地域食料品店の セーブマート 、 リテールメディア 事業での成長を模索:小規模企業ゆえの強みは?

DIGIDAY

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セーブマートスーパーマーケット(Save Mart Supermarkets)、ラッキースーパーマーケット(Lucky Supermarkets)、フードマックス(FoodMaxx)などの食料品店チェーンを運営するザ・セーブマートカンパニー(The Save Mart Companies)は、自社のデジタル事業およびリテールメディア事業成長のための取り組みを強めている。

そのためにセーブマートは、食料品テックベンダーのスイフトリー(Swiftly)と提携し、リテールメディアネットワークを構築中だ。現在は、自社のデジタルプロパティに広告を掲載することでこのネットワークを活用できるよう、売り手に対して自社のプラットフォームへの門戸を開く準備が完了している。鎮痛剤のタイレノール(Tylenol)、ヨーグルトメーカーのチョバニ(Chobani)、鶏肉ブランドのフォスターファームズ(Foster Farms)などのブランドが、ザ・セーブマートカンパニーのアフィリエイトサイトやモバイルアプリで広告を掲載しはじめたと、同社は語る。さらに、同社はオンラインでのプレゼンスを拡大するため、自社のロイヤルティプログラムやデジタルクーポンプログラムの認知度向上にも力を入れている。

ザ・セーブマートカンパニーのシニアバイスプレジデント兼最高デジタル責任者を務めるタマラ・パティソン氏は、この最新のデジタルへの集中的な取り組みは、自社が過去12カ月に行ってきた投資の集大成で、「競合他社に追いつくために多くの取り組みが必要だった」と、米モダンリテールに語った。

「大規模なリテールメディアネットワークの中には、その規模の大きさゆえに、ブランドパートナーに対してそれほど緻密なパートナーシップ、クリエイティビティ、イノベーションを与えることはできないため、当社は独自に勝利できると考えている」と、同氏は述べる。「当社は、このエコシステムを確実に構築するため、社内でテクノロジーに多くの投資を行い、パートナーシップに関係する資金を投入してきた。これは、この10年間で当社の組織が行ったもっとも大きな投資だといえる」と、同氏は具体例は語らずに付け加えた。

「消費者はデジタルに移行しつつある」

カリフォルニアの地域食料品店である同社はこれまでに、スイフトリーと提携して自社のモバイルアプリケーションを構築し、デジタルクーポンや週ごとの広告を買い物客に提供してきた。セーブマートがウェブサイトやアフィリエイトを最初に立ち上げたのは2015年で、その後の2017年にモバイルアプリの運用を開始した。2021年10月にはモバイルアプリのデザインを一新し、5月23日にはスイフトリーとのパートナーシップによりウェブサイトをリニューアルした。

しかし、この最新の後押しにより、同社は、自社独自のリテールメディアネットワークを構築することで収益を生み出せるような、より凝集されたデジタルプログラムを実施する準備を整えた。スイフトリーとのパートナーシップにより、競合力を維持できる速度で複数のプラットフォームにわたってデジタルソリューションを供給する能力が加速したと述べている。

インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)で小売およびeコマース担当のプリンシパルアナリストを務めるアンドリュー・リプスマン氏によれば、ザ・セーブマートカンパニーの取り組みは、小売業者や地域の食料品店が、事業をさらにデジタル化する必要があると認識するようになっている、より広範なトレンドに沿ったものだ。「消費者はデジタルに移行しつつある。そして、パンデミックのあいだ、人々が食料をオンラインで購入しはじめたことで、食料品店にとってデジタルの重要性が増したことは明らかだ。これがなければ、食料品店はデジタルへの移行を遅らせていただろう」と、同氏は述べる。「しかし現実に、これらの小売業者が今後事業を展開していく際、多くの点でデジタルが必要になるだろう。そして、多くの小売業者にとって、これはクーポンの扱いからはじまるだろう。というのも、米国で食料品を買い求める人の多くはクーポンを使用して買い物をするからだ」と、同氏は付け加えている。

4年間にわたるeコマース投資

リテールメディアネットワークは同社のデジタル戦略における最新の取り組みだが、同社はこれまで4年間にわたってeコマースに投資してきた。セーブマートは2019年6月、まずすべての店舗で家庭への配送を開始し、2018年からは一部店舗でカーブサイドピックアップを使用できるようになった。2019年9月には、インスタカート(Instacart)と共同で、セーブマートとフードマックスの両方の買い物客を対象に、食料品の即日配送を開始した。2020年9月にはロボット工学新興企業のスターシップテクノロジーズ(Starship Technologies)と提携し、モデストにあるセーブマートの旗艦店で非接触式の食料品配達を初めて開始した

