リセールがファストファッション好きのZ世代を引きつける理由:「トレンドを追うのに費用対効果の高い方法だ」

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エマ・コッフィ氏は、わずか14歳のときにリセールプラットフォームのポッシュマーク(Poshmark)で衣服の販売をはじめた。近藤麻理恵氏の「人生がときめく片づけの魔法(The Life-Changing Magic of Tidying Up)」がバズを起こしていることに触発され、コッフィ氏は自分のクローゼットを整理して、ミニマリストのカプセルワードローブへと一新し、残りの衣服を売却した。

6年後、ケント州立大学(Kent State University)でファッションマーチャンダイジング学科を専攻した同氏は、自身のポッシュマーククローゼットを月700ドル(約10万6000円)の運営規模に成長させた。同氏は、地元ケンタッキー州ルイビルにある委託販売店やグッドウィル(Goodwill)のアウトレットで仕入れた高品質のベーシック商品と高級ハンドバッグを中心に販売しており、同氏はこれらの店舗のなかから価値ある商品を見つけ出そうとするほかの再販業者と競い合っている。

コッフィ氏にとって、中古品のショッピングは、安価なファストファッション商品を購入する代わりに手軽な手頃な価格で購入でき、特に同氏の年齢層のあいだで人気が高い。若い買い物客は、高級でエコフレンドリーなブランドに手が届かなくても、中古品ならより安価にサステナビリティを満たした商品を購入できると、同氏は語る。

同氏は次のように述べている。「これらの人々は、現在発生している廃棄物のことを真剣に考慮している。また特に、大学に通う年齢の学生にとって、優れたデザイナーブランドを低い価格で、まだ良好な状態で見つけられれば、数回使っただけで破れてしまうようなファストファッションよりもはるかに魅力的だ」。

理想と現実のあいだにある断絶

リセールの専門家は、高度なインフレ、気象危機の悪化、ビンテージのトレンドが合わさり、発展しつつあるリセール市場にZ世代が流れ込んでいると語る。ボストンコンサルティンググループ(Boston Consulting Group)とオンラインリセールプラットフォームのベスティエールコレクティブ(Vestiaire Collective)による新しい調査では、Z世代の消費者の31%は中古ファッションの購入に興味を抱いており、44%が販売に興味を持っている。レポートによれば、全体としてリセール市場は2020年以後に3倍の規模に拡大し、全世界で1000億ドル(約15兆1000億円)から1200億ドル(約18兆1000億円)に達した。

これに応えて、スレッドアップ(ThredUp)などのリセールプラットフォームは、Z世代の買い物客にリーチするための新しい方法として、ブランドにサービスを提供しはじめた。一方で、Z世代の大きなユーザーベースを持つほかのブランドは、自社独自のリセールプラットフォームを構築するようになってきた。ファストファッション大手のシーイン(Shein)は、廃棄物の多い製造方式についての批判が広まったなか、中古商品の再販プラットフォームである「シーイン・エクスチェンジ」を10月に開始した

リセールのブームにもかかわらず、Z世代の買い物客は依然としてファストファッションを買い求めている。シーイン、ファッションノバ(Fashion Nova)、プリティリトルシング(Pretty Little Thing)などのブランドは、サステナビリティについての懸念があるにもかかわらず、Z世代のあいだで人気が高く、リセールマーケットにも頻繁に出現する。

コッフィ氏は、一部の若い買い物客が支持したいと述べるものと、これらの買い物客が実際に買えるものとのあいだには断絶があると語る。

「大学に通う年齢の学生は、もっとも低価格帯の商品を選ぶため、それを考えると断絶があると思われる。『サステナブルな商品をサポートしたい』と言っている人々が実際にそれを実践しているとは限らない」と、同氏は述べている。

モーニングコンサルト(Morning Consult)は9月、Z世代はファストファッションによる環境への影響について、X世代ほど気にしていないことを発見した

コッフィ氏は、中古品のショッピングは、スタイルやブランドへの熱意を犠牲にすることなくファストファッションを避ける方法だとみなしており、もしも可処分所得がさらに増えたとしても中古品を買い続けると語る。

同氏は次のように述べている。「私はバーゲンハンターだ。探し回って、期待した状態の商品を手に入れたときの気分を味わうために、中古品のショッピングをしている」。

小売業者からのリセールへの関心の高まり

グローバルデータ(GlobalData)が、スレッドアップからの委託によって2022年1月に発表したファッション小売業者に対する調査(Fashion Retailer Survey)によると、小売業に従事する経営者層10人のうち4人ほどは、自社の役員や委員会がリセールに注目していると回答している。これに対して多くは、この成長中の市場を一部でも確保するための方法を探しつつある。

ジャッキー・ボーカー氏は、スレッドアップのリセール・アズ・ア・サービス(resale-as-a-service、RaaS)のシニアディレクターだ。この部門は、リセールへの参入を望むアパレル企業と協力し、そのブランドの中古商品を扱う仮想店舗を提供している。このサイトの設立と運営はスレッドアップが行い、ブランドの中古品衣類を出品する「eコマース」などバックエンド作業もスレッドアップが担当する。ブランドは、自社サイトからリセールショップにリンクし、売上の一部を受け取る。

スレッドアップは、このプログラムについて、ブランドが自ら処理やフルフィルメントを行う必要なく、成長中のリセール業界に参入できる方法だとしてマーケティングしている。さらにこのプログラムは、ブランドが新規または既存の顧客と関わりやつながりを持つための手段でもあると、ボーカー氏は述べている。

現在のスレッドアップのリセールパートナーには、パックサン(PacSun)、アバクロンビー(Abercrombie)、フィッチ(Fitch)など若者に人気のモールのブランドに加えて、メイドウェル(Madewell)やリフォーメーション(Reformation)などのより高級な有名ブランドがある。ごく最近加わったブランドとして、若者向けオルタナティブファッションの大手であるホットトピック(Hot Topic)もある。

