YouTubeショート のレベニューシェアプログラムに備えて戦略を練るパブリッシャーたち

DIGIDAY

「YouTubeショート」では、クリエイターやパブリッシャーがこのプラットフォームに投稿した縦型ショート動画から直接利益を得られる手段がまだ提供されていない。だが、チーム・ホイッスル(Team Whistle)、ベッチェス・メディア(Betches Media)、ボックス・メディア(Vox Media)など一部のパブリッシャーは、すでにオーディエンスの拡大に取り組んでいる。来年2月に開始される広告のレベニューシェアプログラムに備えるためだ。

チーム・ホイッスル、ベッチェス・メディア、ボックス・メディアの3社は、この1年間に実施したYouTubeショートのテストが、YouTubeでの視聴者数と登録者数の両方の増加に貢献したと考えている。また、レベニューシェアは視聴回数が基準となるため、来年にプログラムが始まれば、このプラットフォームで実績を上げることが極めて重要になるはずだ。

「我々が他に先んじて規模を拡大し、このアルゴリズムにおける重要性を高めることができれば、収益化が始まったときに競争で優位に立てる可能性がある」と、ベッチェス・メディアのCRO、デビッド・スピーゲル氏はいう。

YouTubeショートのレベニューシェアプログラムが開始されると、YouTubeショートの広告収益の45%が対象のクリエイターやパブリッシャーに分配される予定だ(ただし、この割合は従来の長編動画の広告収益分配率である55%より少ない)。また、この収益は月単位で計算され、各クリエイターやパブリッシャーが受け取る金額は、ショート動画の合計視聴回数に占める割合に応じて分配されると、YouTubeは収益分配プログラムを発表したブログ記事で述べている

今はテスト期間

クリエイターは今、YouTubeショートのテストを増やしている。動画測定分析会社のコンビバ(Conviva)が1万1000件以上のYouTubeアカウントから投稿された160万件のYouTube動画を調査したソーシャルインサイトによると、直近の90日間でYouTubeに投稿された「#shorts」タグ付きの動画の数は、その前の90日間から51%増えたという。

ナウディス・ニュース(NowThis News)は、TikTok(ティックトック)に投稿したのと同じまたは類似のコンテンツを、歩調をやや変えた上で投稿するというYouTubeショート戦略を採っていると、同ブランドの親会社ボックス・メディアの広報担当者はいう。そして、この戦略はとてもうまくいっているようだ。ナウディスが今年YouTubeで視聴者数と登録者数を伸ばした主な要因はYouTubeショートで、登録者数は2021年から50%増加したと、この広報担当者は述べている。

一方、やはりボックス・メディア傘下のブランドであるイーター(Eater)とザ・ドードー(The Dodo)は、YouTubeショートにより特化したアプローチを採り入れている。具体的には、YouTubeに投稿した長編動画で最も大きな関心や多くのリアクションを集めた部分を、60秒間のショート動画としてまとめるというものだ。この戦略のおかげで、どちらのブランドでも多くのショート動画が100万回を超える視聴回数を獲得したと、ボックス・メディアの広報担当者は続けた。

ショート動画以外の動画に誘導する近道

チーム・ホイッスルは、オリジナル動画(エディトリアル動画とブランデッド動画の両方を含む)を制作する際に、YouTubeショートの動画編集機能やツールを利用することで、コンテンツをこのプラットフォームにふさわしいものにしている。おかげで、ショート動画を通じて同社のコンテンツを初めて見たという視聴者が、着実に増えているという。同社の大きな狙いは、そのような視聴者をさまざまなチャンネルで公開している長編動画に引き込むことだ。

2022年には、YouTubeでの視聴回数はショート動画が74%を占めていたが、視聴時間(分単位)は長編動画が78%を占めていた。さらに、チーム・ホイッスルが獲得したYouTubeチャンネルの全登録者のうち、85%は今年に入ってからショート動画経由でアクセスしてきた人たちだという。

「人々を引き込むことができるのはショート動画だが、滞在時間を延ばすことができるのは長編動画だ」と、チーム・ホイッスルで収益およびブランド戦略担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるダスティン・フライシュマン氏はいう。この点においては、長編動画をサポートしていないTikTokやインスタグラム(Instagram)と比べて、YouTubeに優位性がある。

ベッチェス・メディアは、同社のYouTubeチャンネルをすべて合わせても、1万2000人程度のフォロワーしか獲得していない。だが、YouTubeでのプレゼンスを高めてレベニューシェアプログラムに参加することを視野に、「ユー・アップ?(U Up?)など同社の人気ポッドキャストの録画を10月から投稿し始めた。また、メインのYouTubeチャンネルでエピソードの全編を公開するだけでなく、それらのポッドキャストを短く編集した動画をYouTubeショートとして投稿している。スピーゲル氏によれば、「ユー・アップ?」のYouTubeチャンネルに6000人の新規登録者をもたらす上で、ショート動画は大きな役割を果たしたという。

コンビバで戦略担当バイスプレジデントを務めるニック・キケロ氏によれば、ポッドキャストのハイライト動画は、パブリッシャーのメインチャンネルで公開されているエピソードの全編に視聴者を誘導する傾向が高く、YouTubeショートで良好なパフォーマンスを発揮しているという。

自社に合わせてショートの戦略をいかに立てるか

「パブリッシャーのタイプによって、ショートの使い方は違ってくるだろう。(なかには)ショートをマーケティングの手段として利用するところもある」とキケロ氏は述べ、HBOマックス(HBO Max)やポッドキャストパブリッシャーをその例として挙げた。これに対し、デジタルパブリッシャーの多くは、オリジナルコンテンツへの投資額に応じてYouTubeショートのコンテンツから直接収益を上げられる可能性があると、同氏は付け加えた。

「また、ショート専用の新たなアカウントを開設する動きが見られている」と、キケロ氏は指摘する。バーティカルな取り組みに注力し、YouTubeショートを利用してレシピやスポーツのハイライトなどニッチなトピックを掘り下げているデジタルパブリッシャーは、YouTubeショートで視聴者を獲得できるだろう。その上、長編動画に誘導できなくても、ショート動画の視聴時間を延ばすことができる可能性があると、同氏は語った。

[原文:Publishers prime their YouTube Shorts strategies ahead of next year’s revenue-sharing program

Kayleigh Barber(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:分島翔平)

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