直近では今年2月、カリフォルニアのマウンテンビューにあるテック新興企業フルフィル(Fulfil)のマイクロフルフィルメントウェアハウスを採用し、食料品の即日配達および受け取りサービスを開始した。

パティソン氏は、これらの活動がスイフトリーとのデジタル広告パートナーシップと連動していると語る。スイフトリーはこの1年間、より大規模な運用に向け、セーブマートの広告サービスを最適化するためのパイロット試験を行ってきた。

小規模ビジネスだからできること

スイフトリーの最高テクノロジー責任者を務めるショーン・ターナー氏は、顧客がパーソナライズされたショッピング体験を求めていると、米モダンリテールに語った。「当社は、ウェブサイトとアプリ内での今回の運用開始により、顧客との新たなタッチポイントを消費者のジャーニー全体と一致させることができ、デスクトップとモバイルの両方の買い物客に対して、より深いエンゲージメントと一貫した体験を提供することができると考えている」と同氏は述べている。

アルバートソンズ(Albertsons)やクローガー(Kroger)のような大規模の食料品店には専任のチームがあり、このテクノロジーの多くを社内で構築し、このような種類のサービスを消費者に提供する。だが、すべての食料品店がこのようなプログラムに自社で投資する余裕があるわけではない。「当社は、非常に機敏で将来を見据えた、ザ・セーブマートカンパニーのような食料品店と提携することに大きく期待している。小規模でより機敏な業者がより迅速に行動できる機会は豊富だからだ。そして、この分野の大手企業が行っていることを一足飛びに超えて先に進むことも可能だ」と、ターナー氏は述べている。

「いくつかのキャンペーンでは、広告への支出に対して3ケタの回収が得られた。つまり、1ドル(約139円)の広告投資に対して100ドル(約1万3900円)以上の売上増を達成したブランドもあるということだ」。

「ファインダビリティ」を提供する

この広告プログラム以外に、ザ・セーブマートカンパニーが注力する重要な分野は、テクノロジーの採用によって、オフラインとオンラインを問わず、ショッピングでの「ファインダビリティ(見つけやすさ)」を提供することだと、パティソン氏は語る。「当社は、eコマースを店舗の延長線上にある機会だと考えている。そのため、当社の買い物客が商品棚のあいだを進み、興味を持っていない、または時間がないために店舗では見つけられないような商品を見つけられるようにすることは、当社にとって非常に重要なことだ」と、同氏は述べている。セーブマートは時代の先を行くため、商品棚の通路のナビゲーションやBluetoothテクノロジーなどの新しいテクノロジーに投資し続けていくと、同氏は付け加えている。

ザ・セーブマートカンパニーにとってもうひとつの大きな販促活動は、独自のデジタルサービスを提供することで、同社のロイヤルティプログラムとデジタルクーポンに対する総合的な認知度を高めることだ。「顧客が興味を持ち始めれば、その顧客のショッピング履歴を活用して、より優れた体験を作りだすことができる」と、パティソン氏は述べている。

「これは、当社のセーブマートやラッキーの店舗で利用可能なロイヤルティプログラムの成長と関連している。そのため、今年の終わりまで、店舗内でのアクティベーションを通じて認知度を高めることに主な労力を注いでいく」と、同氏は述べる。

メディアバイヤーから見た価値

リテールメディアは、ウォルマート(Walmart)やAmazonのような大手企業にとって重要な収益推進要素であることが証明されつつあるが、小規模な企業に対しても同様にうまくいくかどうかは議論が分かれている。「これらの小規模な小売業者が、誰かにとって価値のあるメディアオーディエンスを得られるという考えは、常に非現実的なものだ」と、コンサルタンシー企業のコンフルエンサーコマース(Confluencer Commerce)の創設者であるブライアン・ギルデンバーグ氏は語る。「メディアバイヤーは小規模のオーディエンスをどう扱えばいいのかわからないので、そのようなオーディエンスを好まない」と、同氏は述べている。

ザ・セーブマートカンパニーは、今後に多くの課題があることを認めている。「必要なイノベーションを行わずに、リテールメディアの資金を獲得できるとは思っていない」と、パティソン氏は述べている。

[原文:How regional grocer Save Mart is looking to grow its retail media business]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Save Mart

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