「こうしたブランドは、Z世代がすでに顧客であり、彼らにより深い関わりを求めているのかもしれない」とボーカー氏は述べている。「あるいは、新しい顧客を獲得し、アピールする方法を模索しているブランドもある。そして、Z世代がまだ顧客になっていない場合、リセールはそのためのひとつのチャネルになる可能性がある」。

中古品を買ったことを共有する理由

スレッドアップの調査によると、消費者の4人に3人は、中古品のアパレルが5年前よりも社会的に受け入れられるようになっていると答えている。社会的に受け入れられているのは、若い買い物客がインスタグラムやTikTokで新たに入手した商品を発信するなど、ソーシャルメディアにおける対話が広がり、そこから火が付いたものと考えられる。入手した中古品を紹介する動画は#thriftvlogや#thriftwithmeなどのタグが付けられ、何百万回も再生されている。

ボーカー氏はこれを「中古で買うことの公言」と呼び、自分たちのコンテンツにブランドをタグ付けしている利用者のあいだで見られる行為だと語る。

同氏は次のように述べている。「消費者は、自分たちが中古品を購入したことを共有しようとしている。その買い物をしたことで気分がいいだけでなく、自分たちが中古品を着ていることをわざわざ仲間に知らせようとする」。

ビンテージ愛好

ラグジュアリーのオンラインリセールプラットフォームであるザ・リアルリアル(TheRealReal)も、Z世代のあいだで「大幅に」成長していると、同社の女性向けマーチャンダイジングマネージャーを務めるケリー・マクスウィーニー氏は語る。サイトへの訪問者は8月時点で前年より35%増加し、既製品の衣類は前年比で27%増加した。

ザ・リアルリアルは特にZ世代に向けたマーケティングは行っていないが、熱心な利用者もいる。同社を利用するZ世代の顧客は、購入した商品をもっとも早くリセールすると、マクスウィーニー氏は語る。

これらの利用者は女性向けの衣類やアクセサリーを「投資のつもり」で買い込むと、マクスウィーニー氏は語る。高級ブランドやクラシックな品物を重視する傾向も見られる。たとえばボッテガベネタ(Bottega Veneta)のバッグへの需要は、2019年の8倍にも高まっている。また、90年代や00年代初期のビンテージへの関心も復活し、ロゴを多用するクリスチャンディオール(Christian Dior)の売上が急増して、2019年の4倍近くにも達している。Z世代やミレニアル世代のあいだで、カバリ(Cavalli)の検索回数は2倍に増加した。

「これらの世代はトレンドに敏感な買い物客で、常に新しいものを探し求めており、かつてX世代に愛されたビンテージ商品には特に関心を持っているため、フェンディ(Fendi)の「バゲット(Baguette)」シリーズや、ルイヴィトン(Louis Vuitton)のポシェット、クリスチャンディオールのサドルバッグなどのスタイルのリセール価値を実質的に押し上げてくれる」と、マクスウィーニー氏は米モダンリテールへのメールで語った。

売り手の観点

ポッシュマークは、昨年末の時点で同社の買い物客の約27%がZ世代だったという。特に、ドージャ・キャット氏、エリック・ナム氏、K-popグループのエイティーズ(ATEEZ)がセレブリティクローゼットを開始するなど、セレブリティやTikTokのパートナーシップを結んだり、さらに、ポッシュオンキャンパス(Posh on Campus)という起業家向けのアドバイスネットワークによって、Z世代の買い物客を特に求めている。

ポッシュマークのマーチャンダイジングおよびキュレーションの責任者を務めるクロエ・バファート氏は、Z世代の買い物客が、安価で価値のあるものやトレンドの商品を求めて、同社のプラットフォームを利用していると語る。たとえば、ビルケンシュトック(Birkenstock)のミュールとクロッグは、商品がTikTokでバイラル化した後の第3四半期に、売上が前年比で70%増加した。

「商品がTikTokでバイラル化すれば、ほとんど即座にデータに現れる」と同氏は述べている。

「このトレンドがすぐに廃れることはない」

最近サンディエゴ州立大学(San Diego State University)を卒業した23歳のアリ・ディーゲス氏は、以前からポッシュマークで買い物をしていたが、2020年からリセールを開始した。買い物客がトレンドを試し、ビンテージ商品を確保し、または好きなブランドを信頼できるサイズで複数揃えていると、同氏は語る。

「ポッシュマークはトレンドを追うのに、非常に費用対効果の高い方法だった」と同氏は述べている。

同氏は2年生のとき車を手に入れ、中古品探しを開始した。同氏は再販して利益を出せる商品を見つけ、たとえば5ドル(約755円)のルルレモン(Lululemon)のレギンスを75ドル(約1万1300円)で販売した。運動学を専攻し、ムエタイの選手であった同氏は、ルルレモン、アスレタ(Athleta)、スウェティ・ベティー(Sweaty Betty)などのブランドに注目しはじめた。

同氏は現在、月に1800ドル(約27万2000円)程度を稼ぎ、大会とマッサージセラピーの勉強の合間にポッシュマーククローゼットを運用している。同氏は、自営業で働くことができる柔軟性と能力を高く評価しており、このトレンドがすぐに廃れることはないと考えている。

「この流行に関して不名誉なことは別にない」と、ディーゲス氏は述べる。「ソーシャルメディアでもほかの場所でもありふれたものになったため、人々は『そう、これは中古品なんだ』と公言することをためらわなくなった」。

[原文:How resale apps are courting Gen Z shoppers — even as they embrace fast fashion]

MELISSA DANIELS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Poshmark

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