同じデータによると、「Twitterを削除」の検索数はアメリカで201%、世界で102%急増している。
企業間のソーシャルメディア・マーケティング代理店であるスカルプト(Sculpt)の戦略責任者であるシェイ・ルカ氏も、Twitterの変更を把握するために夜通し働いている。彼女は、今後数日から数週間のうちにウェブサイトが完全にダウンした場合に備えて、クライアントにTwitterデータをすべてダウンロードすることを推奨している。このようなデータは、製品や一般的な顧客の傾向を知るのに役立つ。「私たちはブランドのために何が最善かを見極め、それに応じたアドバイスをしているだけだ」とルカ氏は述べた。「何も起こらなければそれでよいが、少なくともクライアントのTwitterデータをダウンロードするために措置は取っておいた、といえる」。
「私たちはブランドのために何が最善かを見極め、それに応じてアドバイスしようとしている」 – ソーシャルメディア・マーケティング代理店スカルプト(Sculpt) 戦略責任者 シェイ・ルカ氏
一方で、Twitterが軌道に乗ることを期待する声もある。ソーシャルメディア・マーケティング会社ハイキー・エンタープライズ(HighKey Enterprises)のCEOであるルーク・リンツ氏によると、「アウトリーチ戦略を変更して、リンクトイン(LinkedIn)上の人々に直接メッセージを送信するようになったが、リンクトイン上では月に送信できるメッセージの数に制限があるため、Twitterほど強力ではない」という。
「人々はTwitterで何が起きているのか、まるで秘密の答えを我々が持っているかのように私たちに問い合わせてくる」とリンツ氏はいう。「私たちが持っている知識はニュースで発表されていることと同じだ。時に圧倒されることもある」。
[原文:How social media managers are coping with the Twitter debacle]
Cloey Callahan(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)