不安定な経済状態の中、 B2Bエージェンシー が活況:「経済の現況に即した戦略の進化法を探し求めている」

DIGIDAY

2023年第1四半期、インフレや経済の先行き不安、予算削減のあおりをまともに受ける企業も少なくないなか、一部のB2Bエージェンシーはそのおかげで、中小マーケターから大きな関心を集めている。

そして、それらマーケター勢はいま、さらなる新規ビジネスを勝ち取るための新たなアプローチおよび戦略の考案に、テクノロジーの有効活用を企てている。

より戦略的でターゲットを絞り込んだ販促の流れ

オムニコム(Omnicom)のB2Bエージェンシーで、100年以上の実績を誇る老舗であるドレマス(Doremus)は、2023年度初頭以来、新たな仕事の依頼が劇的に増加している。「弊社における新規ビジネスの件数は、2022年第1四半期に比べて3倍に増えている」と、同社メディア部門トップであるフィル・カッツ氏は、具体的な数字は明かさずに話す。「いまは正直、常軌を逸した状態だ」。

同エージェンシーには、エンターテインメント、テクノロジー、フィンテック、ヘルスケア、プロフェッショナルサービスなど、さまざまな業界から広告に関する問合せが殺到しているという。「実際、これまで消費者向けのプロダクト/サービスが専門だった企業からも問合せが来ている(中略)。そうした企業は皆、自社のプロダクト/サービスを見直し、その幅を広げて、B2B界への進出を考えている」と同氏は話す。

B2Bに特化したエージェンシー勢に訪れているこの活況の要因には、中規模マーケターらが事業のテコ入れを図り、より戦略的でターゲットを絞り込んだ販促を強く欲するようになった、という流れがある。たとえば、調査会社ボンボラ(Bombora)が4月6日に発表した報告書にも、そうした現状および背景が見られる。

今四半期最大のトレンドトピックは「マーケティングツール」

ボンボラの調査報告は、5000を超えるWebサイトから企業の関心事を拾い集めたデータコープを分析したもの。それによると、今四半期最大のトレンドトピックは「マーケティングツール(Marketing Tool)」で、週平均11万4500社が検索されているという。2022年第4四半期の週平均と比べると、20%の増加だ。一方、同時期に最大の伸び率を見せた検索ワードが「マーケティングリソースマネジメント(Marketing Resource Management)」であり、大半の業界の企業が同トピックを検索するなか、最大1035%の伸びを記録した。

また、マーケター勢が経済の先行き不安に対応する術を探していることがわかる結果も見られた。インフレ調整後の商品およびサービスの市場価値を検索した企業は、2022年から22%増えており、つまり、4万5000以上の企業が現在、こうした検索活動に積極的ということになる。

「マーケター勢は明らかに、経済の現況に即した戦略の進化法を探し求めている」と、ボンボラのCMOジェフ・マークー氏は文面で指摘する。「この先も、我々はその時々のトレンドトピックをモニターしていく。そのなかで、マーケター勢が事業の効率的成長を後押しするにはどうするべきか、より明確な図が描けるようにしたい」。

アウェアネス向上施策は期待を超えた

B2Bマーケティングエージェンシーであるザ・マーケティング・プラクティス(The Marketing Practice、以下TMP)が2月に発表した別の調査結果では、マーケターの37%がマーケティング予算を増額し、競合他社が規模を縮小するなか、市場シェアの奪取をめざしていることがわかった。また、このTMPによる調査では、マーケター勢の46%が既存顧客の成長に、もしくは収益性のより高いサービスへの移行になおいっそう熱心に努めていることも判明した。

ドレマスの顧客であるNIはこの3年間、自社のリブランディングに積極的に努めている。同社は企業の、具体的には企業のエンジニアたちの、自社システムの試験および測定を手助けする事業を行なっている。NI(以前の社名は、ナショナル・インスツルメンツ[National Instruments])は、「このリブランディングをコロナ禍が始まる直前に始めるという幸運に恵まれた」と、同社のグローバルマーケティング部門VPノーマ・ドースト氏と、グローバルデマンドジェネレーション&イベンツ部門シニアディレクターのステイシー・ハウワー氏は説明する。

「Engineer Ambitiously(エンジニア・アンビシャスリー/[エンジニアよ、大志を抱け]の意)」のキャッチフレーズとともに展開するこのアウェアネス向上施策は、実際、予想を上回る結果をもたらした。ハウアー氏によれば、アンエイデッド・アウェアネスは1年目で7%から12%に、2年目に14%に高まり、「我々の期待をはるかに越えてくれた」という。

加えて、ドレマスのメディアエグゼキューションはワイアード(Wired)やワシントン・ポスト(The Washington Post)など、米デジタルメディアしか購入していないにもかかわらず、中国でもアウェアネスが3%から6%に伸びたという。

Cスイートにリーチ

ドレマスはサードパーティデータ不足というB2B界全般の欠点を補うべく設計したテクノロジーを利用していると、カッツ氏は説明する。ドレマス・ネットワーク・アナライシス(Doremus Network Analysis)、略してDNAと名付けられた同社によるこのメディア戦略は、当該クライアントが過去に利用したことのない大量のブランデッドコンテンツを武器に、Cスイートをターゲットにするものだという。

これまで、「Cスイートは我々が暮らし、活動している世界にはいなかった」と、NIのドースト氏は話す。「だからこそ、たとえばワシントン・ポスト紙上のブランデットコンテンツを介してある程度アクセスできたことで、我々がかつて経験したことのない、そうしたリーダー層にある程度のアウェアネスを起こせた」。

これは実際、IBMをはじめ、大手のB2Bマーケター勢のあいだでもトレンドになっていると、独立系メディアアナリストのブライアン・ウィーサー氏は指摘する。「たとえば、テニスやゴルフのテレビ中継を提供するCMスポンサーサーもそうで、彼らの75~90%は、消費者ではなく、B2Bオーディエンスをターゲットにしている」とウィーサー氏は話す。

ただし、効果の測りやすさについては定かでない、とも言い添え、「B2B界では、売上と販促の関係性は曖昧だ。消費者向け広告のそれとはわけが違う」。

[原文:Some B2B agencies see a spike in business as market conditions remain unclear

Michael Bürgi(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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